風の通り道
「ごめんなさい、シンさん…」
ヒロインが、申し訳なさそうに俯いた。
「まあ、仕方がないな」
腕組みしたシンが、ちらりと、ベッドを眺める。
昼間、ヒロインが洗濯物をしっかり固定しておかなかったために、突風で飛ばされたシーツは5枚。
無事に海から回収したものの、塩水に濡れ、
午後、もう一度洗い直したそれらは、 夕立に遭うという不幸に見舞われ、
結局、夜になっても乾かずに使えない。
シンがヒロインごと守ったシーツを含めて突風の難を逃れた5枚は、無事に乾いたので、仲間5人に配ったという事態だった。
つまり、シンとヒロインのシーツが、無い。
「予備まで全部洗ったとはな…。大丈夫だ。シーツが無くても、眠るに支障はない」
「本当に、すいません。私が、きちんと固定しておかなかったから…」
「…そうだな。おまえが、責任とらないとな」
「…はい」
俯いたヒロインを見下ろしたシンが、クスリと笑った。
「わかってないな」
「え?」
シンを見上げた口が、突然、塞がれる。
「ん…っん…」
強く吸われて、足もとがふらつくと、そのままシンに壁際まで押されていく。
「…シン…さん?」
壁に背中を預けて、怪訝そうに見上げたヒロインを覗き込むシンの目が、妖しい光を宿している。
「シーツなしのベッドの上じゃ無理だからな。今日は、このままだ」
「このままって……シンさ…」
また唇をふさがれて、背中を壁に押し付けられ、ヒロインはようやくシンの意図を理解した。
ベッドの上ではなく、この壁際で、と。
シンは口づけを何度も繰り返しながら、ヒロインの服を床に落とす。
「でも…あの…シンさん、ここでって…」
まだまだ経験の少ないヒロインは落ち着かない。キスの合間に身をよじる。
「…この壁の向こうには、ハヤテがいるぞ」
耳元で囁かれた言葉に、ヒロインは息をのんだ。そうなのだ。この壁の隣はハヤテの部屋。
慌てて、両手で口元を押さえたヒロインの胸にシンの唇が移動する。
桜色の突起が、シンの舌に玩ばれる度に漏れそうになる吐息を、ヒロインは両手で必死に止めようとするのだが。
「ん…んふ…んんんっ」
ヒロインの声を漏らすまいとするそのしぐさが、シンの欲情を掻き立てていることには気付かない。
ヒロインが必死に声を抑えれば抑えるほど、壁の向こうのことなど考えられなくなるくらい、乱してやりたくなる。
「…んぁっ…っ…っっっぁふん…」
シンの指先が、ヒロインの秘部を執拗に探り始める。
「えっ…シンさん…ゃぁあっ」
ヒロインの片足を肩に乗せたシンは、わざと音を立てて芯芽を玩ぶ。
「お前のココは、やらしい音がするな…」
「ゃぁあ、…ぃゃ…っ、あふんんんんんん」
恥ずかしくて、どうしようもないのに、与えられる快楽に翻弄されてしまうヒロインが、シンは、可愛いくて仕方ない。
もっと、もっと、虐め苛みたくなる劣情と、猛りをヒロインに宛う。
「落ちないように、俺が固定してやる」
ヒロインの耳元で囁きながら、シンの口元が愉悦に歪む。
壁に背を預けて立たされたままの挿入は、いつもより深く深く穿たれ、 耐え切れずにヒロインは声をあげた。
「……立ったまま、というのも悪くなかったな」
目尻を潤ませたヒロインが、可愛くシンを睨みつける。
「私、恥ずかしくて、もうハヤテさんに顔見せられません…」
シンは、くすくすと面白そうに意地悪く笑う。
「大丈夫だ」
まだ、お互いに汗ばむ体。
シンはヒロインを、両腕でやさしく包み込んで目尻の涙にキスをする。
「ぜんぜん、大丈夫じゃありませんっ」
真っ赤になって首を振るヒロインに、再び優しいキスを落としながら、シンは言葉を紡ぐ。
「大丈夫なんだよ。お前を苛めてみただけだ。お前が本当に傷つくようなことが、俺にできるわけがないだろう」
ため息のように漏らす本音。
「苛めてって…」
「あんまり可愛いから、からかっただけだ。今夜、ハヤテは見張り当番で部屋にはいないからな」
「えっ…」
「だから、大丈夫だ」
羞恥で涙ぐんでいたヒロインの表情が、安心したものに変わる。
そして、おそらくは聞こえてしまったであろうナギとソウシは、聞こえなかったふりをする確信があるから、と。シンは心の中で続けて笑った。
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