脳裏の薄霧



 耐えきれなくなった声が、部屋に甘く響いた。
「んっ……」
「…どうせ酔うなら、俺にしろ」
 唇を離したシンの言葉に、ヒロインは白い喉をのけぞらせた。
 そっと触れて撫でていくシンの指先が、時折、身体の奥に燈った熱を肌に浮かび上がらせるかのように、刺激する。
 満月の宴でひどく酔ったヒロインだったが、ソウシからもらった薬草で酔いは醒めた。
 けれど、再び、世界が回るような酩酊感に襲われていた。
「ん……シンさ……」
 シンの服を汚してしまって謝っていたはずが、いつのまにか手を括られ、目隠しされてシンに愛撫される結果になっている。
「なんだ、撫でられているだけで、そんなに感じたのか? シーツに染みができてるぞ…」
 面白がるような、意地悪な声にヒロインは括られた手で秘部を隠そうと抗った。
「なんだ? 自分で広げて見せてくれるのか?」
「ちがっ……」
 シンの手が、ヒロインの指を掴んで秘部へ導く。
「ほら、指先が濡れるだろう?」
 ククク、と面白そうに喉で笑いながら、ヒロインの指を秘部に触れさせる。
「やっ…」
「粘液が、指に糸引いてるぞ。自分で触って、いやらしい女だな」
 言われて、指を引っ込めようと握りしめたヒロインの指を、シンは秘壺より上の小さな芽に押しつけた。
「なんだ、自分でこっちを触りたいのか?」
「…ん。やっ……嫌っ…」
 肌を真っ赤に染めて首を振るヒロインを見下ろしているシンが、ひどく満足げに顎を捕らえて口づけた。
「ふっ…ん………っ」
「目隠しが濡れてるぞ…そんなに嫌か?」
 優しい声で囁く。優しいけれど、どこか切ない、苦しげな声だ。
「……だって…」
 続きを言う前に、熱を持って猛るものが内股に触れて、ヒロインが言葉を切った。なぜシンの声が苦しげなのか、判ってしまったから。
「…だってなんだ? 欲しいのか?」
 先ほどまでの優しい声とは違う、嗤いを含んだ声でシンに聞かれて、ヒロインは黙り込む。意地悪な言い方をしているけど、入れたいと懇願されたように聞こえてしまったから。
「目隠しを外して欲しかったら、言ってみろ。どこに何が欲しいか」
「………」
「そうか。このままがいいか…。俺はお前の顔が見たかったが、仕方がないな」
「え?」
 答える前に、潤った秘壺の中へ侵入してくる熱。
「っ…はんんんっ…っ」
 奥まで入り込んできた熱に、ヒロインの背中が反り返る。
 ククっと、シンが嗤った。
「こっちを舐めてくれ、ってことか?」
 目の前に差し出された胸の突起を、シンが口に含む。
「はぅんっ……あ…ぁふ…」
 そのまま、身体が揺らされて、身体の奥を押し開いた熱が、出入りを繰り返す。自分がとても求められているのが伝わってきて、ヒロインは素直に身を任せる。
「ふ……んっ、あっ、んんっ…」
 与えられる刺激は、自分の様子をちゃんと伺いながらの、イイものばかりで。だから、もっと強めの刺激が欲しいと感じたところで、口の中で胸の突起を転がしていたシンが、的確に突起を噛んだ。
「ひぁっ…っっっっ」
 的確なタイミングで刺激されて、ヒロインの身体が小刻みに痙攣する。
「今、イったな…?」
 シンの手が、ヒロインの目隠しを外して、隠しようのない悦を湛えた目を覗き込んだ。愉しげに。
「手を自由にして欲しかったら、自分で動いてみろ」
 座位の状態だったシンが、身体を倒してつながっているヒロインを見上げる。意地悪な言葉が、やっぱり次は自分で動いて見せてほしいという懇願に聞こえた。
 その求める視線に操られるように、括られたままの手をシンの上についたヒロインは、余韻の残る身体をそっと浮かせ始めた。シンに、もっと気持ちよくなって欲しいと思ったから。


宴の途中、倉庫へ酒を取りにきたナギが、ふと船室の廊下で足を止めた。
 かすかに聞こえた声に、反射的に足がとまってしまったのだ。
 シンを呼ぶヒロインの声。
 いや、シンを求めるヒロインの声。
「…………」
 手にした酒瓶を見下ろして、ため息をつく。
 倉庫へ踵を返したナギは、もう一本、頼まれたものよりも強い酒を加え持って、甲板へ出て行った。

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