十二日月



 夕日が海を朱く染めている。
 バタバタと、隣の船が騒がしい。
 我は海軍が管理する港で商船のふりをしている海賊船の精霊シリウス。
 同じように、隣に停船していたリカーが苦笑した。
『やっぱり、僕の船長くん、海軍に見つかったらしい』
 慌ただしく、一目でそれとわかるジョリー・ロジャーの帆を広げて、出港していく。
『じゃあね、シリウス』
 堅物で使命感にあふれた軍船が、リカーを追いかけていく。
 しばらくすると、たくさんの荷物を持ったトワが船に戻ってきた。
「ただいま」
 誰もいない船内に答える声はない。
『おかえり』
 トワは、倉庫に何度か荷物を運び込む。
 夕闇に紛れて、海賊達が次々に船へ戻ってくる。
 出港の手続きをしていたらしいソウシが、人の良さそうな男に呼び止められていた。
「あんたの船かい?」
「ええ、まあ…」
「さっきまで、あんたの船の横に、海賊の船が停船してたんだ。海軍に追いかけられて逃げていったが、念のため、何か奪われているものがないか、確認したほうがいいぜ」
「ありがとうございます。早速、船に戻って確認しないと」
「あ、ソウシ先生、積み込む薬草は、これで終わりですか?」
 トワが確認に走るのを見た男が、笑っている。
「積み荷は、薬草かい。先生ってことは、あんたの弟子か?」
「あははは…そんなところです」
 確かに、ソウシとトワなら、海賊に見えない。
 船に戻ったソウシが、リュウガに男から聞いた情報を伝えた。
「そいつを追いかけて行った海軍が戻ってくる前に、さっさと出港だな。トワ、盗られた物がないか、念のため確認しとけ。シン、急いで港を出るぞ」
 空には、半分ほど雲に隠れた月。
 夜の海へ、我は進んだ。


Triangle againへ戻る


   十三日月へ