裏十題



01: あなたしか見えない
 港の酒場。
 あっという間に、美しく着飾った魅力的な人たちにシンさんが隠れてしまって、どうしていいか判らなくなる。
 そう言えば、今回も、宿で待っているように言われたのに、ついてきてしまったのは自分。
 最初に言われた通りに、宿で独り、待っていれば良かったのかもしれない。
 今からでも宿へ戻って待っていれば、きっとシンさんも帰ってきてくれるのだろう。
 誰にも気づかれないように、私はそっと、店を出た。
 宿へ急ぐ途中で、見知らぬ人に腕を掴まれた。
「独りでどこいくの? おじょうちゃんの店はどこだい?」
 ものすごくお酒臭いおじさん…酒場で働いていた時には、こんな感じのお客さんにも、上手く受け答えしてたはずなんだけど…どうやって離してもらったっけ? 
「あ、あの。スイマセン、私は別に…お店とかではなくて…」
 不意に、背後からウエストを引き寄せられて驚く。 
「俺の連れに何か用か?」
「シンさん!」
 おじさんが、慌てたように手を離して去っていく。
 たくさんの綺麗な人に囲まれていたシンさんが、どうして今、ここにいるんだろう。
「まったく…少しは懲りろっ」
 シンさんは何だか怒っていて、路地の暗がりへそのまま引っ張られる。
「あの…っ…」
 言いかけた私の言葉は、突然降ってきたシンさんのキスに奪われてしまった。
 こんな、人がたくさん通る道路で…。
 思わず離れようとしたのに、シンさんは私の力なんかじゃぜんぜん敵わなくて。動けなくて。
 私を押さえつけていたシンさんの手が、急に服の中に入ってきて、もう、どうしていいか判らなくて、離してもらえなくて。
「んんんっ、んーっっ」
 キスしているシンさんを間近で見れば、私を見つめている目がひどく真剣で。
 思わず抵抗するのもやめて、シンさんを見つめてしまった。
 シンさんの指が、服の中でくすぐったり抓ったりちょっと意地悪に動く。
「やん…ぁ…」
 すぐ横を沢山の人が歩いて行くのに、こんなところで…やっぱり嫌だ。
 言えないから、シンさんを見る。
 見つめる。
 シンさんがため息をついて、私を離してくれた。
「宿へ戻るぞ」
 すたすたと歩き出したシンさんの後を追う。
 一緒に宿へ戻ってくれると思うと、なんだか嬉しくて、腕を引いてくれるのも、とてもくすぐったい気分で。
 私はシンさんの横顔を何度も見つめた。

02: 秘密
 くすぐったがるヒロインの肩や脇をそっと刺激してやる。
 笑って身を捩っていたヒロインの吐息が、だんだん熱を孕んでいく。
 自分の指先一つで、眠っていたヒロインの情欲を目覚めさせ、肌を染めさせる悦び。
 そっと的確に触れて刺激してやれば、二の腕でも手首でもヒロインは反応してくる。
「あっ……」
 敏感になった肌は、どこを触れても、身悶える。
 まして、胸は、そっと指先でなぞっただけで背を反らしてその突起を俺に見せつける。
「まだ、ちょっと触っているだけなのに、エロい顔だな…」
「そんなっ…はぅっ……」
 背を反らせて俺に見せつけた突起を舐めてやれば、ヒロインは震えて甘い声で鳴く。
 初めはされるがままだったキスも、こうして煽ってやれば、素直に俺に応じて舌をからめ、俺を求め始める。
 もっとコイツに、俺を求めさせたい。
 俺だけを欲しがる身体にしてやりたい。
 俺でしか感じられない身体になるといい。
 この身体の全てに、俺を刻みつけて、俺無しでは呼吸もできないような身体になるといい。
 いっそ、このまま……。
「シンさ…ん…っ」
 ヒロインに名前を呼ばれて、自分の底なしの欲望から顔を上げる。
 俺の刺激で、体中の情欲が目覚めて、俺を求めて誘う身体。
「なんだ? 何が欲しい?」
 意地悪く焦らせば、そろそろ、恥ずかしいなんて言っていられなくなったヒロインは俺の名を呼ぶ。
切なげに。
愛おしげに。
誘う様に。
何度も。 
俺が欲しいと。
 俺の底なしの欲望。その奥底に沈めた秘密は禁忌。
「ヒロイン…」
 俺はようやく、求めるヒロインの望みを叶えてやった。
 まだ。
 もっと。
 俺が満足するまでは…。


03: ゆずれない
 シンさんが、睨んでる。
「……嫌です」
 シーツに押さえつけられている手が、少し痛い。
「もっと苛めるぞ」
「…それでも、やっぱり嫌です」
 本当に、シンさんが意地悪になる。
「お前は誰のものだ?」
「…んっ…あ……シンさんの…も…のです」
「なら、言うこと聞くよな?」
「はっ……ん……はい……」
 シンさんがあまりに意地悪で、つい返事をしちゃったけど…。
「なら、さっきのことは忘れろ」
「……嫌です。忘れられません」
「俺が忘れさせてやる」
「…嫌です。忘れたくありません」
 シンさんが、困ったように笑う。
「まったく…お前は…」
 硬くて熱いシンさんが、すごく奥へ入り込んできて、思わず息を飲んで身体が反り返ってしまう。
「はぅんっ……」
「なら、忘れなくてもいいから、思い出すな」
「そんな…っあん……あっ……」
 なんだか、体中が痺れて頭の中が真っ白になった。
 それでも…起こしてしまった真夜中に、寝ぼけてあんな可愛い反応したシンさん…やっぱり…忘れたくないです…。 


04: 距離感  
 また、ヒロインを抱けない数日間が訪れる。
 その気になれば、抱くことだってできるが…きっとアイツは嫌がるだろうから。
 正直、俺は一向に構わないが、いや、逆に、加虐心がひどく煽られそうだ。
 あの肌に、血を…。
 とんでもなく恥ずかしがるアイツを…。
 抱けない。
 たったひとつの制約を意識するだけで、いろいろなモノが理性を邪魔してくる。
 それまで何事も無く見過ごしていられた、ふとした時に目を伏せたり、俺の名前を呼んだり、笑ったりという仕草に、いちいち囚われる。
 ヒロインを海賊にしてしまうことに迷い、一度も触れずにいた時は、触れたいという欲望をもっと上手く処理できていたはずなのに。
 どういうわけか、たった数日間という自分も納得しているはずの禁欲意識が、逆に劣情を逆撫でしつづける。
 些細なことで切迫していく自覚があるだけに、ヒロインと距離をとる。
 いつもの距離では、止まらなくなるかもしれない。
 いや、きっと、止めることはできる、と、思うが…。
「殊勝な心がけだね」
 甲板で船の速度を確認していると、背後からドクターの声がした。
「ドクター…何がですか?」
「ちょっと感心したけど、不安にさせちゃう辺りが、シンも、まだまだだよね」
 クスクスと面白そうに笑われて、ドクターの意図していることが判る。
「ヒロインちゃん、淋しがっていたよ。もっとかまってあげたら?」
 からかっているにしては、不穏だ。
「シンができないなら、俺がかわってやってもいいけど…」
 くすくすと笑うドクターは、本当に最悪の性格だ。
 結局、これを俺に言いたかったに違いない。
「ドクター、冗談は言葉だけでお願いします」
 どんなに睨みつけても、このドクターには効果がないのは承知しているが。
「せいぜい頑張ってね、シン」
 案の定、ドクターはあっさり背を向けて去っていった。 


05: 泣きたくなんかないけど
 なんだか無性に確かめたくなって、突然抱きついたのに。
「まったく…」
 そう言って、とても優しく抱きしめてくれるシンさん。
 たまに、どうしてシンさんに会えたんだろう、と思いを馳せる。
 一番のきっかけは、働いていた酒場で。
 でも、家が貧乏じゃなかったら、私はあの酒場で働いていなかったかもしれなくて。 
 お父さんがいたら、そんな貧乏にもなっていなかったかもしれなくて。
 考えれば考えるほど不思議。
 もしかして、今まであった出来事が全て、シンさんと会うためだったのかな、なんて思えてきてしまう。
「おい、一体どうした?」
「すいません。なんか、シンさんがちゃんとここに居るのか、確かめたくなっちゃって…」
「お前、バカか? いるだろ、目の前に」
 シンさんが、急にわたしの頬をつまむ。
「い、痛いれすっ」
「夢じゃないのが確認できただろ?」
 意地悪な顔で見下ろすシンさん。
 シンさんを見ているだけで、なんだか涙が滲んできて、シンさんに抱きついたまま、胸に顔を埋める。
「ヒロイン?」
 シンさんが、ちょっと困っている。
「そんなに痛かったか? おい、ヒロイン」
 名前を呼ばれるだけで、心の奥が温かくなる。
「………」
 シンさんが、溜息をついてじっとしていてくれる。
 すごく好きで、大好きで。
 ここに居てくれることがとても嬉しいことを伝えられなくて。
 これ、なんて言えばいいんだろう?
 なんて言葉があるんだろう?
 何も言葉にできなかったんだけど。
「……わかった…」
 シンさんが、ぽつりと答えてくれた。


06: 視線
 ヒロインは抱いて欲しい時、目で誘う。
 もしかしたら、本人も自覚していないのかもしれないが。
 風呂から出て部屋に戻ってきた時とか、二人だけになった時とか、チラリと俺を見て、視線が合う前に不自然に逸らす。
 そんな時は、多少無茶で強引な抱き方をしても、嫌がらない。
 もっとも、あれだけ恥ずかしがるヒロインが、自分から抱いて欲しいなどと言えるはずがない。
 もしも自分から言えるようなら、俺はもっといろいろなことを教えて、もっとヒロインを淫らにしている。
 けど、それはない。
 それでいい。
 ヒロインが俺を欲しがっているのは、俺だけが気づけばいい。
 ヒロインがその目で誘うのは、俺だけでいい。
「おまえなぁ、他のやつらを、そんな目で見つめるなよ」
 ベッドに組み敷いたヒロインは、期待と羞恥と悦びが混じった視線で俺を見上げる。
 着ている服を開いて俺の印をつければ、潤んだ瞳が切なげにもっと、とねだる。
 キスをして抱きしめてやれば、震える瞼の下で、嬉しいと瞳が応える。
 そのくせ、言葉は恥ずかしがりで、嫌がってばかりいる。
「キモチイイかイイ。どっちかちゃんと言ってみろ」
 ヒロインの身体を責め煽りながら命じても、俺を羞恥と迷いの色が濃い瞳で見返している時には、なかなか言わない。
 下手をすると、命じた俺に助けを求めてすがり付くような視線を送ってくる。
 それがまた、苛めているようでイイのだが。
 俺にだけ向けられる、雄弁なヒロイン視線。
 俺だけが解する視線。


07: 笑顔を見せて
 シンさんの意地悪は、愛情表現の一つなのだと、判っている。
 それでも、怒っていたり不機嫌だったりするシンさんは、時々、涙が止まらなくなるほど怖い。
 ただ。
 その後で。
 ごめん、とか、わるかった、とか、大丈夫か、とか言うシンさんは、泣きそうで、私なんかよりもずっとずっと傷ついたみたいな顔をしている。
 とても心配そうで、泣きそうな顔してる。
 シンさんを怒らせたり、不機嫌にさせたりしたのは、きっと私で。
 だから、なんだか全部私のせいで。
「ごめんなさい…」
 謝ると、なんだか余計にシンさんは哀しそうで。
 まるで触ったら私が壊れるとでも思っているみたい。 
 そんなこと、あるはずないのに。
「シンさん?」
「悪かったな……大丈夫か?」
 気遣ってもらっているのが伝わってきて、どこかほっとする。
「はい。大丈夫です」
 何がどう大丈夫なのか、自分でもよくわからないけど。
 こんなに哀しそうな顔は嫌だから。
 胸の奥が痛むから。
 笑って欲しくて。
「……大丈夫ですよ?」
 精一杯の笑顔で応える。
 シンさんの意地悪なら、何をされても全部許せてしまうから。
 シンさんが大好きだから。
 笑ってください。


08: 相談役
 昔から人に相談するとか、相談されるとか、そういう習慣がなかった。
 とりあえず、考えるべきことは全て自分の中で想定して、思考内で模擬実験をして、最善を導き出す。
 相談、という行為を頻繁に行う様になったのは、この船の航海士になってから。
 船の権限が船長にある以上、必要なことだった。
「おいシン、ちょっと相談がある。来てくれ」
 船長室へ行くと、机の上に地図が広げられている。
「この地図の海域に行くにはどのくらいかかりそうだ?」
「東の海、ですね。最低でも一週間。できれば二週間は欲しいですね」
「なるほどな。じゃあ、こっちの絵なんだが…」
 差し出された絵は、男女が交わる卑猥な絵。
「この娼婦か娼館知ってるか? どこの港にいるかまで判るといいんだが」
「こんなもの、いったい、どこで手に入れたんです?」
「地図とセットなんだよ。こんなヒント読み解けるの、俺かオマエか…と思ったんだがな」
「娼婦の得意技、ってところですか」
「思い当たる女いるか?」
 複雑に足を絡めて交わる絵には、背景に針のような葉を持つ樹木が描かれていた。
「女ではなくて、ヒントはこの体位かもしれませんね」
「体位ねえ…それもアリだな」
 船長が再び、絵を眺めて笑う。
「東の海マツバの港までの航路、調べてみます」
「おう」
 今回の地図とヒント。ヒロインがどんな顔して見るだろう? 書き写せと言われたら、どんな反応するだろう? いや、まず言葉を知らないだろうから…。
 面白そうな案が浮かんで、俺はヒロインを呼んだ。


09: 想いの行方
 トワくんと話していると、弟を思い出す。
 今、元気でいるかな?
 ちゃんと生活できているかな?
 家の中で、今まで自分が請け負っていた仕事は、代わりにやってくれているのかな?
 身長、どのくらい伸びたかな?
 なんとなく、そんなことが脳裏に浮かぶ。
 別に悲しいとかではなくて、きっと大丈夫だろうけど……忘れられるものでもないから。
「ヒロインさん、倉庫にいたネズミたちに、赤ちゃん産まれてましたよ」
「えっ、そうなの?」
「やっぱり、ネズミの赤ちゃんだから、本当に小さいんです」
「うわぁ、それって、ちょっと見てみたいかも」
「掃除終わったら、こっそり見に行きましょう。僕がいつもご飯あげるからか、ベッドの隙間のところに居ますよ。…あ、でも、こっそり行ったら、ヒロインさん、シン さんに怒られちゃいますね…」
「そんなことで、シンさん怒ったりしないよ、きっと…」
 なんてことを言っていたのに。
 あのあと、ソウシ先生に医務室のお手伝いを頼まれて、それからナギさんのお手伝いをして。
 夕食のあと、トワくんのところへシンさんに黙って行ったのがまずかったみたいで。
 シンさんが怒ってる…。
 怒ったシンさんは、ちょっと乱暴で。痛くて。怖い。
「ごめんなさい…」
 今回は、謝っても、ずっと無言で。
 無言のまま、あちこち触られたりして…。
 全然、好きって感じが伝わらなくて、なんだかすごく嫌だけど…怒っているから…シンさんには逆らえない…
「っ………」
 シンさんが無言だから、私も声とか出しちゃいけない気がして…。
「っふっ……」
 中に入ってきたシンさんは熱くて、シンさんに両足を引っ張られると奥が痛いくらいに押される。
「っ…っ…っ…」
 涙が自然と流れてきて、すごく嫌な気分になる。
「なぜ、言わない?」
 シンさんの声がやっとして、自分の足の向こうにあるシンさんの顔を見た。
 やっと、シンさんと目が合う。
「嫌なのに、なんで、今日は嫌だと言わない?」
「だって、シンさん怒っているから…」
 ごめんなさいと何回いっても…怒ったままだから。もう、どうしていいか分からないから。
「バカだな…」
「ふっあ……」
 シンさんが中に入ったままだけど、足を離して抱きよせてくれる。
「そんな辛そうな顔されてたら、こっちも気持ち良くならないだろうがっ」
 やっと、キスしてくれて、許してくれた。
「あっ…」
 嫌だったはずなのに、シンさんがちゃんと見てくれたら、嫌な気持ちはどこかへ消えてしまって…。
 ちゃんと、シンさんの好きが伝わってきて、身体が痺れるみたいに震える。
「おまえ…キス一つで変わり過ぎだ」
 シンさんが笑ってくれて。
 世界が温かくなった。


10: 告白、
 医務室へ手伝いに来たヒロインの鎖骨に、シンが昨夜残したのだろう印を一つ見つける。
 厨房で一緒に調理してたナギは、気付かなかったはずがないよね? 黙認か無視したのかな?
 この子は、気づいてないよね…ああ、急いでいたら、鏡で確認するのはちょっと難しいかもね。
 さて、どうしようか…。
「ヒロインちゃん、ちょっと大変なんだけど、あの一番上の棚、私が道具を動かすから、拭いてくれる?」
「あ、はい。わかりました」
「ヒロインちゃんにはちょっと高いから、そこの椅子に乗って拭いてくれていいよ。でも、…気を付けてね?」
 …ちゃんと気をつけないと、君に悪戯しちゃうかもしれないよ?
「はい。大丈夫です」
 一番上は、つま先立ちしないと、棚の奥が拭けないよね?
 不安定だけど、君は本当に大丈夫なのかな?
 残念、もうすぐ拭き終えるね…。
「きゃあっ」  
ガタンッ。
…くすくすくす。
「ああ、ソウシ先生、すみません。バランス崩しちゃって…」
「大丈夫だった?」
 本当に、期待を裏切らない子だね。大好きだよ。
「はい。ソウシ先生が支えてくださったので、大丈夫です」
 君はなんて簡単に、私の腕に収まってくれるんだろう。
「あれ? ヒロインちゃん、どうしたの? こんなところに痣があるよ。どこかに強くぶつけた?」
「えっ…」
 触ってしまおうか。君は、ここをシンに吸われて、どんな顔したんだろうね。
「押しても…痛くない?」
 おや、一気に真っ赤になっちゃって…可愛いなあ、ホントに。
「あ、あの、そ、それは、ぶつけたとかじゃなくて……あの…シンさんが…」
 ここは、ちょっと驚いたふりして、見下ろしてあげるね。でも、とぼけちゃおうかな。
「シンに何か投げつけられたの?」
「いっ、いえ。違います。そうじゃなくて、シンさんに………キスされたところかと…」
 俺の腕の中で、そんなに真っ赤になって俯いていたら、目撃した人はどんな誤解するかな?
「なんだ。そうだったの。ごめんね、打撲痕かと思って、心配しちゃった」
「いえ…すいませんでした。あの…もう大丈夫ですから…」
 本当は、もっとこうしていたいけど、離してあげる。
「ヒロインちゃん、さっきは気付かなかったけど、一度見つけると、やっぱりちょっと目立つね、そのキスマーク。絆創膏貼っておこうか?」
「あ、はい。お願いします」
 シンがつけた印なんか、いつまでも見せびらかしていちゃダメだよ。
 どうせ、シンが喜ぶだけなんだから。
「今度から、気を付けてね」
「はい…」
 気を付けていないと、本気で誘惑しちゃうよ?



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