星月
午後に昇った十日余りの月は、真夜中に海へ沈んだ。月が沈んでから夜明けまで、空を支配するのは星の光。
その星が、朝焼けの明るさに次々と姿を消していく中、逆に煌々と輝き出す星がある。
我は海賊船の精霊、シリウス。
空に輝く一番明るい星、シリウスは夏至の日、太陽と共に東の空に昇り、太陽とともに西の空に沈む。
日の出の直前と日の入りの直後、紅い陽光と対照的に輝く青星。
国によっては、天狼星とも呼ばれる。
星の中でも異彩を放つ明るさに、天において誰とも群れを作らず君臨する孤高の狼を重ねた呼び名。
紀元前三千年の古代、シリウスは死者の守護神星とされ、太陽に先駆けて昇る日を、1年の始まりと定めた国家もある。
「ヒロイン、ヤマトでは昼が一番長い日に食べる料理とかあるのか?」
早朝から厨房で食事の準備をしていたナギが、手伝いにきたヒロインに聞いている。
「昼が一番長い日? あ、夏至ですね。いえ…特別、夏至の食べ物って無かったような…冬至なら、カボチャとか冬至がゆとかありますが…」
「そうか…」
「あれ? 今日って、夏至でしたっけ?」
夏至。
北半球では、太陽が最も南を通る日。
北緯23度26分の北回帰線上では、正午に太陽が垂直な真上を通過する。
また、北緯66.6度以北の北極圏全域で白夜となり、反対に南緯66.6度以南の南極圏全域で極夜となる。
「昨日、シンが言ってなかったか? ……って、そうか、あの時、ヒロイン居なかったな」
『食堂で夏至について話していたのは、ハヤテとシンだったからな…』
ナギは昨日、シンが話していたことを思い出す。
「たぶん、宝の中には、今日じゃないと仕掛けが開かないとか、手に入れられないってものがあるはずだから、調べてみるって言ってたな」
「あ、それでシンさん、昨日は船長室へ行ったきり、戻って来なかったんだ…」
「なんだ、シンは部屋に戻らなかったのか?」
「はい。ちゃんと寝たのかな、シンさん……」
『ヒロインと入れ違いに部屋に戻って仮眠中だがな…』
我は、船内でおきている出来事なら全て把握できる。
昼には、夏至の秘密をもつ島に到着予定だが、まだリュウガとシンしかそれは知らない。
太陽の光に、すっかり隠れてしまった青星シリウスの輝き。
我は、朝の光に輝く海を、波を割って進む。
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