睡魔の悪戯
お酒が入って、ちょっといい気分のヒロインが、時々、目をこすりながら部屋に向かっていた。
シンに、先に部屋に戻って寝ているように言われたのだ。
酔っているというほどではないと思うけれど、眠い…。
「あ、寝る前に、お風呂入ろー」
タオルを持って、ヒロインは眠い目をこすりつつ、シャワー室へ向かった。
採りたての山菜と、ヤマトの酒で盛り上がっていた食堂も、ヒロインが去り、トワが去り、ハヤテが去り、ファジーが去ると、途端に静かになった。
「そういや、春にヤマトへ行ったことは無かったな」
リュウガが、天ぷらをつまんで眺めた。
「私も草はいろいろ食べたけど、この、木の新芽は知らなかったよ」
ソウシも、コシアブラの天ぷらを眺めて、笑った。
「………」
ナギは、黙って食器の片付けを始める。
「俺も、そろそろ寝ます」
シンも立ち上がり、食堂を出て部屋へ戻った。
ノックしても反応がなく、扉を空けたシンは、無人の部屋に舌打ちする。
踵を返して、甲板を探し回るが、ヒロインの姿は無かった。
焦る気持ちを抑えて、もう一度部屋に戻り、確認する。
「のわっ…。ヒロイン?」
ハヤテの素っ頓狂な声がして、シンはシャワー室へ走った。
戸口にハヤテが立っている。
ハヤテの襟首を掴んで廊下に引っぱり出すと、中途半端に衣服を脱ぎかけたヒロインが、タオルを抱えて床に寝転がっていた。
ヒロインはすやすやと寝息をたてているが、服のボタンは外して肩袖脱いでいる。
タオルを抱えているため胸は隠されているのが幸いだった。
しかし、細く白い肩や腕、太ももまでが露出している状態なのだ。
その光景に、シンはヒロインを怒鳴り飛ばしたい衝動に耐えつつ、シャワー室の扉を閉めた。
「お、おれ、何もしてねーからなっ」
扉の前で、焦ったように弁解し始めるハヤテに、シンが怒りの声を返す。
「当たり前だ。さっさと部屋に戻ってろ」
「……」
ハヤテが去っていくのを確認して、シンはヒロインを起こした。
「おいっ、起きろっ」
「んー…。あー。シンさん……」
眠そうなヒロインは、なかなか起きない。
シンは、イライラとして半分まだ眠っているような状態のヒロインを抱えあげると、そのままバスタブに運んだ。
シャワーの蛇口をひねる。
「…?」
勢いよく出るお湯に打たれたヒロインが、ようやく目を覚ました。
状況が理解できないでいるヒロインを、シンが見下ろす。
「シンさ…っ」
「部屋に戻って寝てろと言ったはずだが」
「………」
何がどうなっているのかイマイチ理解不能のヒロインは、答える言葉がみつからない。
「言いつけも守らず、そんな格好でハヤテを誘うとは、な」
言われて初めて、ヒロインは自分が衣服を脱ぎかけの状態だということに気づいた。
確か、お風呂に入ろうと思って、上着を脱いでいたのは記憶にあるが、その先が…ない。
「ちょ、まってください、シンさんっ」
なぜ、この状態でハヤテの名前が出てくるのかも、分からない。
けれど、シンがとても怒っているのは、その表情から、声から、窺い知れた。
「ご…ごめんなさい…」
「謝るということは、認めるんだな?」
「え? えっとー。何をでしょう?」
「なぜお前はいつも、そうやってわけも分からずに、すぐ謝る?」
「だって、シンさんが怒っているので……きっと何か、私、いけないことしたんですよね?」
「………」
シンはシャワーを止め、ヒロインに背を向けた。
「? シンさん?」
「勝手にしろ」
そのまま、シンは出て行ってしまう。
取り残されたヒロインは、バスタブから立ち上がり、すっかり濡れた服を脱いで、タオルを拾ってから、蒼白になった。
ソウシとリュウガが、船長室で一緒に酒を飲むと食堂を去り、ナギが厨房での仕事を全て終えて自室に戻る時だった。
ふと、隣のシャワー室に灯りがついていることに気づいた。
しかし、静かで、物音がしない。
「…誰かいるのか?」
「……ナギさん?」
扉の隙間から、ヒロインが顔をのぞかせる。
「なんだ。居るならい…」
ヒロインの瞳に、涙が溜まっている。
チラリと隙間から見えるヒロインの肩は、素肌で。
「…どうした?」
「あの…シンさんに怒られてしまって…でも、その、着替えを持ってくるの忘れてて、服も濡れてて、一度なんとか着替えを取りに行ったのですが、シンさんに戸を開けてもらえなくて…」
ナギはヒロインから、予想外に、恐ろしい内容を聞いたような気がした。
なんとなく、頭がくらくらして痛い気がする。
詳しく聞きたいことは多々あれど、今、確認すべき最大の問題は…。
「…服が無いこと、怒ってたシン知ってるのか?」
「いえ、たぶん…知らないと思うんですけど……なんか、すごく怒ってて…」
確かに、あのシンがどんなに怒っていたとしても、裸のヒロインを部屋から追い出すとは思えない。仲間は皆、それなりに酒が入っている。うっかり間違いが起きることは、無いとは言えない。
「どうしたらいいか……」
胸にタオルを巻いて、辛うじて大切な場所は隠しているヒロインの半身が見えた。
「おまぇ……その格好で、部屋の前まで行ったのか?」
「はい…。でも、もう一度行くのはその…」
ナギは一瞬、誰もが訪れるシャワー室ではなく、自分の部屋に…とも思ったが、タオル一枚しか身につけていないヒロインを部屋に招き入れるのは、いろいろな意味で遠慮したい。
「なんとかしてやるから、ちょっと、そこで待ってろ」
ナギは、大きなため息をついた。手のかかる仲間たちだ。
大人気ないのは、判っている。
ヒロインが、理由もわかっていないくせに、簡単に謝るのが気に入らない。
でも、そうさせているのは自分だということも、承知している。
それでつい、シン自身も許してしまうから、いつまで経っても重要なことが伝わらずに繰り返す。
些細なことで、怒っている自分が馬鹿馬鹿しくて、ヒロインに何も伝わっていないのが悔しくて、無理やり心を閉じて突き放した。
思えば、意図的に心を遮蔽して人を突き放すのは、随分と久しぶりだった。
船長にはよく、パタリと心を閉ざしちまう奴だと苦笑されていたはずだ。
ヒロインに会う前は、日常茶飯事だったような気もする。
ヒロインといえば。
まさか甲板から海へ落ちたのではないかと、探している時にあれほど心配したというのに…。
ノック四回…。
シンは扉をあけさせなかった。
「ごめんなさい、シンさん。その…部屋へ入りたいんですけど…駄目ですか?」
どこか震えるような、頼りなさげな声に、苛めて仕返ししてやりたい、と思ってしまったのは、我ながら馬鹿馬鹿しく。
「今は、お前の顔を見たくない」
心にもない言葉が、冷たい声と一緒に出たのも、当然、本心ではなく。
もう一度、ヒロインが何か言って食い下がったら開けようと思った扉は、結局、何も言葉が戻って来なくて開けられなかった。
素直すぎる。もっと食い下がれよと、腹が立つ。
ただ、ヒロインが甲板ではなくて、なぜかまたシャワー室へと戻っていく気配がして。
だから、次にヒロインが部屋に戻ってきたら、迎え入れてやろうと思ったのに。
もう一度来たら、入れてやるのに。
一向にその気配がない。
あの一言は、そんなに傷つけてしまうものだったろうか、と不安になる。
今更、わざわざ迎えに行くのも癪に障る。
許してやるから戻ってこい、と言えば、きっとヒロインは喜んで来るだろうが…。
「…おい。何があったか知らねぇが、いいんだな?」
扉の向こうからナギの声がして、シンは悶々とした思考から顔をあげた。
困ったことがあれば、すぐにナギに相談するヒロイン。
ヒロインが部屋に戻ってこないのは、よりによってナギの許へ相談に行っているからかもしれない。
「…なんのことだ」
てっきり、ナギの隣にヒロインが立っているかと思って開けた扉の先には、ナギしか居ない。
「素っ裸でこの辺をウロウロしてたヤツがいるんだが、俺が慰めていいんだな?」
「………ばかな…」
そんなことが、あるわけがない。
「着替えを部屋に忘れた上に追い出されたって話だ。それは、他の男のところで抱かれてこいとアイツに言ってるのと同義だぞ」
「…忘れた…?」
あり得る、と納得する冷静な声が、シンの中に響く。
見れば、シャワー室に灯りがついているのが判る。
おそらくヒロインは、まだあそこに居るのだろう。
ということは、先程、扉の前に来たときは裸体を晒している状態だったということで。
憤って行こうとしたシンを、ナギの手が遮った。
「…なんのつもりだ?」
至極、真面目なナギの目が、シンを見つめた。
「泣きそうな顔しか見てねぇよ。……お前がその気で追い出したなら…よっぽど、俺の部屋に入れてやろうかと思ったけどな」
お前は何やっているんだ、と言外に伝わる。
これは、ナギの厚意。泣かせるな。いい加減にしないと、本当に奪い取るぞ、と。それができないこともない、と。
「………悪い…」
シンの答えに、ふいっと目線をそらして、ナギは自室に戻る。
一呼吸おいてシンは、ヒロインの許へ向かった。
「ヒロイン?」
扉を開けると、不安げに隅で立っているヒロインがいた。
「あ…シンさん、ごめんなさい。私がここで寝ちゃっていて、部屋にいなかったから、怒ったんですよね? もしかして…心配してくれたんですよね?本当にすみませんでした」
シンの顔を見たヒロインが、一気にまくしたてる。
おそらくは、1人でいろいろと考えていたのだろう。
手を頬に伸ばすと、ヒロインが、ビクリとしてわずかに後ずさった。
…いつも、苛め過ぎてしまうと、傷つけすぎてしまうと、ヒロインが見せる反応に、シンの心がチクリと痛む。
シンの手が触れることを、怯えたように身をすくめて、それでも逃げることはしないヒロイン。
「随分と眠そうに部屋へ行ったはずだったからな…部屋に居なければ、心配するに決まってる」
これ以上ヒロインを傷つけまいと思えば、声も指先も優しくならざるを得ない。
「ごめんなさい。……それで、ですね。また怒られそうなんですけど、私、寝ぼけていたのか、タオルしか持ってきていなくて、着替えがなくて…」
恐る恐る、シンを見上げるヒロインは、怒りに脅えきっている。
「……」
シンは黙って着ていた上着をヒロインの肩にかける。
そして、ヒロインを抱えあげた。
「っ? あ、あの…」
「黙ってろ」
「…はい」
シンに触れるヒロインの肌は冷え切っていて、どこも冷たい。
そのまま、抱えて部屋に連れ戻ると、ヒロインをベッドに置いた。
「せっかくだからな。その冷え切った身体を温めてやるよ」
囁いて強く抱きしめれば、腕の中のヒロインに安心が満ちていくのを感じる。
タオルを開いて、冷たいヒロインの胸にキスを散らす。
「ぁん……」
何度もキスを散らす中で、ようやくヒロインの甘い声が漏れた。
「まだまだ冷たいな」
胸のふくらみを掌で掴んで、鎖骨から首筋にキスをする。
「っあ………はっん………」
首筋から次第に移動して、唇を重ねた。
優しく舌を絡めると、応じたヒロインの体温が上がっていく。
一旦離れたシンは、衣服を脱いでもう一度ヒロインを抱きしめた。
「まだ、足は冷たいな…」
ふっと笑って、足を絡める。
シンの指先が、腰や太ももを温めるように撫でた。
不意に、ヒロインが、足に触れていたシンの温かな分身へ、そっと手を伸ばす。
「…っ」
ヒロインの冷たい指先が触れると、シンが一瞬驚いて、それから囁いた。
「どうした? 積極的だな」
「……その…シンさんも、気持よくしたいなって……心配かけちゃったし…」
恥ずかしげに頬を赤くしたヒロインが、冷えた指先で、たどたどしくシンの分身を刺激する。
「………」
シンの指先が、ヒロインの秘部に触れた。
「…っぁ……」
思わず、シンに触れる手を止めて反応したヒロイン。
「ここだけ熱いな…」
差し込まれた指が、ヒロインの蜜を誘い、刺激する。
「んはっ……ん」
「…俺を気持ちよくするんじゃなかったのか?」
止まったままのヒロインの手が、シンの声に反応して、分身を強く握りしめた。
「くっ………」
シンのヒロインを刺激する指の動きが止まり、顔を歪める。
「あ、ご、ごめんなさいっ」
慌てて手を離したヒロインに、シンが苦笑する。
「さすがに、強く握りしめられると、痛いぞ。…俺の一番弱いところをお前に触らせてやっているんだ。お前も、もっと優しくしろ」
「…す、すみません……」
真っ赤になったヒロインが、再びそっと、シンの硬くなっている部分に触れる。
触れて何度も撫でると、硬さが増したような気がするが、それ以上、どこをどのようにすればいいのか、分からない。
困って見上げれば、自分を見下ろしているどこか熱い瞳と目が合ってドキリとした。
「あ…の…、どうすれば、シンさん気持ちいいですか?」
シンが、囁く。
「お前の中が、一番、イイ…な」
ヒロインの手の上から、シンの手が重なり、秘壷の入口を硬く熱いものが塞ぐ。
「はぁん…」
「こうすると、自分で俺のを持って入れてるみたいだな。ほら、足を広げてお前が入れてくれ」
シンが手を離して、ヒロインの手に続きを強請る。
恥ずかしそうにしながらも、彼女は言われるままに自分の秘壺へその先端を差し入れた。
「どうした? ただ入れるだけじゃ気持ちよくないだろ。動かせ」
シンの親指が、ヒロインの壷口の上にある花芯を押し、摘み、擽り、刺激する。
「んっ…」
シンの分身を持って奥へ差し込もうとしてもうまくいかず、前後に動かそうとすると両手に持ったシンの分身を支えに自分が腰を揺らすことになり、シンの眼の前でヒロインが淫らな自慰を繰り広げるような光景になった。
「俺に何を見せてくれているんだか…」
苦笑しつつ 固くなった花芯を摘むと、びくんと反応したヒロインの背がのけぞった。
その隙に、シンの分身が深く深く奥まで侵入する。
「あっあぁ……」
行き場のなくなった手で、まだ身体の下にあったタオルを強く掴んだヒロインの耳に、シンの声が届く。
「さんざん煽ったんだ、責任とれよ」
ギリギリまで出ていき、何度も深く突き刺さってくる刺激に翻弄されながら、その夜、ヒロインは愛しい名を繰り返し呼んだ。
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