囚われの夜


「アンタ、シスウス海賊団の女だよね?」
「…え?」
話しかけられたのは宿の女性用トイレで手を洗っている時。
肯定も否定もする暇もなく、ヒロインの意識は途切れた。


「ひぃや…あっあぁんっ」
「ふっ…くぅぅぅぅっ…あっ…」
重なり合う二つの女性のものだろう嬌声と、クチュグチュと粘膜が擦れ合う音にヒロインは目を覚ました。
が、目の前が真っ暗で身動きが取れない。
どうやら、目隠しをされている様子だった。
手も後ろ手に縛られていて、どこかに括られているらしい。
足も同様に括られていて、身動きがとれなかった。
ただ、自分の近くで行われている音だけが聞こえてくる。
「あっ、やっ、もう……」
クチュリ、ピチャリ、と液体がかき回されるような音に、聞き覚えのある声が重なった。
「なんだ? この程度でダメなようじゃ、とても俺の相手は務まらねぇぞ?」
どこか怒ったような声は、リュウガの声である。
ただ、聞こえてくる音からなんとなく、声を出すのは憚られる状況のような気がした。
荒い呼吸の合間に、女性の声がリュウガに懇願する。
「はうっ…やぁぁ…指…ぬいてぇ…おかしくなるぅぅ…」
「ん? たった二本でこのザマか?」
クチュクチュと、逆に粘液をかき混ぜる音の速度が増した。
「ひっ…あ、あ、あ、あ…」
「やぁぁ、ぁん、ぁん、あ…」
二つの声も音に合わせて速度を増していく。
もしかして…いや、もしかしなくてもこれは…リュウガがヒロインのすぐ近くで女性を抱いているのだろうと察しがついた。
察してしまうと、パチュ、パチュ、パチュと、激しくかき混ぜる音がひどく恥ずかしく感じる。
やがて、悲鳴のような二つの声が響き、嬌声が止む。
聞いているだけで恥ずかしくなるような音が止んで、ヒロインは、なんとなく、ため息をついた。
「……起きたか。悪りぃな、ヒロイン。お前は、俺のとばっちりを食ったらしい。まあ、そのうちシンが来るから、あいつに助けてもらえ。……今、俺がお前に触ると、 シンを下手に煽っちまいそうだからな」
先ほどまでとは打って変わった、とても優しい口調のリュウガが告げた。
ヒロインがそっと頷く。
「もっとも、シンのことだから、もうそのへんまで来ているだろうがな…」
ハハハ、といつもの明るい笑い声がして、リュウガが立ち上がる気配があった。
すると、再び、リュウガの口調が厳しくなる。
「おいおい、今のは、ほんのウォーミングアップだろ。俺に抱かれたい為に、コイツを誘拐しといて、二人がかりでもう終わりか? ほら、立ちな。そっちの部屋のベッ ドで続きだ」
どうやら、自分を連れてきたのはリュウガに想いを寄せる二人の女性らしいと、語られる言葉から察する。
「あん、待ってぇ」
媚びた女の声が、動く。
パタン、と扉が閉まる音がして、壁の向こうから再び女性たちの切なげで甘い声と、ベッドが軋む音が聞こえ始めた。
隣の部屋から、途切れることなく聞こえてくる悲鳴に似た女性の甘い声。
それは、ひどく落ち着かない状況だった。
と、突然、身動きがとれない肩に、背後から何者かの手が触れて、ヒロインはビクリと身を強張らせた。
肩に触れた手が、首筋をなぞるように触れ、身を固くしたヒロインはなんとかその手から逃れようと身をよじる。
「ぃや……」
怖くなって、拒絶の言葉を発しかけた唇が、塞がれた途端、ふわりと頬に触れる柔らかな髪と慣れた香り。
「……シン…さん?」
かすかに震えながら問いかけたヒロインに、聞きなれた声が答えた。
「馬鹿が。もっと早く気付け」
「そんな…無理です、こんな状況で……」
「そうだな。こういう場所で、なかなか、そそる状況ではあるな」
意地悪な笑みを浮かべていそうなシンの口調に、ヒロインが尋ねた。
「そういえばここ、どこですか?」
「娼館の一種だな。見るか?」
ようやく目隠しが外され、ヒロインは自分が壁に取り付けられている『括りつける専用の金具』に繋がれていることを知った。
「この壁…なんですか?」
「見ての通り、連れてきた女が逃げないようにここに縛り付けるための壁だろうな。そっちの棚には、女を責める道具がたくさん並んでいるぞ。試してみるか?」
「…冗談ですよね? シンさん」
いっこうに手足を縛っているロープを外そうとしないシンに、ヒロインが恐る恐る尋ねる。
「勝手に誘拐されてこんなところへ連れ込まれて、俺を心底心配させたおしおきは、しておかないとな。縛られたままと、あの棚の道具、どっちがいい? 選ばせてやる ぞ?」
「…どっちも嫌です」
「両方、というのもありだな」
隣から、壁を越えて一際甘い悲鳴が響く。
「だったら、シンさんだけがいいです。シンさん以外は縄も道具も嫌です」
ヒロインの真っ直ぐな言葉に、シンが一瞬目を瞠り、満足気な笑みを浮かべた。
「…いいだろう」
手と足のロープが緩んで外されると、ヒロインは安堵の息をついた。
相変わらず、隣からベッドの軋む音や嬌声が聞こえてきて、なんとなく落ち着かず、シンから視線をそらす。
シンは、そわそわしているヒロインを面白そうに腕を組んで見下ろした。
「あ…あのー、シンさん?」
「なんだ?」
「どうやって、宿へ戻るんですか?」
「出口は一つだ。船長があの女共の気を引いているうちに、あいつらの目の前を通って外へ出るか、あいつらが疲れ果てて寝るのを待って外へ出るか、だ。まあ、隣が静 かになるのを待った方がいいだろうな」
隣から聞こえてくる甘い悲鳴は、止む気配がない。
「ゆっくり待つしかないだろうな」
笑みを浮かべてシンがヒロインの頬に手を添えた。
なんてことない仕草なのに、ビクリとヒロインの身体が反応する。
「どうした? 船長が鳴かせている声で何を想像した? エロい顔だな?」
「なっ……何も想像なんか…」
シンの指先から熱を与えられたかのように、ヒロインの頬が紅く染まる。
「そういえば、お前、縄や道具よりも俺の何がイイんだって?」
「何って…シンさんだけがいいと…その……」
答えかけたヒロインが、シンの意図するイイという言葉の意味に気づいて口ごもる。
「隣が静かになるには、まだまだ時間があるぞ? お前にそんな告白されて俺が我慢できると思うか?」
「えーと…その……」
ヒロインが俯く。
場所も空気も気持ちも、とても拒める状況ではなかった。


深い奥までシンを受け入れながら、ヒロインは崩れそうになる膝に力を込めた。
「よし、いい子だ」
隣室のベッドは、リュウガが使っている。
シンとヒロインが居る部屋には、怪しげな道具が置かれている棚と、怪しげな装具のついている壁しかない。
シンは様々な立位でヒロインに脳天まで痺れるような刺激を与え続けていた。
「ぅん…あぁ…あ…シンさん…もう…立てな…」
「…仕方ないな。そこの壁へ寄りかかれ」
ヒロインがシンに言われるままに壁のくぼみへ背中を預ける。
なぜそこが彼女が背を預けられる形状になっているのか考える余裕もない。
相変わらず、壁を隔てた向こう側からも、甘く切なげな吐息や喘ぎが聞こえてくる。
「落ちないように、こっちのベルトで固定してやる」
シンが、壁のくぼみに通されたベルトでヒロインの身体を留めてゆく。
「随分とエロい格好だな。なるほど。…これは楽だな」
ベルトで固定されたヒロインの身体は、シンの杭を起点にして前後左右上下小刻みに揺らすことができた。 揺らす速さも幅も、シンがベルトの端を引くことで様々に変化していく。
「ふぁ…んっ………」
新たな刺激に、ヒロインの喉からは甘く切ない吐息が、漏れる。
「せっかくだ。これで何回イケるか試してやろう」
そうして、夜は更けていくのだった。



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