お揃いの夜
ヒロインが風呂から部屋に戻ると、ベルガモットの香りが部屋に漂っていた。
「ちょうどいい。お前も飲むか?」
ポットを軽く上下させながら紅茶を注いでいたシンが、ヒロインにカップを差し出した。
「え?」
差し出されたカップを見て、湯上りのヒロインは驚いたようにシンを見る。
「あの…シンさん、このカップどこで…」
「厨房の棚に、これだけ別にしまってにあったが? これは、俺たち用だろ? 違うのか?」
「いえ、違いませんけど…」
紅茶を注いだもう一方のカップを、当り前のようにシンが持ち上げ、立ち尽くすヒロインをチラリと見た。
「突っ立ってないで、座ったらどうだ?」
「あ…はい…」
言われるままに座ったヒロインは、静かに紅茶を飲むシンを見つめて、様子をうかがう。
「なんだ?」
「あの…。嫌じゃなかったですか?」
「何が?」
「えっと…その…。二人でお揃いのカップとか……」
恐る恐る尋ねる様子が小動物を連想させ、シンは笑いを堪えながら、努めて淡々と答えた。
「そうだな、あからさまなハートや文字の入ったペアカップなら、船内で堂々と使うのは遠慮したいところだが、これは、なかなかいいデザインだから、使えるな。さす
がは俺の女だ」
シンの言葉に、ヒロインが安堵の笑顔を浮かべる。
「よかったぁ…」
そして、シンの淹れた紅茶を美味しそうに口に含んだ。
えへへへ…と、昼間、ナギが目にした幸せそうな笑みを浮かべる。
「シンさんの淹れた紅茶も美味しいです」
「……も?」
シンの眉がぴくりと動いたが、ほんわか幸せに浸っていたヒロインは、その些細な反応に残念ながら気付かなかった。
「昼間、このカップでナギさんの淹れた紅茶を飲んだ時、すっごく美味しくて…」
「ほう…つまり、ナギの前でもそうやって笑ったわけか」
「はい。嬉しそうだって、ナギさんに笑われました」
ヒロインの言葉に、チッ、と、シンが舌打ちしてカップを置いた。
「お前はまったく……。ペアカップなんてものを用意するくせに、自覚が足りないようだな」
「え? あっ…」
持っていたカップを取り上げられ、ヒロインが振り仰いでシンを見上げるのを待っていたようにキスが落ちる。
「……ん」
お互いに紅茶を飲んだばかりの舌は、熱を持って絡み合わさり、シンの手慣れた指先が、キスの間に、するするとヒロインから服をはぎ取る。
「ナギにあんな笑顔を曝したお仕置きをしないとな…」
いつのまにか全裸になったヒロインを抱き上げてベッドに置いたシンは、自らも服を脱いでベッドに乗った。
「あの……、明かりは…」
「消したらお仕置きにならないだろう?」
シンが身体を隠すように小さくしたヒロインの膝を掴んで左右に押し開く。
「きゃあっ」
慌てて閉じようとする脚の間に入ったシンは、抗おうとしたヒロインの腕を片手で捕えて、最も敏感な部分を舌で撫でた。
そのまま熱を持った舌先で、花びらのような入口を舐め、蜜を誘うように刺激する。
ほどなく、透明の潤滑液がじんわりと滲み始め、ビクンと、ヒロインが腰を浮かす。
「ぅんっ……ゃっ……シンさ…恥ずかしっ……」
明かりの中で、恥ずかしげに目を閉じて、首を弱々しくふったヒロインに、ふとシンが思いついたように顔をあげて微笑した。
「そういえば、お揃いが好きなんだったな? お揃いにするか?」
「?」
シンの言葉に、ヒロインがそっと目を開けた。
ヒロインは、与えられた刺激のとおりに、目の前にあるシンの分身に舌を這わせた。
すると、シンがヒロインの襞に口を寄せ、吸い上げる。
「ふっ……」
漏れてしまう甘いため息と共に、熱と硬さをもったシンを口に含み、同じように吸った。
「……っ」
シンの反応が少しだけ伝わり、再びシンがヒロインの入口に舌を這わせて指を蠢かす。
その刺激に流されてしまうのを感じながらも、一生懸命シンに倣ってヒロインは再び分身に舌を這わせて、手でそっと撫でた。
「本当にエロい奴だな。こんなに溢れてくるぞ」
愉しむようなシンの声が耳に届き、入口に舌を差し込んだシンが、指先で芽吹いた粒を撫でながら、襞全体を音をたてて強く吸い上げる。
「ぁんっ……」
背中を駆け回るような痺れた刺激に、思わず仰け反ってた声をあげたヒロインは、手にしていたシンの分身を反射的に強く握りしめた。
「くっ…」
敏感な部分を思いのほか強く握りしめられたシンが、眉を寄せて身体を強張らせ、ヒロインへの刺激を止める。
「……お前にはまだ早すぎたか」
そっと呟き、苦笑して身体を起こしたシンが、体位を入れ替えてヒロインに口づけた。
「? …シンさん?」
中断された意味も判らずにいるヒロインを見下ろして、シンは気にするなとでも言うように微笑んだ。
シンは、ヒロインに娼婦のような技術を求めているのではない。
誘導した、シックスナインと呼ばれる体位をこなすだけの余裕が、まだ未熟なヒロインには無いだけのこと。
中断したのがヒロインのせいではないと、男の都合によるものだと思わせるだけの技と余裕は、幸い持ち合わせているシンである。
「…入れるぞ」
熱をもって蕩けた襞と蜜をかき分けるように、シンの分身がヒロインの中へ一気に入り込んだ。
「はぅんっっっ」
そのまま、ヒロインを休ませることなく、腰を進めて急きたてていく。
「待っ…シンさ…あっ、あぁっ、ああっ」
切なげな甘い声が、次第に高まっていく。
シンが不意に動きを止めると、高まりを中断されたヒロインが少し不満げにシンを見た。
「お前だけがイッたら、お揃いにならないだろ?」
誂うように笑いつつ、双丘の中央で誘う赤い実を摘み、捏ね、擦る。
「あっ…あんっ…」
新たな刺激に、ヒロインはシンが埋まっている腰を自分で揺らし始めた。
「ほぉ。そのまま、お前が動いて俺をイカせてみろ。こっちは、手伝ってやる」
「そん…なっ……む…ムリぃっっっっ……」
胸だけを激しく攻め立てられたヒロインが、ひどく艶のある声をあげてシンの身体にすがりつくのを、シンは満足げに抱きとめた。
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