逢い身ての


夕食の時だった。
「今度あの島に行ったら、みんなで一緒に、あのお城みたいな宿に泊まってみたいですね」
 無邪気なヒロインの言葉に、ハヤテが飲みかけのスープを噴き出した。
 トワも、「んぐっ」と料理を喉につまらせる。
 リュウガが「あっはっはっは」と笑ってシンの背中を叩く。
「?」
「みんな一緒がいいの? ヒロインちゃん」
 にこやかなソウシが聞くと、
「だって、みんなで一緒に泊まった方が、楽しくないですか? お城の宿、中の部屋はどんな風になっているんだろう?」
「……ま、ふつうの宿よりは、調度品が豪華だろうねぇ。宿賃も高いけど」
 ヒロインの恋を応援して居候しているファジーが、無難な返答をした。
「ファジーさん、泊まったことあるんですか?」
「ああ、あたいくらいのイイ女なら、何度もあるさ」
「すごいですー、ファジーさん」
「でもねぇ…、あ、ああいう宿は、宿賃がものすごく高いんだよ。泊まるとしても、その…なんだ。…二人分がせいぜいだと思うよ」
「そうだな。あそこは、みんなで一緒に泊まるところじゃねえ」
 リュウガも同意する。
「あれ? リュウガ船長も、泊まったことあるんですか?」
「当たり前だ」
「そうなんですかぁ…。いいなぁ。ファジーさんやリュウガ船長は、泊まったことあるんだー」
 泊まってみたいなー、と呟くヒロインに、にこやかなソウシが言う。
「じゃあ、今度、泊まってみようか、ヒロインちゃん」
 一同が、ソウシの発言に目をむく中、
「本当ですか? ソウシ先生」
 何もわかってないであろうヒロインが身を乗り出す。
「ドクター、冗談はやめてください」
 シンが冷ややかな声で立ち上がった。
ヒロインの腕を掴む。
「シンさん?」
「………」
 シンは無言で、引きずるようにヒロインを連れて食堂を出て行った。

「まったく。…人が悪いな、ソウシは」
 リュウガが喉の奥で嗤う。
「だって、みんな、あの調子でヒロインちゃんに話されても困るでしょ?」
 自分がああ言えば、シンがどんな反応を示すか判っていたから、とにこやかに続けるソウシ。
「あーあ。シン怒ってたなー。今夜も、トワのとこで寝ようかなー」
 ハヤテが溜息をついた。

「シンさん? また私、何かいけないことしました?」
「………」
「あの…よくわからないけど、ごめんなさい」
「………」
「何か、シンさんが怒ること、したんですよね?」
 シンは、立ち止まって、盛大な溜息をついた。
「お前、誘われたら、ドクターとあの宿に泊まるつもりか?」
「できれば、シンさんと泊まれるといいなーって思いますけど…」
 シンが腕を組んでヒロインを見下ろす。
「ヤマトには…確か…逢引宿という呼び名だったか…あったよな?」
「はい。だいたい、酒屋がたくさんある通りの隅っこに、ひっそりとありましたけど」
 どちらかというといかがわしい宿なので、夜もあまり明かりがなく、暗い感じでどこが入口なのかもわからないような建物だった、と続ける。
 とりあえずヒロインの知識を確認したシンは、意地悪な視線と口調になった。
「お前がドクターと泊まりたいと言った城は、その逢引宿だ」
「えぇぇぇぇぇっ」
 だって、あんな堂々と、煌びやかで、お城で、大きな門があって……。
 逢引宿って、街の隅などに隠れるようにあるハズじゃ…。
 先程までの自分の言動が、なんだか恥ずかしくなって、火照ってくる頬を両手で覆う。
「みんなと一緒に泊まりたいだなんて、お前は、俺一人じゃ、ぜんぜん足りないわけだな?」
「そ、そんなこと言って…ないです…」
「俺には、おまえが、そう言っているように聞こえたがな」
「ご、ごめんなさいっ」
 耳まで真っ赤にして動揺するヒロインを、シンはさらに言葉で虐め苛む。
「お前は、ドクターにもして欲しいだなんて、いやらしい女だな」
「違います、違いますっ」
「ドクターに誘われて、喜んでいただろう?」
「ち、違います…」
「想像して喜んでいたんじゃないのか? ドクターに抱かれることを」
「し…知らなかったので、そんなこと…」
「そんなこと何だ? 今、知って、想像したのか? 俺に抱かれている時みたいに赤くなっているぞ」
「違います…。ごめんなさい……許して…」
「許して下さい、だろ」
「シンさん、ごめんなさい。…許して下さい」
 なぜシンが怒ったのか、十分理解したヒロインが、恥ずかし気にうな垂れる。
「許して欲しかったら、今夜は俺の言う通りにしろ」
 ヒロインは、黙って頷いた。

「俺を誘え」
 ベッドに座った不機嫌そうなシンに言われて、ヒロインは戸惑う。
「さ、誘うって…?…」
「俺が、お前を抱きたくなるように、淫らな誘惑しろって言っているんだ」
「ど、どうやって…」
「そのくらい、自分で考えろ」
 ヒロインは、逡巡して動けない。
誘惑なんて、どうやればいいのか、ぜんぜんわからない。
「できなかったら、俺は浮気者のお前を許さないからな」
シンに冷たく言われて、ヒロインは、それは嫌だ、と強く思った。
 散々、魅力がないと言われている自分だけれど、シンを好きな気持ちは確かで、他の誰にも気持ちが揺らいだことはない。
 シンが大好きだ、と。
 抱かれるのは、シンでなければ嫌なのだ、と。
 今は、精一杯伝えなきゃいけないと、顔をあげる。
 不機嫌そうな、怒った顔で自分を見ているシンと目が合った。
「……」
 ヒロインは衣服を脱いで、生まれたままの姿になる。
「シンさん…」
 ベッドに座るシンに歩み寄って、手を伸ばす。
 シンは動かずにヒロインを眺めている。
「シンさん…好き…」
 ヒロインの手のひらがシンの頬を撫でる。
 シンは反応せずに、ヒロインを眺めているままだ。
「シンさんが好き…シンさんだけが好き…」
 動かないシンに、ヒロインからキスをする。
「シンさんだから、好き…」
 もう一度キスした。
「シンさんじゃなきゃ、嫌なの…」
 相変わらず、不機嫌な表情で眺められて、ヒロインの目から、涙があふれてきた。
 シンの足もとに跪いて、祈るように指を組み、見上げた。
 涙がヒロインをの頬を流れる。
「シンさん。…お願い。……私を抱いてください…」
 潤んだ瞳でまっすぐにシンを見つめる。
 涙が床に垂れる。
 シンの瞳がようやく揺らいだ。
 ふっと口許を緩めると、優しくヒロインを見下ろして、指先で流れる涙を拭う。
「………恐ろしくストレートな誘いだな」
 まさか、こうくるとはな、と苦笑してヒロインの顎を持ち上げた。
「好きな女に、泣かれた上に、これだけまっすぐに乞われたら、我慢の限界だ。お前、他の男には、コレ絶対やるなよ」
 照れたように、キスをする。
「シンさん…」
「…俺も、欲しいのはお前だけだ」
 床に跪いていたヒロインの身体を抱えて、シンはベッドに乗せた。
 衣服を脱いで、指を絡めると、深く口づける。
「シンさ……ぁ…んっ…あはんっ…」
「こんなになったのは、お前の誘惑のせいだからな」
 硬くなったシンの分身を、ヒロインの下半身に擦りつける。
「今日は手加減できないぞ」
 シンの先から滲む液体が、ヒロインの秘壷を何度も濡らして入口を覗う。
「あぁんっ…シンさ……」
 入りそうで入ってこないもどかしさが、ヒロインを乱れさせる。
「シンさんっ…やぁ…もっと…」
 求めるヒロインの声に、シンの分身は更に硬さと熱さを増して、侵入した。
「ああぁぁぁぁっ」
 猛ったものが、激しく、激しくヒロインを責め立てていく。
 ヒロインの中で快楽が駆け巡り、すべてを真っ白にしていく瞬間、
「シンさん、大好き」
 ヒロインは精一杯の声で告げて、シンを抱きしめた。


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