解呪の言葉


「あの、シンさん、握手しませんか?」
航海室に戻ってきたヒロインの言葉に、シンは舌打ちした。
「なぜ、お前と握手をしなければならない?」
「あ…えーとですね…その……」
理由を尋ねられて、ヒロインは視線を泳がせた。
「どうせ、ドクターが何か言ったんだろう?」
腕を組んで呆れたように溜息をついたシンが、ヒロインの目の前に立った。
「お前に付き合って握手をしてやってもいいが、その前にお前が俺をどう思っているか言ってみろ」
「え? シンさんを…ですか?」
ヒロインは一生懸命考えながら、言葉を紡ぐ。
「えーと、優しくて、綺麗で、何でも知っていて……あっ」
何か思い当ったように真っ直ぐシンを見上げたヒロインが、えへへ、と照れ笑いをしながら言う。
「シンさんは、世界で一番大切な人です」
「………」
はあぁぁぁぁぁ、とシンはため息をついて、手を差し出す。
「まあ、いい。ほら、握手してやるから手を出せ」
「うふふ。良かったです。シンさんまで、女の人と握手ができないようになっていたら、どうしようかと思いました」
嬉しそうなヒロインをシンは無表情で見下ろした。
「これでいいな?」
シンは、ヒロインが握っていた手を離して、再び腕を組む。
「はい。あ、そうだ、私、洗濯物の仕事に戻りますね」
航海室から去っていくヒロインを見送ったシンが、ほっと息をついた。
「…まったく……余計な時に無駄な知恵を使いやがって………」
確かにヒロインの脳裏には『好き』の二文字があったはずなのに、他の仲間と同じになったらシンが怒るとでも考えたのか、あえて避けて考えているのがシンにも分かっ た。
「言わせるのは簡単だが……」
一昨日、シンは宝探しに行った古城で、かつてその城の女主人が残した呪詛を受け、好きな相手に触れると息も止まるような激痛を胸に覚えるようになっていた。
対処法は既に調べてある。
好きな相手に『好き』だと言われれば、呪いは解けるのだ。
意図的に言わせるのは簡単だが、できれば何も知らないヒロインが呪詛と関係なく告げた言葉を聞きたいと思うシンだった。
それが、いかに非効率的なものかは、シン自身もよく分かっている。
ソウシから痛み止めをもらってはいたが、薬を飲んでも、多少凌ぎやすい痛みになる程度で、激痛には変わりなかった。
だからこそ、言わせてしまうのが最も合理的である。
同じ呪いを受けたソウシとナギは、誘導して言わせ、呪詛から逃れている。
ただ、シンの感情が、その合理的な方法を拒んでいた。
「…このままもう少し様子を見るか」
シンにとって、解決法がわかっているという事は、余裕を持つに足る状況だった。


お風呂上りのヒロインが部屋に戻ると、シンの姿は今夜も既に部屋から去っていた。
航海図作成が忙しいと言って、シンは毎夜、航海室で過ごしている。
たまにそういうことがあるので、ヒロインはそれほど気にしてはいなかった。
「あ、そうだ。何か飲み物、届けよう…」
ヒロインが立ち上がって部屋を出る。
厨房へ向かうと、ナギの声が聞こえてきた。
「馬鹿だな」
「ふん…」
「……まあ、気持ちは解からないでもないが…」
「なら、余計なこと言うなよ」
もう一人の声は、シンである。
何の話だろうと立ち止まると、それきり、話は聞こえなくなってしました。
しばらくして、シンの声がする。
「おい、ヒロイン。いつまでそんなところに突っ立っている? 入るのか入らないのか、はっきりしろ」
「……来てたんですね、シンさん…」
シンのところへ飲み物を持っていく必要が無さそうだと思うと少し残念で、がっかりしたようにヒロインはナギとシンに顔を見せた。
「まるで、俺がここにいたらいけないような顔だな」
なんとなく不機嫌そうに、シンがヒロインを見る。
「あ、いえ…そういうわけでは……」
「ほら、シン。時計草のジュースだ」
ヒロインの目の前で、ナギがグラスを差し出し、シンが表情を少し和らげて受け取る。
「時計草? シンさん…好き…なんですか?」
何気なく聞いた瞬間、シンがはっと顔をあげてヒロインを睨んだ。
「おまえな…このタイミングで言うか」
「???」
なんとなく怒っている気配を感じるものの、意味が分からずヒロインはナギを見る。
そのシンとヒロインの様子に、ぷっ…とナギが噴き出して笑った。
「よかったじゃねーか、シン」
「どこがだ……」
至極不服そうなシンが、ヒロインの腕を掴んだ。
「? シンさん?」
きょとんとしたままシンに連れて行かれるヒロイン。
「……気持ちは解からないでもないが…」
二人の背中を、ため息交じりにナギは見送った。


「んっ……」
部屋に戻るなり、壁に押し付けられて貪るようなキスをされ、ヒロインは呼吸を荒げた。
「ちょ……まって、くださ………シンさっ……」
服の中に入り込んできたシンの手が、湯上りの肌を擦る。
「ひゃうんっ……」
胸のふくらみの敏感な部分をシンの指の間に挟まれて、ヒロインがビクリと反応して声を上げた。
「三日分、可愛がってやるからおとなしくしてろ」
意地悪な笑みを浮かべたシンが、ヒロインの耳元で囁く。
確かに、シンに触れられるのは三日ぶりだとなんとなくヒロインが思う間もなく、敏感な部分を指の間に挟んだシンの掌が、やわらかな胸のふくらみを強く弱く弄ぶよう に揉んで再びヒロインの唇を塞いだ。
今度は、ゆっくりと味わうように舌が口腔内を撫で、ヒロインを溶かしていく。
「ん……ふっ……はぁ…」
ずるずると、シンに押されるように壁を背に、ヒロインは座り込んだ。
唇を離したシンが、ヒロインの服をまくりあげ、胸の突起を指先で抓む。
「ひあっ……ゃんっ…」
「ちょっと触っただけで、ずいぶんと固くしているじゃないか」
「だって…あんっ……」
指先の動きに翻弄されて甘い声をあげるヒロインに、シンが艶のある笑みを浮かべて言った。
「たまには、胸だけでイかせてやろうか?」
「え?」
屈みこんだシンが胸の突起を口に含んで転がし、吸う。
「ふっ……」
シンの指先が、突起の周りやふくらみの全体を撫で、揉み、執拗に刺激する。
「ふあっ……あ……あっ……」
ヒロインが胸から背中を滑るように腰に広がっていく快楽の波を感じて、驚いた表情を浮かべつつ、目を潤ませた。
「やっ…シンさん……ぁぁ…あっ……」
強い刺激を避けた焦らすようなシンの指の動きに、ヒロインの肌が桜色に染まっていく。
「も…やめ……。ゃあんっ…」
はだけた胸をシンに差し出すようにヒロインが背を仰け反らせて、悶える。
「エロい顔して、何のおねだりだ?」
「ちが……ふっ…あ、あっ…あぁ……っ…っ」
だんだんたと近づいていた何かが背骨を一気に走り下りて全身に広がっていくのを感じながら、ヒロインは声にならない声を上げた。
「胸を触られただけで、こんなに濡らして淫乱だな」
くったりと、されるがままになったヒロインの服を脱がし、ベッドに膝を立てて足を開かせた格好で乗せると、シンは妖しい笑みを浮かべた。
「おねだりしてみろ…」
「……え?」
潤んだヒロインの瞳が、シンを見返す。
「どこをどうして欲しい?」
「……」
俯いたヒロインの顔が、羞恥に染まる。
その反応を愉しむように、シンが開かせた足の中心部へふっと息を吹きかける。
「ん…」
「ククク…おねだりするまで、お預けだな…」
喉の奥で笑いながら、シンは指と舌を内股から膝へと滑らせ、刺激する。
「ん…ふ……」
誘うような刺激に、ヒロインの腰が浮きかけると、刺激を止め、潤滑の蜜を滲ませてシンを待つ部分へ息を吹きかけた。
「や…」
「この口は、ひくひく動いて、涎を垂れ流しているな…」
「うぅ……」
恥ずかしげにヒロインが腕で顔を覆う。
「仕方のないやつだ。キスして欲しいか入れてほしいか、自分で選べ」
「…キ、キス……」
より、言いやすい単語を選ぶヒロインの腕を捕えて、シンが意地の悪い笑みを浮かべた。
「そうか、ならキスしてやるから自分で入れろ」
「え?」
ヒロインの手首を捕らえたまま、シンは膝の間に屈みこんで蜜が溜まった入口を強く吸った。
「ああっ…」
そのまま、深いキスをするように、舌が入り込んで動きまわる。
けれど、すぐにシンは離れ、代わりに捕らえたヒロインの手指を入口にあてる。
「何本入れる? まずは一本か?」
ヒロインの右手の中指を、シンが押しこんだ。
「あっ……」
抜こうとしても、シンに捕らえられている手は自由が利かない。
「まだまだ余裕があるな。もう一本こっちを入れてみるか?」
ヒロインの左手中指も、シンが押し込む。
「ほら、こうして自分で奥をかき混ぜてみろ」
手首を捕らえたシンがヒロインの手を揺らすと、粘液がくちゅくちゅと音をたてて始めた。
更に、ほかの指が入口の周りを擦り、入口の上にある小さな芽も一緒に擦られる。
その刺激に、自然と腰が揺れ始める。
「あぁ、いやぁ…」
「自分で二本も指を入れて腰まで振って、イヤじゃないだろう?」
シンが、捕えた手をより早く揺らすと、音のリズムが変わり、ヒロインの呼吸が乱れる。
ぐちゅぐちゅと、ヒロインの中をシンに操られたヒロインの手がかき混ぜ、擦る音が部屋に響いた。
「も…やだぁ…シンさ…あっ……あ…ふ…あぁ、あっ…」
シンの手に逆らおうとしていたヒロインの手が、次第に行っている動きに従い始める。
「続けろ。このまま、自分でイケたら、ご褒美をやろう」
絶頂が近付き、止められなくなっている様子を看取ったシンが、ようやくヒロインの手を解放した。
「あぁ…いゃ…あ、あ、あ…」
シンの手が離れても刺激を求めるカラダの欲求が、ヒロインの手を動かし続ける。
「ああ…あぁーっ、あぁぁぁっ」
羞恥の涙を流しつつ、手足を強張らせて目の前で絶頂を迎えたヒロインを、シンが優しく抱きよせた。
「よくやった」
乱れる呼吸に、ついばむようなキスを繰り返す。
「ご褒美をやろう…」
くちゅり、と音をたてて熱く固い刺激が、ヒロインの中にゆっくりと入ってくる。
「はぁんっ……あ…シンさん……もっと……」
ヒロインが、甘えるような声をあげてシンに抱きつく。
「ずいぶんと素直になったな」
シンは、ねだるように半開きになったヒロインの唇を塞いで、ゆっくりと腰を動かしはじめた。


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