月が沈んだ。本来なら僕は眠っている時間。
「信志、大丈夫か?」
柱にもたれかかった信志は、疲れ果てていた。
「弓…いや、夜見か」
「無理をさせて……すまなかったな」
額が熱い。本当に彼は体調が悪かったのだから、当然だ。立ち上がる力もないだろう。
背中と膝に手を回し、信志を抱え上げる。
「夜見?」
「黙っていろ。床の上じゃ、治るものも治らないだろ? 部屋まで連れていくだけだ」
信志の目は、心配気に僕の方を見た。何を言いたいかは、察しがつく。
「心配するな。月が沈んでも、信志を運ぶくらいは出来る」
部屋まで運ぶわずかの間に、信志は眠ってしまった。寝間着に着替えさせ、布団に横たえる。
「今日のような場合でも、我を封じる方法はあるだろうに……」
斎主の体調が悪い時、僕は目覚める前に封じられるのが常だった。
僕の瞳が月色に変わり、信志の寝息と一緒に疲れを吸い取る。
「さすがに、月が沈むと、これが限界だな」
疲れだけを取り除き、信志の部屋を出た。月が沈んで随分経つ。
壁や柱をつたいながら、僕はしばらく月の無い空を見上げていた。

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