鱗光の月に


 夜更けになってからだった。
月が綺麗だからと、ヒロインはシンに誘われて、甲板に出た。
「ほら、こっちへ来てみろ」
 船首に立つと、シリウス号のバウスプリットが、楕円のように少し欠けた月を指し示す光景が広がっていた。
「今、この船はちょうど月に向かってすすんでいる」
 滅多に見れない景色だぞ、と言ってシンが優しく笑う。
「本当……。素敵ですね」
 澄んだ輝きの月に見惚れるヒロインの腰に手をまわして、シンが囁く。
「今夜は、この月を見ながらどうだ?」
「え? だって、ここ、外で…甲板で……」
 狼狽しはじめるヒロインに、キスをして囁く。
「大丈夫だ。誰も来ない」
「でも…」
「お前の声も、波音が消してくれるさ」
 ヒロインが、頬を染めて俯く。
 シンが顎を持ち上げて、深くキスをした。
「優しくしてやるから、お前は月を見ていろ」
 シンの手が、ヒロインの衣服に滑り込んでボタンをはずす。
 開いた衣服の下に隠れていた胸の双球を前方の月影に曝して、いくつもキスを落とす。
「あっ…シンさん……」
 桃色の突起を優しく舌で転がしながら、背中を撫で、腰を撫でる。
 脇腹を撫で、下腹部を撫で、ゆっくりと揺れる波のように、ヒロインを刺激する。
「ァん………」
「なんだ、もう立てないのか? そこに掴まっていろ」
 シンは苦笑して、ヒロインを船べりにつかまらせると、腿の内側へ手を滑り込ませる。
「あハ……ぁん、ゃん…」
「今夜は特別にいやらしい声だな。そんなに感じるか?」
「だって……シンさん、すごく…やさしぃ……」
 シンが満足げに、にやりと笑う。
「優しくしてやるから、もっと感じてみろ」
 愛撫しながら、ヒロインの衣服を少しずつ、焦らすようにはぎとり、甘い言葉を耳元で囁く。
「っはぁん……あん…っ…」
 しきりにヒロインが身体を震わせ、のけぞる。
「…しっかりつかまっていろよ」
ヒロインの下に潜り込むような体制で、シンは分身を挿入した。
「やぁぁぁぁぁぁぁっん。あっ、あっ、あっ…」
シンがヒロインを身体ごと突き上げるように攻める。
すると、つかまっている船べりに胸を擦りつける破目に陥るヒロイン。
 穿たれた刺激と、擦られる刺激が、ヒロインに嬌声をあげさせる。
「あぅんっ…ぁはんっ…あぁぁっ……」
 のぼりつめていくヒロインの瞳には、輝く月だけが映っていた。

…シンのやろう、絶対、わざとだ。
 見張り台の上で、ナギは月明かりに照らされたヒロインの裸体から目が離せずにいた。
 二人が甲板に現われて、船首に向かう時、確かにナギは、シンと目が合った。
それから、シンがヒロインにキスしている時にも。
…あいつ、絶対に昼間のこと、根にもってやがる。
甲板の音は、意外と見張り台に届く。
 シンの何かささやいている声は一向に聞こえないが、ヒロインの声は全部届く。
彼女がシンに抱かれて乱れていく様が全て。悪夢のように届いてナギの男の部分を苛む。
…見せつけやがって。っくそ。
 ナギの中に抑え込んでいる劣情が、嫌でも刺激される。
シンが、ヒロインは自分のものだと、わざと自分に見せつけているのだ。わかっている。そうせざる得ない、シンの抱えているだろう焦燥まで理解できてしまうから。
…こんなので、絶対にヤラねえからな。
ヒロインの達した声を、ナギは祈るように聞き流した。


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