恋人と分身


夕食の片付けを始めてすぐに、シンが二人、連れ立って厨房にやってきた。
ソウシの薬で二人に分身したと話には聞いていたナギだったが、見たのはその時が初めてだった。
「おい、ヒロイン、ちょっと来い」
いつものシンが、恋人を呼ぶ。
舵をとっていたのだろう左右対称のもう一人のシンは、随分と疲れている印象で無口だった。
「はい。なんでしょう、シンさん」
忠犬のように、呼ばれてパタパタとシンのもとへ駆け寄っていくヒロイン。
シンが、視線をナギへ向ける。
「連れて行くぞ?」
「……ああ」
二人のシンが、ヒロインを連れて去っていく。
分かりたくもないのに、雄の気配がするシンの視線でその意図がわかってしまったナギが秘かなため息をつく。
「……俺がどうこう言うことでもないな…」
今夜はヒロインが手伝いに戻ることはないと確信したナギが、独り黙々と片付けを続けていった。


「シンさん、部屋まで来ましたけど、何の御用でしょう?」
きょとんとしたヒロインを見下ろしたシンが、艶めいた笑みを浮かべた。
「相変わらず鈍いな」
「え?」
左右から自分を取り囲むシンが、同時に喉の奥で笑う。
「…んっ」
いつもと眼帯のつけ方が異なるシンが、顎を上向かせて唇を重ねる。
「いつもの二倍、愛してやるぞ?」
もう一人のシンが耳元で囁いて、指先で優しくヒロインの体の線をなぞる。
「…っ」
キスをしているシンの指もまた、優しく首をなぞり、髪を梳いて、ヒロインの身体をその気にさせていく。
ベッドに運ばれたヒロインが、二人のシンを交互に見た。
「でも…あの……私は一人しかいませんけど……」
性にかかわることは、シンに与えられたことしか知らないヒロインである。
その無知ぶりが愛おしく、苛めたくなる。
「心配するな」「方法ならいくらでもある」
シンの四本の手が、衣類を次々に外してヒロインの肌を撫で、弄る。
露わになった胸へ二つの唇が吸いつき、甘い刺激を与える。
一方は甘い刺激を腹から腰へと辿り、もう一方は首から耳朶へと辿る。
「お前の唇は、上と下、二つあるだろう?」
からかうように耳元で囁いたシンが、唇を重ねて歯列をなぞり舌を絡ませる。
もう一方のシンは、ヒロインの両足を開いてその中心へ口づけ、襞をなぞり、奥へ舌を差し込んだ。
「んっ…ふ……」
それぞれに与えられたことのある刺激でも、二か所同時は初めてのことである。
背を仰け反らせて震えるように反応するヒロインの肌が一気に桜色に染まる。
重ねられた唇の間から漏れだすヒロインの喘ぎと呼応して、襞の奥からも潤滑の液が流れ出し、ピチャ…クチュ…と室内にシンの舐める音が流れる。
「キスだけじゃ物足りないようだな?」
襞の中へ、シンが指を差し込んでかき混ぜる。
クチャクチュと、思わずヒロインが恥ずかしくて耳を覆いたくなるような音が、ベッドの上で響く。
「このへんも、物欲しそうだな? もっと触ってほしいと硬くなっているぞ?」
もう一人のシンは、両手で胸の突起をつまんでヒロインの耳元で囁く。
「あぁ……ふぁ……」
「どうした? 指じゃ不満か?」
シンが指先で襞の奥を嬲りながら、もう一方の指先で茂みの奥にある小さな突起を嬲る。
抓んだ両胸に力を加えたりゆるめたりしながら、強張るように震えてのぼりつめていくヒロインを愉しむように見下ろす。
「シンさ……ああぁぁぁっっ……」
ヒロインが切なげにシンを呼び、強く体を反りかえらせて震えた。


「2倍なのはダメージだけじゃないな…」
呼吸を乱しながら、シンが呟く。
少し不思議そうにシンの最も敏感な部分を口に含んでいるヒロインの瞳が上目づかいに、恥ずかしげに揺れた。
「手加減できないほど、お前がイイと言ったんだ」
その顎ををそっと撫でて囁く。
シンの言葉に反応して、ヒロインのもう一方のシンを受け入れている部分がきゅんと収縮する。
「くっ……」
ヒロインの腰を掴んで背後から貫いているシンが、顔を歪めた。
「…時間がない……動くぞ?」
ヒロインの体が前後に揺らされ、熱く固くなったシンの一部が交互に差し込まれる。
「ふっ……んんっ……ぁふんっ……んぐっ……ふぁあっ……」
甘美で責苦のようなリズムが、次第に早くなっていく。
「ふ…んっ…あ…んっ…あぁ…んっ…」
しかし。
突然、呼吸の苦しさが無くなり背後から体の奥へ熱いものが注がれた。
「…ちっ………時間か」
乱れた呼吸のシンが、舌打ちをする。
「?」
いつのまにか、一人になっているシンをヒロインは振り返った。
うまく回転しない思考で、もう一人いたはずのシンを探す。
「…なんだ、もっと欲しいのか? 淫乱なヤツだな…」
そのヒロインの様子に、シンは苦笑して唇を重ねた。


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