歌番号

3400 

作者

 

ひらがな

しなの  ちくま   さざれいし

万葉歌

信濃なる 千曲の川の 細石も 君し踏みてば 玉と拾はむ 

原文

信濃奈流 知具麻能河能 左射礼思母 伎弥之布美テ婆 多麻等比呂波牟

解釈

信濃の千曲川の小石も、あなたが踏んだのならば玉(宝石)として、拾いましょう。素朴な歌だが、実にストレートに心に伝わってくる。私も、信濃(長野県)に住んでいるから、余計にこの歌に愛着を覚える。千曲川の滔々とした流れ、その川面はきらきらと光っているようだ、まるで宝石のように、その下にある小石は、あなたの通った形見として、大事にしまっておこう。

現代の私たちの感覚からすれば、小石など価値のない物であるけれど、その当時は、魂が全ての所に宿っているという思想が、色濃く歌にも残っている。これは、数々の万葉歌に見られる。たぶん作者は、信濃の美しい自然と清らかな、千曲川の流れに魅入られ、この歌がすんなり歌でも歌うように出てきたのだろう。そんな伸びやかな印象までも伝わってくる。98/04/09