THE  POWER  OF  PEOPLE

 

日韓労働者連帯実践の強化・発展を小林栄一


 11月訪韓行動を成功させよう


 労働運動の場で日韓連帯実践を


 私たち人民の力は1980年代以降、約10年かけてつくりあげてきた基礎形成過程を経て、日韓民衆連帯や反核・反原発などの時代的(社会的)課題に取り組んできた。「労働運動の人民の力」として誕生し発展してきた私たちの機軸がかわるわけではないが、時代的課題へのチャレンジと献身・奮闘は、私たち人民の力の視野や実践領域を飛躍的に拡大させてきた。

 本誌にも掲載・報告されているさまざまな実践(憲法、反核・反原発、反天皇制、沖縄、自然保護、環境、ダム、在日外国人・研修生、農業など)がそれを明らかにしているし、私自身も国鉄闘争に軸足をおきながらも、不十分ではあるが訪韓活動や日韓連帯実践、沖縄や諫早、外国人研修生問題などに少しくかかわってきた。

 とりわけ、人民の力としての日韓民衆連帯実践は金大中救出運動や韓国政治犯救援運動がその始まりであった。日本帝国主義の戦争犯罪に対する私たち自身のなすべき課題や任務にどう向き合うかという、政治的・思想的問題を内包しながら(すなわち自分自身を問い返しながら)、指紋押捺拒否闘争や強制連行・戦時性暴力犠牲者の謝罪や補償を求める運動にかかわり、韓国労働者大会への連帯参加、民主労総や韓国鉄道労組との連帯・交流、韓国労働運動闘士を日本に招いての連帯集会の開催などへと、一歩いっぽ進んできた。

 そしていま、唯一の超大国となったアメリカ帝国主義がすすめる新自由主義が世界をおおいつくし、格差や貧困、人権侵害や生活破壊が日々拡大・再生産されているなかで、「万国の労働者は団結せよ」という、国際連帯の思想と実践がいまほど求められているときはない。私たち人民の力も未熟で非力ではあるが、日韓労働者連帯実践を当面の環としながらも、「アジア・太平洋地域における国家や民族や人種をこえた労働者による協同体」づくりをめざす方向を確認した。

 言いかえれば、「アジア・太平洋地域における労働者協同体づくり」を視野に入れて(戦略方向として)、日韓労働者連帯実践の強化・発展を自覚的に追求していくことである。そのために1995年から始めた、11月の韓国労働者大会への連帯参加を一つの柱としながら、今年4月から再開した日本における「日韓労働者連帯全国連鎖行動」(今年は第2回)をもう一つの柱として、すなわちこの二つを二本柱とした日韓労働者連帯行動をこれから毎年おし進めていくことである。

 その第一歩として遂行した「第2回全国連鎖行動」は、今年84歳になる不屈の老闘士李寿甲先生を講師としてお迎えし、4月15日から20日まで函館、仙台、東京、新潟の4都市集会の開催と長野での「感謝の集い」などをもって、意義ある成功をかち取った。

 とても84歳とは思えない李寿甲先生の熱のこもった講演と、それを的確に通訳された迫田英文氏、各都市集会を引き受け企画、準備、遂行してくださった多くの皆さんの協力があってのことであるが、2004年9月から10月にかけて実施した第1回全国連鎖行動の大きな成果のうえに、新しい石をまたひとつ積み上げることができた(詳細は本誌5月1日号を参照されたい)。


 李明博政権と闘う韓国の民衆・労働者


 成功裏に終わった日韓労働者連帯第2回全国連鎖行動から早や五ヶ月。この間、韓国では、李明博政権を崖っぷちに追いつめる全国民的な闘いがもりあがっていた。韓国鉄道労組の名誉組合員であり、同鉄道労組と運輸産別労組の顧問でもある李寿甲先生4月の全国連鎖行動でも情熱をこめて熱く語ってくださったが送ってくださる情報を、「アジア・太平洋民衆連帯(SAPP)」代表の後藤正次君の翻訳で人民の力誌にも掲載しているが、李明博政権がおし進める新自由主義政策への批判を根底として、アメリカ産牛肉の輸入全面解放問題を発火点とした全国民的な闘いの発展である。

 5月のはじめ、幼い中学生や高校生が始めたキャンドル集会が、瞬く間に韓国全土に広がり、6月10日にはソウルだけでも80万人、韓国全土で100万人のキャンドルデモが、「李明博政権アウト」をかかげてうねったのである。また、児童や学生や主婦や市民から始まった闘いのうねりに労働者も呼応し、貨物連帯が6月13日から7日間のゼネストを貫徹。アメリカ産牛肉の輸送阻止と軽油価格の高騰などに対する「生存権闘争」と位置づけたストライキには、多くの市民の共感と支援が寄せられたという。さらに、建設機械労組もストに突入し(6月16日)、韓国鉄道労組をはじめとする民主労総も7月2日ゼネストに突入した。

 最新の李寿甲先生からの情報では、整理解雇撤回と鉄道公社の直接雇用を求めてすでに3年近くにわたって闘いつづけているKTXセマウル号乗務員たちが、鉄道労組の組合員とともに、ソウルではソウル駅の40余メートルの照明鉄塔に登って、無期限の「高空籠城」に入った(8月27日)。釜山ではKTX女性乗務員が「断食籠城」に突入した(9月2日)。非正規職撤廃の象徴的闘いである、KTXセマウル号乗務員たちの闘いは、早期解決を求めていよいよ熾烈化している。

 また、9月1日号の「民族時報」によれば、キャンドル集会(文化祭)は7月、8月へと継続され、7月5日のキャンドル文化祭にはソウルだけで50万人が参加し、光復節に行なわれた「李明博審判と民主主義守護」のためのキャンドル集会はついに第100回を数えるに至ったという。

 こうした労働者や全国民的な闘いによって崖っぷちに追いこまれていた李明博政権は、韓国民衆の目が、8月に行なわれた北京オリンピックに向かっていた隙間をねらって、全面的な強硬弾圧にのりだしているという。民主労総の7・2ゼネストを「不法スト」と規定し、指導部など34人を召喚。光復節に行なったキャンドル集会には、2万人の警察兵力を配置し、無原則な連行を行なったという(同)。有名無実化していた「警察機動隊」の創設(拡大・再編)を行ない、「80年代の公安弾圧に回帰」している李明博政権の反動性がますます明らかとなっている。

 私たちは、こうした不屈に闘う韓国民衆・労働者と真に連帯する質をどうつくっていくかがいよいよ問われている。


 日韓連帯実践を労働運動の場から築いていく


 アジア・太平洋民衆連帯実践の二大実践課題の一つである、11月の韓国労働者大会への連帯参加まであと二ヶ月(1970年に「焼身抗議」を遂げた全泰壱青年の意志を継承するものとして毎年開かれている労働者大会の今年の開催日は11月9日と推測される)。「まだ二ヶ月ある」のではなく、「もう二ヶ月しかない」のである。

 ブッシュのアメリカと一体となって新自由主義路線を走る李明博政権と必死で闘う韓国労働運動と連帯できる質を、まずは私自身がつくっていかなければならないし、人民の力の組織や同志ひとり一人にそれが求められている。

 私たちは、ささやかではあるが民主労総のゼネストや、韓国鉄道労組の決意大会などに支援・連帯のメッセージをおくり、7・2ゼネストの前日には長野において「ゼネスト連帯集会」を開いた。

 また、「渡り鳥」シチズンが、韓国シチズン精密を偽装売却した不法・不当に対して、「韓国シチズン精密労組を応援する会」の結成大会に参加し、8月6日には韓国シチズン精密労組の女性組合員2名を長野に招いて、長野駅頭におけるチラシ配布と宣伝活動を行ない、「韓国シチズン精密労組の闘いに支援連帯する緊急長野集会」を開いた。そして、可能な抗議行動や連帯実践を今後も継続していくことを確認した。

 また、3月1日号の人民の力誌で常岡代表が89年前、すなわち1919年3月1日の朝鮮労働者階級の独立ストの意味を明らかにしながら、「3月1日を反省と決意の日に」しようと提起している。朝鮮民族への暴虐をほしいままにした日本帝国主義の労働者として、「3月1日を、5月1日のメーデーとならぶ日本労働運動の最も重要な『闘う記念日』『集会と街頭行動の日』『ストライキの日』とすべきではないか」と提起しているのである。

 「労働運動の人民の力」として、この重要な課題を実現していくためにも、日本労働運動、なかんずく国鉄労働運動のなかに(労働と生活の場から)、日韓労働者連帯実践を遂行する質と実体をつくっていかなければならない。そのためにも、11月の訪韓行動に労働組合(支部や分会)として参加できることがより望ましいし、その努力が求められている。

 可能な場から、目的意識性をもって努力していこうではないか。それはまた「自己を問い」「自分をつくる」道でもある。


                        (9月4日)