森林サイエンス 

信州大学農学部森林科学研究会編 A5判 253P 1890円(税込) 2003年11月初版

謎が渦巻く科学と経済の世界=森林ワールドへの誘い

誰もが森林は大切だと言うけれど、その実体は? 林業の実情は? 本書は環境・生態から林業・木材まで、信州大学の教官が森林科学(林学)の新たな知見を示しながら森林の未知なる可能性を探る。21世紀型の森林管理を模索する長野県からの森の最新レポート。

《内容・構成》
         

森林と野生生物 …………………………………………………………………………………… 荒瀬輝夫

森林の動植物(森林の動物/森林の植物)
生物の種(植物の分布/動物の分布)
生物の生息環境としての森林(無機的な環境/有機的な環境)
野生生物の保護管理(野生生物種の現状/自然保護、野生生物保護のための法令等/野生生物の調査法/野生生物の保護管
理)

肥料が変えた里山景観 …………………………………………………………………………… 中堀謙二

現代日本人の里山観 
上伊那の土地利用の変化(明治から平成)  
草の利用と採草地(草肥としての苅敷/厩肥/草の採取地)
江戸時代に展開する草原的景観 
江戸時代の里山の全国的状況 
明治時代に進んだ段丘上採草地への植林 
草肥・厩肥の歴史 
改造された自然・里山 
森林がおおう日本の里山 

死が生を支える森林 ………………………………………………………………… ニッタ リューゾー

トトロの大木 
3%のみが生きている樹木 
枝葉末節が土を作る 
幹が根になって樹体安定 
空洞木は風に強い? 
空洞が森を豊かに 
死が生を支える 

森林の土と植物の水 ……………………………………………………………………………… 川崎圭造

日本の森林土壌 
森林土壌とは 
土壌の物理的性質 
樹木と水 

森林と自然災害 ……………………………………………………………………………………丸谷知己

森林と人間と自然災害 
水・土砂災害の予測 
流域での水・土砂の振る舞い 
流域における森林の役割 
森林の破壊と再生 

森林を測る …………………………………………………………………………………………加藤正人

なぜ森林を測るのか(目的/計測学の歴史)
森林を空から測る(リモートセンシング/空中写真/人工衛星による森林観測)
森林を地上から測る(踏査と測量/プロット調査/資源量と評価)
森林を区分する(目的に合わせた区分 /森林GISによる管理 /開かれた森づくり)

これからの森林づくり道づくり ………………………………………………………………… 林博道

道づくりの必要性 
森林づくりの方向(皆伐一斉更新方式からの転換/複層林への誘導)
搬出作業システムと路網(機械化の方向/路網整備の考え方)

森林施業と皆伐・漸伐・択伐 …………………………………………………………… ………植木達人

再生が可能か不可能か 
森林の機能と伐採行為 
森林施業とは 
個別技術の流れと作業種(皆伐作業/漸伐作業/択伐作業)
森林施業と地域環境 

木曽谷と九州における伐出作業の低コスト化 ……………………………………………… 井上裕

伐出作業の歴史的背景 
伐出作業の現状 
九州での取り組み事例 
伐出作業の今後の展望 

自然環境の再生と緑化手法 ………………………………………………………………………山寺喜成

植物は唯一の救世主 
緑化の目的とは何か 
緑化の問題点 
自然と調和する群落の造成 (検討課題/自然と調和する群落の条件)
自然形成のメカニズム解明への試み(草本植物と木本植物の根系形態の相違/植栽木と播種木の根系形態の相違)
使用植物の選定(植物選定の前提/先駆樹種を積極的に用いる)
森林の生命環境保全機能の再生(土壌保全機能の再生/水源涵養機能の再生/CO2の吸収・固定能の再生/気象緩和機能の
再生/生物多様性維持機能の再生/自然景観保全機能の再生)
緑化の技術体系 
二一世紀における緑化の展望(地域の自然環境の修復/食料等生産環境の保全/地球環境の修復・保全)

地球環境問題と森林の多面的価値 ………………………………………………………………野口俊邦

林業基本法から森林・林業基本法へ 
基本法林政の帰結 
旧法から新法への転換の背景と問題 
森林の経済的価値と公益的価値(森林の経済的価値/森林の公益的価値)
多面的機能発揮と木材自給率の向上

多国籍林業資本と国産材の今後 …………………………………………………………………小池正雄

木材自給率18% 
多国籍コンサルタント資本とは 
EUの多国籍林業資本 
多国籍林業資本と日本・アジア市場 
少子高齢化=住宅市場の縮小と林業・木材産業 
ポスト工業化社会への独自の枠組み 

木材の性質と水分 ………………………………………………………………………………… 徳本守彦

三つの欠点 
木はなぜ狂う(自然が与えた木のデザイン/木の収縮と膨潤/木の狂い/木の原初記憶)
木のセット(加圧収縮/木のパーマネントセット/木を曲げる/木の圧縮大変形)
木を乾かす(木は乾かして使う/乾燥応力とセット)
木の変身(メカノソープティブクリープとは)
木は熱いうちに打て(背割り/木を天ぷらにする/木は熱いうちに打て/柱材の残留応力とセット)

信州産カラマツ材の強度性能 …………………………………………………………………… 武田孝志

長野県とカラマツ人工林 
木材の強さ(木材の組織/木材の材料強度/無欠点小試験体と実大材)
信州産カラマツ集成材の強度特性(圧縮強さにおける積層効果/引張強さにおける寸法効果/曲げ強さにおける梁背効果)
これからの木材利用のあり方(材料効率/木質廃棄物に代わるもの/目新しさと変わらぬこと)

【特別寄稿】森林と文学 ―『喜びは永遠に残る』に横溢する森林のイメージ ………… 山本省

『木を植えた男』 
ジオノと自然 
『喜びは永遠に残る』における森林のイメージ 
ジオノの自然描写の特徴 

森林バイオマス 〜地域エネルギーの新展開〜

NPO法人SDG・伊那谷森林バイオマス利用研究会編 A5判 160P 1680円(税込) 2003年2月初版

森林再生と循環型社会への切り札=バイオマス

ストーブやボイラーから発電までスウェーデンで既に総エネルギーの20%を占めるバイオマス・エネルギー。岩手の先進事例を交え、伊那谷の最新動向と今後の可能性を探る。2002年8月31日のシンポジウム「信州・伊那谷発 バイオマスをひろめよう」の講演録に「2 伊那谷バイオマスの近未来」を54P追加。

《内容・構成》

●バイオマスエネルギーで明日をつくる 西岡泰久 伊那谷森林バイオマス利用研究会 元事務局長 

●「木材のライフサイクル」の改善と経済化 竹垣英信 SDG(緑化推進環境改善協会)理事長  

●地域に根ざした21世紀型森林管理 小池正雄 信州大学農学部教授(森林政策学)

       
1  シンポジウムレポート

●木材の総合利用とペレット製造 遠藤保仁 岩手・葛巻林業株式会社代表取締役    

オイルショック後の経費削減が出発点/補助金なしでペレットの試験工場を建設/岩手・木質バイオマス研究会/バイオマスとは生物資源/自動供給が可能で品質性能が数値化できる/循環型の天然資源/ダイオキシン規制法と木材業界/バイオマス先進国は木材産業も元気/総合利用で無駄を出さない/チップボイラーを活用する岩手県の事情/地域を変えようというイメージをつかむ/地域の発意と実証を 
●木質バイオマス利用の取り組み事例 金沢滋 岩手・木質バイオマス研究会事務局長        
日本の森林がなぜ荒れるのか/注目すべき全国町村会の動向/森林バイオマスの二酸化炭素吸収効果/木質バイオマスとデリバリー/木質バイオマスとは/スウェーデンの先端事例/チップを使った事例/家庭や学校への導入事例/18年間木質燃料を使う花巻市のプール/新しく柔軟な発想を/バイオマスで地域が変わる
●地域エネルギーと森林バイオマス 武石礼司 富士通総研経済研究所主任研究員           
地域エネルギー推進のための3つの課題/自然資本という考え方/膨大な資源量と少ない利用量/増える森林資源量と減る利用量/乾燥の条件次第でバイオマス発電も成り立つ/発電の鍵は国産材の競争力/電力会社が料金を下げざるを得ない事情/コジェネ推進と熱のカスケード利用/自然エネルギーの可能性/リサイクルの意味/地域エネルギーにおけるバイオマスの役割/下水道からバイオマストイレへの転換/2010年には地域需要の40〜50%を自然エネルギーで 
●上伊那地方における森林バイオマス利用 阿部紀人 森のエネルギー研究所取締役          
潜在的な可能性の調査/豊富な人材と薪ストーブのネットワーク/製造業の基盤と適切な人口規模/林業の活性化と幅広いネットワーク化/ペレットの価格は原材料次第/未利用木材の有効活用/有利な条件で使える十分な資源量/鍵を握る公共施設への導入/期待できるストーブ需要 

         
         

2 伊那谷バイオマスの近未来

●普及のカギを握る関連分野との協力・協働 阿部紀人 森のエネルギー研究所取締役   

地域協議会と事業コンソーシアム/森林・林業分野間での協力/再生可能エネルギー分野との協力/学校教育分野との協力/農業分野との協力/観光分野との協力/地域通貨分野との協力

●伊那谷森林バイオマス利用研究会 アンケート                   

●ペレットストーブ利用体験記 小池三男 塩尻市                     

●各国のペレットストーブ                                 

●上伊那森林組合のペレット工場計画                          

●木質バイオマスによる熱電併給の事業計画 原寛太郎 南信パルプ            

●バイオマスによるコジェネレーションと地域熱供給 城子克夫 自然エネルギー.コム 

山造り承ります
島崎洋路著 四六判 237p 1732円(税込) 1999年12月初刷・2005年2月5刷
手入れ不足により日本の森林の7〜8割はモヤシ状態。
待ったなしの惨状にその道50年の実践者が現場から緊急提言!
 

プロローグ  再生への願い……世界の状況と日本/森林荒廃の背景/再生に向けて

第1章  山を担うべき人……弱体化する森林所有者と林業労働力/まず問われる零細所有者の責任/焦点不明な後継者育成/伐出の担い手/森林組合の現状と課題/林務関係者へ
第2章  山造り承ります……KOA森林塾/島崎山林研修所(山林塾)/駒ヶ根モデル山守り/サンデー山守り/愉快な山仕事/ネパール植林ボランティア
第3章  逆風を越えて……膨大な手入れ不足/拡大造林の功罪/外材インパクト/材価の低迷/伐期齢の引き下げ/密度理論と高密度管理/モヤシ・クライ/金太郎飴/混交林化/大径木の育成/市場に乗りにくい中小径材/ミニ製材・薪・炭に光明
第4章  山造り入門……樹木の名前/材の特性/山の知識・知恵/四季の山仕事/山造りは手間いらず/切れる道具と切れない道具/小型機械類の重要性/林道は山の動脈/歩道(径路)の役割/測樹・測量/林木の成長/除伐の本来の意味/枝打ち/密度の基準は「高さの二〇%」/列状間伐/保残木マーク法/(補足)保残木マーク法による間伐の手順
 
ー「あとがき」よりー
 唯一日本人が胸を張って世界に向かって誇ることができる緑の資産、日本の森林はいま荒廃の危機にさらされている。恵まれた生育環境にありながら、必要な人手が加えられていないからだ。(中略)
 執筆のひとつの目的であった「日本の森林や林業の実態」については、もっと理詰めでなければならなかったが、私の才の及ぶところではなく、大方は心情的な記述にとどまってしまった。また、私の信条である「山造りはやればできること」も、小見出しが雑多になって、蛇足や寸足らずばかりが目立ち、つたない私の真意が伝えられたかどうか心もとない。
 願わくば、読者諸賢のお力をかりて、それぞれが主体となって、一見たわわに眺められる日本の山の本当の姿を、そしてこの恵まれた自然と対峙していかなければならない日本人の心根を、一人でも多くの人々に見据えていただきたいと思います。せめて5年、10年先頃には、格段に健やかになった山の中で、生きている喜びを分かち合いたいものです。
 なお、記述のなか、森林所有者や森林組合、行政の方々には、私の偏見も含めて不遜な言辞や提言も弄させていただきましたが、かけがえのない人類の資産を育む仲間の一人として、ご容赦をいただきたい。

コペルニクス的エコ宣言
環境NGO「コペルニクス」編 A5判143P 945円(税込) 2001年7月初版
地域の尺度で地球規模に考える!
1自然へのアプローチ
  「いのち優先」社会へ 野池元基
  自然を計る物差し 渡辺隆一
  「自然度」で環境評価 渡辺隆一
  長野市内の緑 高木直樹
  花と昆虫の進化と共生(上・下) 須賀丈
  川の水生昆虫たち(上・下)宮入英治
  長野の「風の道」を探る 浜田崇
  気象情報から地域の気候を考えよう 浜田崇 
  生物多様性の保全 須賀丈
  ◆表紙のことば◆ 北山敏・早苗
2 川とダムと流域と
  浅川の水の安全性 関口鉄夫
  「しなやかな」治水 関口鉄夫
  「脱ダム」から見えてくる「政治の貧しさ」と「川の豊かさ」 関口鉄夫インタビュー
  流域運命共同体 松岡保正
  しなやかなコペルニクス的転回 野池元基
  「脱ダム」宣言を歓迎する 気候ネットワーク
3地域から地球へ
  脱自動車社会(上・下)高木直樹
  夜間照明による光害 野池元基
  都市のヒートアイランド現象(上・下)浜田崇
  エネルギー消費 三輪浩
  効率的なエネルギー利用(上・下)三輪浩 
  オゾン層破壊問題(上・下)松本泰子 
  「温暖化防止活動推進センター」とは 須田春海
4実践エコライフ
  私の太陽光発電 櫻井郁子
  買い物ガイドと環境ラベル 渡辺耕一 
  長野版 買い物ガイド 渡辺ヒデ子
  リターナブルびんの復活 渡辺耕一
  家庭で省エネナビ 則武寿子
  学校で省エネナビ 則武寿子 
  地球と家族に優しいエコハウス 渡辺耕一
  社会的責任のある投資 渡辺耕一
  家電リサイクル法の影響と問題点 渡辺ヒデ子
5 自治体と市民と
  県環境審議会(上・下)野池元基
  ながの環境パートナーシップ会議 野池元基
  市民と環境自治体 須田春海
  環境自治体の条件(上・下)中口毅博
  環境基本計画の課題 弓場法
  環境基本計画を実効性あるものとするために 高橋秀行
 
―「あとがき」より―
 田中康夫長野県知事が打ち出した「脱ダム」宣言に共感するのは、単にダム問題にとらわれず、地方から国のあり方を変えてゆくのだという力強い気概が感じられるからです。 
 私たち「コペルニクス」としてもそれに負けじと、地域から地方自治を変え、そして国を変えていこうと、本書のタイトルを「コペルニクス的エコ宣言」としました。タイトルの頭にはカッコつきで「ながの発」が入っています。これは、長野だけなく、さまざまな地域から「○○○発」というエコ宣言が発せられることで、環境優先社会へのコペルニクス的転回を共にはかっていきたいと願ったものでもあります。
 片や、ブッシュ米国大統領の京都議定書破りや原発推進への政策転換は、「エコ宣言」と真っ向からぶつかる「大国エゴ宣言」と呼ぶべきものです。化石燃料の過剰な消費によって資源枯渇への道をひた走り、その結果として地球温暖化を招いたり、大量生産・大量消費・大量廃棄による社会構造によって地球生命系への危機をもたらしてきた米国、それに追随してきた日本、これは地球環境への無謀な挑戦だったといえます。
 しかし、このままでは地球の自然システムの持続は難しくなり、しっぺ返しによって人類が生存の危機に直面することは明らかです。こうした状況に重ねて見えるのは、第二次大戦末期、悪あがきの末にオキナワ・ヒロシマ・ナガサキを焦土化させた日本の姿です。ブッシュ大統領の産業界優先政策は、玉砕に突き進んでいく「カミカゼ宣言」でもあります。いま必要なのは勇気ある撤退です。
 本書の表紙を飾ってくれた「葉フクロウ」はこちらを振り向き、われらが人類をちょっとあきれ顔に見ながら、「おいおい、いったいどっちへ進むんだよ。はっきりしろよ」と問いかけているようにも感じるのです。

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治水とダム ―河川と共生する治水―
信州大学自然災害・環境保全研究会編 四六判 175p 1365円(税込) 2001年6月初刷

人間と河川の共生関係を考える。

1 浅川の治水計画の問題と総合的治水対策……上野鉄男 京都大学防災研究所助手
  代替案論争の過ち/過大数値のカラクリ/総合治水の基本と適正な基本高水流量/河川改修と天井川の解消/内水災害対策
2 ダム立地の地質学的問題 ―下諏訪ダム・浅川ダム……小坂共栄 信州大学理学部地質科学科教授
  フォッサマグナの地質をどう捉えるか/下諏訪ダムのケース/浅川ダムのケース
3 河川による浸食と堆積作用の歴史―犀川と姫川を例に……赤羽貞幸 信州大学教育学部理数科学教育教授 
  川の浸食・運搬・堆積/姫川の巨礫分布/犀川の礫の大小と河川の勾配/長野盆地の堆積状況/総合的な視点とデータの蓄積
4 地域開発と水利権……吉田隆彦 信州大学人文学部人間情報学科教授
  二つの疑問/アメリカがダムをやめた背景/対極の二事例/財産権の主張/野尻湖の水がなぜ使えないのか/北の立科と南の蓼科の明暗―水利と治水/観光開発と水利権
5 緑のダムの経済効果……野口俊邦 信州大学農学部森林科学科教授
  経済的機能と公益的機能/森林全体で年75兆円の評価/未着工ダムの予算でスギ造林4万ヘクタールが可能
【特別寄稿】 現代水害の特徴と治水の考え方……岩松暉 鹿児島大学理学部地球環境科学科教授

  川とは何か/川をとりまく日本の自然/現代水害の特徴/氾濫を前提とした治水/祖先の知恵に学ぶ/甲突川の八・六水害/岩永三五郎の治水工事/治水の考え方/ソフト対策/防災教育/おわりに――脱ダム論について

脱ダム讃歌 ―下諏訪ダム反対運動の軌跡―
武井秀夫著 四六判 357p 1785円(税込) 2001年3月初刷 同4月2刷

多目的ダムの意義、議会意思と民意のねじれを問う!

第1章 論戦開始 
 闘いの予感/「とがわ新聞」創刊/もっと議論を/医師の会再出動/オタマジャクシ救出作戦/垂れ幕論争/脅迫状/ボランティア大募集/東俣の清流/御柱を愛すればこそ/釜口水門/夏越しの祭り
第2章 連帯への径  
 行政ダム説明会/未来を生きる者は被害者/連絡協結成への道/署名運動開始/新聞配布の日々/シンポジウム提案/試掘坑調査/建設省への陳情/岡谷の飲み水を考える会/初めての県陳情/望年会/大同団結/水増しされた基本高水流量/心の通い路/森は湖の恋人、川はラブレター/ポートアイランドすみれ会/県ダム協結成へ
第3章 一進一退
 集落ごとの温度差/雪の署名行/県庁に腕押し/六つの橋/地質講演会/署名マップ/ロートルが走る/諏訪隠し/医療の砦/国土研代替案/慟哭/住民監査請求国土研の補足説明/獅子這い岩/住民訴訟
第4章 夜明けの嵐
 知事選参入/ペログリ論/石原慎太郎発言/号泣する作家/風よ吹け/茶番単価調印式/公開討論会/クイーンズKにて/締めつけの街/三本の矢/檄/愛してるぜ!/パルコ燃ゆ/勝利の日/知事ダム予定地視察/車座集会/脱ダム宣言
 
―「週刊朝日」2001年6/15号書評―
 田中康夫・長野県知事の「脱ダム宣言」には、公共事業のあり方をとらえ直す意味がこめられている。下諏訪ダムはその象徴といえるだろう。本書は、下諏訪ダムの建設反対運動を続けた地元の医師が6年間にわたって綴ってきた記録だ。机上の論ではなく、自然や生命への目線が確かなルポに仕上がっている。

 著者は、下諏訪ダムの建設計画は、長野県当局の「まずダムありき」の発想から始まったとみる。行政主催のダム説明会。反対意見を述べた中学生を推進派の議員らが囲んで「誰にそそのかされた」「父さんや母さんが嘆くぞ」と詰め寄る場面がある。住民が自分で考え、意見を述べることを封じる底知れぬ力。公共事業が抱える本質的問題と、それを乗り越えようとする著者らの姿が描かれる。

ゴミは田舎へ?
関口鉄夫著 四六判 250p 1630円(税込) 1996年8月初刷・1999年5月4刷
年間4億トンも排出される産業廃棄物。健康被害や自然破壊、
監督行政の機能麻痺、利権構造などを住民の視点から抉る。
 

第1部 処分場を歩いて

 村人の心が変わった/「センセイ」は廃棄物業者/産廃銀座/コーヒー色の排水と保健所/若き「親の会」の闘い/水道水源地への危険な「安定五品目」/木くず焼却の無法地帯
第2部 ゴミ問題の表と裏
 廃棄物との出会い/一般廃棄物と産業廃棄物/廃棄物問題の核心は処分場に/製造企業の処理責任/「環境保護」は企業社会との闘い/産廃処分場は工場団地に/「金づる」としての処分場/官僚の影/居眠りを誘う科学者の弁/「絶対反対、許さない」/住民運動の鍵は「共有」と女性の参加/住民運動の七つ道具/反対運動の台所事情/ゴミの中で出会った人々/警告/乱立する焼却炉/木くず焼却は安全か/安定型・管理型の問題点/基準は信頼できるのか/水の汚れ/ザル法さえ適用しない行政の怠慢/市町村のゴミ処理/難航する第三セクターの処理事業団/循環する物質と循環しない物質/ボロ屋さんの教え/命を傷つけるゴミ/文明の進歩と廃棄物
巻末資料……廃棄物処理と地域経済の活性化についての提言/自治体や処理業者との議論を深めたい
 
ー「あとがき」よりー
 ひと昔前まで買い物カゴがあり、フロシキという便利な文化があった。腰に掛けた手ぬぐいはハンカチにもティッシュペーパーにもなった。
 物が少ないから、ひとつの物を多目的に繰り返し使った。それで何の不自由もなかったばかりか、幾通りにも使う技術を覚え、器用さという能力を身につけることができた。
 お店では、こどもの手に品物を握らせながら、「お手伝いできて、お利口だね。ビンはまた使えるから戻してね。また来てちょうだいね」とおばさんが頭をなでてくれた。自動販売機では絶対にできないコミュニケーションと教育があった。
 大量生産―大量消費―大量廃棄の社会は、ゴミを増加させただけでなく、人間の文化を根底から破壊しつくしている。ゴミを通して、私たちが考えなければならないことは、このような社会を「豊か」だとしたイデオロギーの根源についてである。
 私は、現在の日本の豊かさは蜃気楼のようなものだと思っている。日本の豊かさが、多くの国々の人々の「貧しさ」の上に成り立ってきたものだからだ。また、国内においてもリストラ(首切り)、コスト削減(下請けいじめ)、福祉切り捨てなどによって、かろうじて豊かさが維持されてきたにすぎない。
「富」と「有害物質」は循環せず、部分的に集中する。これが、本書を書きながら私が感じ続けていたことである。
 ゴミ処分場問題の住民の闘いは始まったばかりである。ゴミ処分場建設反対の闘いは、「臭いものにフタをするな」という行政への警告でもあると思う。と同時に、日本の社会の歪みをもっともストレートに正す闘いでもあると思う。
 本書の表紙は画家の田島征三さんが信州での講演の折、地域の方のために煮物の汁と醤油で描いた色紙から転用させていただいた。いくつもの動物の姿を重ね合わせて描かれている。酔うままに気ままに筆(割りばし)をとる姿が、うらやましくもあった。

増補版 炭を使う知恵
炭おこしサミット実行委員会編 A5判 190p 1732円(税込) 1995年2月初刷・2000年8月8刷
水質浄化や土壌改良など、環境を改善する資材として注目される
木炭・木酢液の新用途を集大成。炭による生活環境の改善法。
1 木炭の新用途は暮らしに福音をもたらす!(炭やきの会名誉会長・岸本定吉)
2 炭焼きの変遷とサミット開催の経緯(炭おこしサミット実行委員会)
3 炭おこしサミットの要旨(信州大学農学部教授・菅原聰)
4 木炭・木酢液の需給関係と商品規格づくり(林野庁林産課・久米義輝)
5 木炭・木酢液の家庭利用(生活文化研究家・緑川礼)
水道水の浄化/竹炭と竹酢液/木酢液の二次精製液の活用法/食味の向上(料理用)/脱臭・除湿/木炭紙による除湿・脱臭・鮮度保持/家庭雑排水の浄化/割り箸炭の作り方/健康利用/生ゴミの分解・堆肥化
バイオ技術と炭で生ゴミが消滅(日本耐熱化学工業)
6 住宅への利用
木炭による木造住宅床下の調湿実験(信州大学農学部教授・中野達夫)/炭とヒノキを組み込んだ畳でカビ・ダニを抑え湿度を調節/雨水・風呂排湯を細粒状の木質炭とヒノキで浄化・再利用(三創研究所・小林悦雄)
7 木炭による水質浄化
小河川の水質浄化施設の設計事例(長野地方事務所)/家庭用雑排水処理施設の新商品開発(鬼無里村開発林業課)/家庭雑排水の簡易処理(長野県衛生公害研究所)/都市河川における水質浄化(長野環境保全技術管理センター)
8 木炭・木酢液の農業利用
木酢液農業と地球環境問題(元金沢大学教授・佐原甲吉)/木炭による土づくりと高品質・多収生産(茨城県経済連・塩崎維寿)/土壌改良・葉面散布・堆肥での使い分け(長野県八千穂村・横森正樹)/モミガラ薫液による凍霜害予防と多目的利用(長野県農協地域開発機構)/環境保全型農業推進会議の概要(長野県農政部)/木酢液商品化における法的問題点と活路(木酢液研究会理事・佐藤千秋)/黒炭窯木酢液の生成と利用(日本木酢液協会副会長・栗山旭)/炭よい環境づくり事業の概要
9 有機活性農業への複合利用
有機資材と炭を体系的に用い良質な農作物の生産を(三創研究所・小林悦雄)……時間をかける単純な方法がベスト/縮合リン酸+炭/モミガラ炭化装置/細粒状腐葉+細粒状炭/くん液/くん液強化剤/広葉樹の腐葉土
10 用途開発……新たな製炭方法と用途の開発(吉田豊)/木炭による電磁波の遮蔽(京都大学名誉教授・石原茂久)
[特別寄稿]フィトンチッドの効用(農林水産省森林総合研究所・谷田貝光克)

[巻末付録]木炭・木酢液の関連団体/販売メーカー/参考価格

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地性の人々
須田治著 四六判 278p 1600円(税込) 1997年6月初刷 2000年4月2刷
「森」と「農」を舞台に、しっかりと「地」に根を張った
20人の人物群像
●第1部 森に訊く
志賀高原の熱血オヤジ(山ノ内町・山本教雄)/樹の声を聴く(長野市・尾台喜貞)/天然林経営に哲学込めて(大町市・荒山雅行)/山にひかれて脱都市文明(大鹿村・岩瀬照男)/炭焼き一筋60年(四賀村・太田栄)/里山を守り戸隠を撮る(戸隠村・小川秀一)/クマにみる生命の環(長野市・宮沢正義)/草1本、虫1匹の神秘(大町市・内山慎三)/野鳥たちの代弁者(岡谷市・林正敏)/ハクチョウへの執念(池田町・上嶋順)/奇形ザルに学ぶ(兵庫県淡路島・中橋実)
●第2部 土に学ぶ
自然農法で小さな叛乱(小諸市・美斎津育夫)/しょうゆ搾りの神様(信州新町・荻原忠重)/ソバ打ち勇気農民(望月町・大西利光)/有機専業ひとり旅(望月町・由井啓盟)/逆風に描く酪農の夢(真田町・佐納良裕)/村と世界の未来を見据えて(北御牧村母親連絡会)/離農に抗し山麓を耕す(軽井沢町・坂本幸平)/生き方を自然体で問う新農民(阿南町・伊豆光男)/農民の命・土地を返せ(沖縄県伊江島・阿波根昌鴻)
 
ー「あとがき」よりー
 地性喪失の時代ーー今の時代を私はそう呼びたい。
 知性をそなえ損ねている時代、とも言えそうだ。(中略)
上意下達の指示をソツなくこなす器用人間が重宝がられている。この効率一辺倒、経済優先の論理で動く世の中で、ますますそんな人間像が求められていくのだろう。(中略)
 本書に登場するのは、器用人間とはおよそ対極の位置にいる不器用人間ばかりである。みんなが一堂に集い、意見を述べ合えば、おそらく永久に議論を続ける論客たちばかりである。しかし「頭でっかち」では決してない。地に根ざして生身の体で考える「地性」をそなえた「知性」の持ち主たちなのである。
 だから実践的だ。机上の空論をもっとも拒否する人々である。正直、そのこだわりに時についてゆけないほど、一本気でかたくなだった。森の中で山の奥で、黙々と自然と対峙しながら生きるには、姑息な世渡りなど必要ないのだ。(中略)
 ますます世知辛さが増す娑婆世界の一角で、声高にリクツをこねるのではなく、地と対話し、森の声を聴き、世の行く末を憂えつつ可能性を切り拓く人々ーー。その生きざまから、現代文明にメッセージを送ろうと思った。
 少し立ち止まって自身の生活様式と照らし、生き方や見方を考える一助になれば有り難い。(後略)

 

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森がくれた7つの恵み   
海なし7県編 四六判 86p 1019円(税込) 1995年4月初刷・1997年4月2刷
森の7つの役割を解説し、流域(山村と都市)が協力する事例を
コミックで楽しく
 
<第1部>7つの恵み
第1話 森は雨を土の中にたくわえる「緑のダム」
第2話 森は山の土を抱きかかえて山くずれを防いでくれる
第3話 森は心と体をやすらかにしてくれるオアシス
第4話 森は動物たちの楽園
第5話 森は大きな酸素ボンベ
第6話 森は温度を下げる巨大なクーラー
第7話 森は風や火や音から守ってくれる
<第2部>森と都会と山村と
第8話 矢作川水源の森
第9話 岐阜森林愛護隊

第10話 「海なし7県」って何?

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