小豆の甘さ
ナギがおやつに小豆粥を作ってくれた。
温かいうちにシンにも食べて欲しくて、航海室へ運び、一緒に食べた。
厨房では、夜食のためにナギがこしあん作りをしていて、何になるのかとっても楽しみだから、その話をした。
が、シンは気に入らなかったらしい。
「俺の前で、さっきからナギの話ばかりして…そんなに俺に襲って欲しいのか」
と言われて初めて、ヒロインはシンがその気で自分に触れていることを悟った。
「あ…いえ…別に……その……すいません」
言ってはみたが、明らかにこれから肌を重ねるつもりになっているシンの様子に、ヒロインの身体も反応して頬が熱くなる。
「…もう遅い」
吐息のような囁きのあとに、重ねられた唇は、予想以上に熱くてヒロインはそれだけで身体の力が入らなくなった。
ガタンと座っていた椅子が倒されたが、ヒロインの身体はシンの腕に抱えられて優しく床へ寝かされる。
「…小豆の味がするな」
唇を離したシンが、ふっと笑みを浮かべてヒロインを見下ろした。
「……あ、…すいません…」
「別に悪いとは言っていない。小豆か……お前の体にもあったな…」
「?」
言葉の意図が分からずにいるヒロインの首筋を、シンが擽るように指先でなぞる。
もう一方の手が、衣服を緩めて肌を露わにしていく。
「やんっ…」
くすぐったくて、恥ずかしくて、ヒロインが身をよじった。
「知らないのか? 小豆核…」
肌をなぞる指先が、胸から腰へと移動する。
シンの指先が、腰から足の付け根へと移動し、普段は下着に隠されている部分へ入り込んでいく。
「ぁんっ…」
一番敏感で小さな豆のような部分にシンの指先が触れ、ヒロインはビクリと身体を震わせて声を上げた。
「ココだ。お前の小豆………大人しくしてろよ?」
シンの手に腿を左右に広げられ、ヒロインの肌が羞恥で一気に桜色に染まる。
「ふっ……ん……あぁ」
小豆核とも呼ばれる部分を舌先で優しく刺激されて、ヒロインがシンの腕を押しのけ逃れようとするかのように身を燻らした。
「こら、逃げるな。これからお前の小豆を味わってやる」
チュ、と音を立てて吸われ、ヒロインの背筋を電流のような甘い痺れが走る。
舐めたり吸ったりと、まさに味わうような刺激をされて、ヒロインの喉からとめどなく声が漏れた。
「あぁぁ、やぁ、だめぇ、もう…やめ…やぁぁんっ」
「あまり大声で鳴くと、誰かが来るぞ?」
乱れるヒロインにシンが囁く。
けれど、小豆核へ次々と与えられる刺激は、腰から一気に背筋を通って頭にまで響いてくるようで、どうすれば声が抑えられるのか考えることもできずに、ヒロインは首
を振って悶えた。
「やだぁ…やめ……んっ、あぁんっ」
恥ずかしいと思う余裕すらなく、与えられる強い刺激から逃れたいのかどうかもあやふやに、ただ身体が熱く高まっていく。
いつもシンとつながる部分が、待ちきれないとでもいうように潤み、熱をもっていく。
「んっ…くぅぅっ」
それまで背筋を走るだけだった刺激が、突然一気に全身を暴れるように駆け回り、ヒロインは手足を強張らせて震える。
「…イイ顔だな」
からかうように囁いたシンが、力を抜いて呼吸を荒げるヒロインの唇をチュと軽く啄ばんだ。
「続きは夜にしようかと思ったが、そんなエロい顔していたら、ナギの手伝いに行くのは無理だな」
ククっと喉の奥で笑い、熱くなったヒロインの肌に鬱血の痕を残す。
「どうした? 随分と物欲しそうだな?」
さんざん悶えさせられてイカされたヒロインが、熱の籠る瞳でシンを見つめ返した。
「いれて欲しいのか? まだ明るいぞ?」
「だって……」
ヒロインのつながりを求めている部分が熱を帯びているのは、シンも十分承知している。
そうなるように仕向けたのだから。
「インランな奴だな…」
呆れたように囁きながら、シンは自らの衣服を緩め始めた。
ヒロインが小豆粥を航海室へ持って行ってから一刻半。
「ふぁ…シンさ……」
夕日が差し込み始めた航海室で、シンを奥まで受け入れていたヒロインが首を仰け反らせた。
「そんなに良かったか?」
シンが愉しそうにヒロインの耳元で囁いて、身体を離す。
「あっ…」
満たされていたものがズルリと去っていく感触に、ヒロインは甘い声を漏らして、床に手をついた。
ひどく自分が乱れた記憶は、呼吸が収まると共に鮮明になる。
「どうした? 自分で服も着れないか?」
いつのまにかすっかり身支度を整えたシンが、気遣わしげにヒロインの顔を覗き込んだ。
恥ずかしくてシンの目の前から逃げ出したい気分なのに、体は随分と重くて寝返りをするのも億劫な感じがする。
「…すいません、もう少し休めば…大丈夫かと……」
「……気にするな。無理をさせたからな。手伝ってやる…」
そう言って、シンはヒロインの身体を支え、服を身につけさせる。
それはそれでとても恥ずかしく、ヒロインは再び耳まで真っ赤になった。
なんとか無事に衣服を整え、航海室のソファに運ばれて座る。
「ここで座って待っていろ」
言われるままに頷いて、ヒロインは背もたれによりかかった。
身体の中にシンの余韻が残っていて、心地よく、そのまま眠りたい気分で茫としながら、机に向かって仕事を始めたシンの後ろ姿を眺める。
「おい、シン。次の港なんだが」
まるで頃合いを推し量っていたかのように、リュウガが航海室を訪れた。
シンと航路について言葉を交わし、さっさと去っていきかけた足が、ピタリと止まる。
「おい、シン。ソレかなり目の毒だから、さっさと自分の部屋へ連れ帰っておけ」
「……わかってます。もう少し暗くなったら、連れて行きます」
「?」
もしかして自分のことだろうかと、ヒロインが顔をあげてリュウガを見る。
「いい判断だ」
既にヒロインに背を向けていたリュウガは、手をひらひらさせて航海室を去って行った。
翌朝。
「ナギさん、おはようございます。昨日はお手伝いできなくてすいませんでした」
朝食の手伝いに厨房へ来たヒロインは、いつもと変わらない。
ただ、首筋の微妙なところにキスマークがついている。
本人は、気付かないだろう。
下を向いて野菜の皮むきをしている彼女を、身長差ゆえに見下ろすと、髪の隙間から首筋に残ったキスマークがやけに目立つ。
……シンの野郎、わざとだろ…。
その意図も、なんとなく分かるような気がした。
小豆粥を喜んで持って行ったきり、夕食の手伝いどころか夕食を食べにすら来なかったヒロイン。
からになった椀を厨房へ持ってきて、恋人は部屋で休んでいると告げたシン。
「そこの芋剥いたら、隣の袋、倉庫へ置いてきてくれ」
「あ、はい。わかりました。隣……小豆…の袋ですね」
だんだん小さくなった声を訝しんでナギが視線をヒロインに向ける。
耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうに俯いてジャガイモの皮を剥いている姿があった。
赤くなった肌に、より赤いキスマークが目立つ。
こういう反応をヒロインがする時の理由は、おおよそ理解できてしまう敏いナギ。
……今回は小豆か…。
ナギはそっとため息をついて、調理を続けた。
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