万葉紀行集 

明日香 甘樫丘(睥睨する、まほろばの国)

 明日香を一望できるところに、甘樫丘がある。そこは国営歴史公園甘樫丘地区に指定されている。いわば、明日香のへその部分とでも言うことが出来るであろう。その山道を登っていくと、中腹に、志貴皇子の歌碑がある。(万葉への旅インデックスページ参照)そこから見下ろすと、まさに、歴史という、年月を越えた絶え間のなく吹いている風を感じてしまう。

(甘樫丘より畝傍山を眺める)

甘樫丘の頂上に立って、辺りを眺望すれば、そこには万葉に読まれた、数々の詩句が存在している。万葉の聖地のような感覚にとらわれる。有名な持統天皇の「春過ぎて なつきにけらし 白妙の 衣干したる 天香具山」もここから読んだのではないかと思いたくなるようだ。大和三山(香具山、畝傍山、耳成山)は、神聖な信仰の対象とした場所であった。確かに、この地点からの三山を眺めれば、その威容に古代人と同じ思いを抱いてしまう。思わず大和国見の歌「大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 海原は かもめ立ち立つ うまし国ぞ あきづ島 大和の国は」を彷彿させる場所である。