手にした札


自分がもらった銀のカードを眺めていると、シンが言った。
「それだけで良かったのか?」
「はい。でも…すいません、なんか、シンさんに御迷惑かけちゃって。シンさん、別の欲しかったですよね?」
 財宝の分配の際、最初に選んだヒロインが、銀製トランプの1枚を選んだ。
 結局その後、1枚欠けたことが問題になって、シンが残りの銀製トランプを引き取る羽目になったのだ。
「ふん。別にいい…」
 シンが、引き取った51枚のトランプを広げて眺める。
「…ふーん」
至極楽しそうに笑うと、一つにまとめてテーブルに置いた。
「ヒロイン、そのカード、1枚だけでどうするんだ?」
「ちょっと気に入ったので、お守りがわりに持っていようかな、と」
シンが眼帯を外して、ベッドに座る。
「お守りね……ヒロイン、カードはそこに置いて、こっちへ来いよ」
「……シンさん。どうして、服脱いでいるんですか? いつの間に…」
「脱いでる理由なんか、一つしかないだろ?」
立っているヒロインを、座っているシンが下から見上げた。
「お前、本当に俺が好きなんだな」
 シンが楽しそうに言って、ヒロインを引き寄せる。
「…かわいいヤツ」
裸の胸に抱きしめられて、ヒロインが戸惑った。
「どうした? まだ何もしてないのに、お前、真っ赤だぞ」
 ヒロインを抱きしめたままシンがベッドに寝転んだおかげで、ヒロインは裸のシンの上に乗りかかる体制になっている。
「たまには、お前からキスしろ」
 まるで、組み敷かれているかのような体勢でヒロインを見上げるシン。
シンの指先がヒロインの頬を撫でた。
「なぁ、お前にわかるか? 惚れた相手に見上げられて誘われる気分」
ヒロインは、自分の鼓動が速くなるのを感じた。
 なぜだか分からないけど、すごくドキドキする。
シンの指先がヒロインの唇を撫でる。
 何かに強く引かれるように、ゆっくりと、ヒロインはシンにキスをした。
シンが、ヒロインの背中へ腕を回して、抱きかかえるように転がり、体位を入れ替える。
「お前が選んだカード、スペードのジャックだろ」
「……うん」
「そんなに俺に似てたか?」
「……」
 何故わかったのだろうと、ちょっと驚いたようにシンを見て、それからヒロインは黙ったまま頷いた。
「なあ、ヒロイン。俺に似たカード眺めて寝るのと、このまま俺とシてから寝るの、どっちがいい?」
「…シンさんがいいです……」
 答えながら、ヒロインはすごく恥ずかしい気分になる。
「俺は、お守りと違って、意地悪するかもしれないぞ」
「今も意地悪です…」
 シンは笑って、ヒロインの服を脱がし始めた。
「シンさん…」
呼吸の乱れたヒロインの声が、切なさを増す。
 繋がってから、シンは再び体位を入れ替え、ヒロインを上に乗せていた。
「たまには、お前から動いてみろよ」
 下から見上げられて、最初、ヒロインは戸惑うばかりだった。
それでも、シンはヒロインが自分から動くのを何もせずに待った。
 意を決したように、ヒロインが腰を浮かせたり落としたりしはじめたところで、ようやくシンの指先が動きだす。
 そっと、ヒロインの動きを誘うように、胸の突起や芯芽を撫でる。
「んっ…ふぅ…」
まだまだ、ぎこちなく、ゆっくりとしか動けないヒロイン。
「これはこれで、そそられるな…」
手慣れた娼婦の動きには程遠い、拙い動きと拙い刺激は、シンを焦らしに焦らす。
 ヒロインも、いつもシンにされるのとは異なり、自分がうまく動けずに、もどかしい。
何をどう動けばいいのか判らない。
「シンさん……」
 切なく呼ぶ名前は、援けを求める。
「キスしろ」
ヒロインは命じられるままに、身を寄せてシンに口づけた。
再び、体位が入れ替わる。
「がんばったな。…上手くなる必要はない。お前は、そのままでいろよ」
ヒロインに娼婦のような技を持たせたい、とは思わない。
 恥じらい、拙いながらも、シンの苛めのような要求に精一杯応えようとするヒロインを、眺めたいのだ。
お互いに焦らされている状態の身体。
 シンは、ヒロインの足を肩にのせ、深く責め始める。
「あっ、…あっ…あんっ…」
箍が外れたように次第に加速する刺激に、二人の呼吸が重なりあっていった。


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