.

 こってりスープのラーメンが好きなのだけれど、それが続くとさすがに体が拒んでくる。「父ちゃんも歳をとっただよ」と女房に言われながら、体に優しそうなスープのラーメンを求めて穂高神社前へ出かけたら、、目当ての店のウィンドウには貸店舗の張り紙・・・こういう時は、よけいにそこのトロっと柔らかなチャーシューが恋しくなるけれど、気を取り直して今日はどおしよう。まぶたの上で安曇野のラーメン屋がシャッフルされる。しかしどこもヒットしない。体は優しいラーメンを求める体勢になっている、今さら蕎麦屋には行けないぞと思ったら、ラーメンを出す蕎麦屋を思い出した。
 街の外れに向かい、道路に面した駐車場にクルマを停め、荒れた原野みたいな広い前庭を抜けて、昔はお洒落な洋食屋だった店内に入る。先客はシニアな夫婦が一組だけ。テレビもBGMも無く、話し声もしない静かな店内。いつもオーダーが届かないほど盛っている印象だったけれど、今日はオフシーズンのウィークデーだからかな。奥のカウンターに座り、確かに外回りの営業マンや近所のおじちゃんたちが昼飯に寄る雰囲気じゃ無いからななどと話しながら、カウンター越しの厨房で淡々とした動作で無表情に進行するラーメンつくりを見守る。
 『冬葉ラーメン』680円。冬葉(トバ)とは鮭の寒風干しだという。その風味なのか、節が効いているけれど嫌味が無く自然な味わい。細くて縮れた固い麺との相性もいい。この頃は魚介風味といえば、やたらにフレーバーなエキス風味にガッカリしていたところなので、これはなかなかの好印象。
 麺をすすり終えた頃に「ラーメンのスープを蕎麦湯で割ると美味しいです」と、蕎麦湯が出されて得した気分。やがて女房の残したスープまで飲みほして、ここに来ると蕎麦にするかラーメンにするか席に着いてからも迷うことになるなあと、今から心配するのでした。

(建築士あづみNo.51/2005.03)

.