親のための『先天異常』用語の解説

木田 盈四郎

基礎知識(総論)

1.『先天性四肢障害児』

 「先天性」と言う言葉は一般の辞書にありませんが、「先天」は「(天に先立っ意)生まれつき身に備わっていること。」(広辞苑)と言う意味です。
 わが国では「生まれつき」とは「生まれついた性質」、つまり前世の出来事のことで、血とは「血筋。血統。血は争えない。」(広辞苑)の意味で、一般に「遺伝」を「血のよごれ」などと言ったりします。しかし、「先天性」の中には後で述べるように「遺伝」のほかに「環境」がありますから、その両者を同じ意味と考えるのは過ちです。
 また、「障害」という言葉は、辞書では「さわり、さまたげ、じゃま」(広辞苑)と書いてあることから分かるように、主として「動作がさしつかえる」ことを意味する言葉です。そのため、「四肢障害」を「四肢[運動]障害」つまり、「手足が不自由なこと」を指す、と誤解する傾向があります。しかし、「手足が不自由なこと」は、「肢体不自由」と呼ばれ主として「脳性マヒによる手足の不自由」を示しますからその現す意味が違います。
 赤ちゃんの手足の「かたち」が段々にできることを「形態形成」と言いますが、その発生段階毎にいろいろの「かたちの障害」が出来ます。そのことを「形態形成障害」または「四肢発生障害」と言います。
 「先天性四肢障害」を、「四肢[発生]障害」と言う意味と考えて、ここでは、「赤ちゃんが生まれた時、その手足になんらかのかたち(形)の異常を認めるもの」と定義しておきましょう。
 お母さんのお腹(子宮)の中で、受精卵の中にある「遺伝子」という設計図に従って、お母さんの「食べたもの」を材料として、赤ちゃんの体の「かたち」が少しずっ少しずつ出来ます。この時に、設計図に異常が起こることを『遺伝』、体の部分を作る材料が変化したり、何か外力などが作用して起こることを『環境』と呼びます。
 「先天性四肢障害児父母の会」という名称は、医学用語を使ってわが子の存在を直視することを社会に宣言した、親の心意気が現れているように思います。
 現在の、父母の会の会員数は約1,100名ということですが、少し古い資料ですが、私がまとめた疾患別の分類をあげておきましょう。
 

表1 先天性四肢障害児父母の会会員の「疾患別分類」 

会員数1,002名(1987年会員名簿による)

1

四肢末端低形成症

258

25.7%

2

絞扼輪症候群

149

14.8%

3

裂手裂足

112

11.2%

4

寡指趾症

91

9.1%

5

ポーランド症候群*

64

6.4%

6

小耳症*、顔半分低形成症

60

6.0%

7

合指趾症

52

5.2%

8

短合指趾症

33

3.3%

9

尺骨列欠損症

25

2.5%

10

先天性多発性関節拘縮症*

18

1.8%

11

アペルト症候群*

16

1.6%

12

橈骨列欠損症

14

1.4%

13

関節変形、内反手・足

12

1.2%

14

多指趾症

9

0.9%

15

クルーゾン病

1

0.1%

16

軟骨形成不全症*

7

0.7%

17

ラッセルシルバー症候群

3

0.3%

 

(*は会の中にある、5つの分科会を示します)

 

 それでは、これからまず基礎的な考えの概要(基礎知識、総論)について解説しましょう。最初に説明するのは、後で説明するように、先天異常の原因は大きく「遺伝」と「環境」に大きく分けられるのですがそのことを『原因分類』と名付けて説明します。次に、主として整形外科の分野の方が始められた分類ですが、異常の形は、「欠損」、「重複」、「過成長」「低成長」と5つに分ける考え方があります。それを『形による分類』として説明します。更に、母親の胎内で発達しつつある赤ちゃんの体が傷付くことがありあります。この外から傷付けるのは、羊膜に傷がついてそこから繊維が出たり、血液が出たりして様々な症状を起こします。そのことを統一的に理解するために出来た『早期羊膜裂傷続発症』について説明します。最後に、こうした手足の形態異常を統計的に整理するための国際保健機構(WHO)の分類があり『疫学分類』と呼ばれる事がありますが、その中に減数異常(減形成)として手足の異常を分類しています。
 それが終わりますと、『各論』に入り、この父母の会の会員の『疾患別(障害別)分類』に従って、1つずつ説明することにします。
 

2.先天異常の原因別分類

 先天異常を起こす原図は、『受精卵』の前と後では全く違うように働きます。つまり、『受精卵』は、お父さんからの「精子」と、お母さんからの「卵子」が合体したものですから、異常が起こる場合には、精子と卵子が出来るときから持っている「遺伝物質」が強い影響を与えます。しかし、受精卵から胎児が出来る過程では、材料やその組み立て方に「外からの影響」を強く受けます。
 つまり、『遺伝』と『環境』の2つと言うことになります。前者を「遺伝障害」、後者を「胎児障害」と名付けます。
 

表2.先天異常の「原因別分類」

大分類

中分類

小分類

主な疾患

遺伝障害

遺伝病

常染色体優性遺伝

軟骨形成不全症

 

 

 

アペルト症候群

 

 

 

クルーゾン病

 

 

 

マルファン症候群

 

 

 

一部の裂手裂足、多指

 

染色体異常

数異常

ダウン症候群

 

 

 

ターナー症候群

 

 

構造異常

猫鳴き症候群

 

多因子遺伝病

 

アレルギー疾患

 

 

 

高血圧、糖尿病

胎児障害

胎芽病

化学物質

サリドマイド胎芽病

 

 

感染

風疹胎芽病

 

 

発生障害

四肢末端低形成症、寡指趾症

 

 

 

ポーランド症候群

 

 

 

尺骨欠損症、橈骨欠損症

 

 

 

巨指趾症、くも指趾症

 

 

 

多指趾症

 

胎児病

破壊

早期羊膜裂傷症候群

 

 

 

絞扼輪症候群、正中裂

 

 

変形

関節変形、内反手・足

 

 

 

小耳症、顔半分低形成症

 

 

発生障害

子宮内発育障害

 

 

 

シルバー症候群

 

 

 

先天性多発性関節拘縮症

 

 a.遺伝について

 ここで、『遺伝』についての考え方を整理しておきましょう。わが国の辞書には、「遺伝とは、親から子・孫に、体の形や性質の伝わる現象。」(広辞苑)と書いてありますが、これは、ラテン語の『遺産相統』を意味する言葉の訳で、現在の知識からいうと間違っています。その理由は、今から100年程前に、オーストリアの僧侶で植物学者のメンデルが、エンドウでは「親から子・孫に種子の形や子葉の色などの性質が伝わらない」ことに注目して「一定の法則があること」を見付けたからです。
 現在では、生物の体は細胞という構造からできていてその中の『細胞核』という部分に親から子に伝わる「遺伝子」という物質があって、『細胞の構造や働きを支配している』ことが分かりました。この遺伝物質は「ディ・エヌ・エイ」(DNA)と呼ばれ、ヒトでは30億もある「塩基対」の細長い糸から出来ています。そしてこの、『遺伝子』は、「受精卵」が細胞分裂を繰り返して「胎児」になる過程で働いて「ヒトの全ての体の形や構造」を作る『設計図』の役割をしています。
 ある症状や疾患に『遺伝性がある』というのは、「遺伝子の配列が変化して、その結果症状が起こった」ことを意味します。遺伝子の一部が変わる事を「変異」といい、遺伝子に変異を起こす物質を『変異原』とか『遺伝毒物』とかといいます。こうした性質の物質は、われわれのまわりに沢山あり『環境変異原』と呼ばれています。具体的には、放射線、感染、化学物質などです。化学物質には、医薬品、食品添加物、環境化学物質、残留農薬などがあります。
 ヒトは、お父さんとお母さんから、1つずつ、同じ性質の遺伝子(対立遺伝子)をもらっています。そして、『手と足』の左右は、1つの遺伝子が作ったと考えられています。
 ここでは、「優性遺伝形式」をとる第皿指列の欠損(裂手裂足)を例として説明します。
 最初から指の数が少ない(遺伝による)のは、指を作る遺伝子に突然変異が起こって、その設計図が働かなくなったため指の一部が出来なくなった状態です。
 この場合は、患者さんの手や足の中指を作る2つの遺伝子は、1つが異常で、もう1つは正常です。「中指が無い」と言う事は、胎児の指の部分が出来るときに設計図の一部が、たまたま無かったり、読み込まれなかった。つまり、通伝子が働かなかった場合もあれば、手を作る材料の一部が間に合わなかったものもあり、その結果できる、指の障害の程度や形はヒトそれぞれ違いがあります。しかし、これは症状を見ただけでは区別出来ません。このことは、裂手裂足のところで再び詳しく述べますので、参考にしてください。
 因みに、誰でもこのような遺伝子、(これを変異遺伝子と呼びますが)、を30個以上隠して持っていることが明らかとなりました。この隠して持っているものは、隠された遺伝(劣性遺伝)とか、多因子遺伝とかと呼ばれています。最近、誰でも幾つかの「癌の遺伝子」を、その働きを押さえる「抑制遺伝子」と一緒に持っていることが分かりました。そして、たまたま、染色体が切れて抑制遺伝子が欠落すると癌が出来ることも分かってきました。染色体が切れる現象は細胞分裂の時には頻繁に見られるのですが、その意味が分からなかったのです。
 人間の体は、どの部分を取っても、みんな遺伝子と環境が複雑にからみあって出来たものです。そして、最近この、「ヒトゲノム計画」と言ってヒト遺伝子の働きの全貌が明らかになりつつあります。そこで分かった事は、『遺伝的に完全なヒトは誰もいない』ことと、『癌や老人現象やアレルギーなど生命現象の全ては、環境と遺伝子の関係で起こっている」事などです。
 最後にまとめますと、ヒトの体はどの部分1つとっても、みんな遺伝子を設計図として出来ており、誰でもこうした変異遺伝子を幾つか隠して持っていますが、たまたま、「裂手裂足」の患者さんは、その遺伝子の働きが現われた。そうした『個人差』を示していると考えます。

 b.破壊と変形について

 胎児障害のところに『破壊』と『変形』という分類があります。
 これは、アメリカのスミスと言う学者が、生まれる前に赤ちゃんの手足に外からカが加わって出来た形の異常を2つにわけて考えたことから始まります。
 胎児の体は、子宮の中に入っていまずが、その「入れ物」が小さい場合には胎児の体は圧力をうけて「歪み」ます。この力が長い間働いているとからだは『変形』してしまい、なかなかもとに戻る事が出来ません。これを変形と呼びます。
 この変形の例として、手足の変形、関節の脱臼、顎の変形、頭の形の変形、顔の形の変形、四肢の変形などあります。これは、子宮などのお母さん側の条件もありますが、赤ちゃんの異常が原因のこともあります。
 しかし、変形は、自然に直るものも多く、被害も軽いのが特徴です。
 『破壊』は、正常に発育している胎児の体の一部にいろいろな原因で出来た「ひものようなもの」が、元気な赤ちゃんの手足に巻き付いて、その動きによって「くびれたり」、強ければ「切れたり」するものを言います。
 この紐状のものを「絞扼輪」とか「羊膜帯」と呼ばれます。羊膜の内面の剥離組織、出血、手足の先端の内出血などで起こります。
 起こるのは、手足の輪状の組織のはん痕、絞扼輪、切断などです。これらの症状は、後でのべる『早期羊膜裂傷続発症』の一部分に当たります。
 続けて、形の話しに入りましょう。
 

3.四肢障害の形による分類            

 手足に起こる症状(四肢障害)を形態で分けると、『欠損』『重複』『過成長』『低成長』の4種類があります。
 

表3.四肢障害の「形による分類」

大分類

中分類

小分類

主な疾患

欠損

横断型

 

四肢末端低形成症

 

 

 

絞扼輪症候群

 

 

 

ポーランド症候群

 

縦線型

橈骨列

橈骨列欠損症、海豹肢症

 

 

中央列

裂手裂足

 

 

尺骨列

尺骨列欠損症、寡指趾症

重複

 

第T指列側

軸前多指趾症

 

 

第X指列側

軸後多指趾症

過成長

 

 

巨指趾症、くも指趾症

低成長

 

 

四肢末端低形成症

 

4.羊膜の内面が切れて起こった胎児の障害

 さて、ここで、「早期羊膜裂傷続発症」について説明しましょう。
 ところで、『羊膜』は「卵から発生し子宮内で胎児を取り巻く卵膜(3層)の一番内側の膜で、もとは薄い透明なやや強靭で血管のない膜で、その内側は羊膜の充満した羊膜腔」ですから、これに裂け目(裂傷)が出来て、羊水に流れ出た血液や組織が紐状物質となり、さまざまな症状を起こすことがあり、それを「羊膜裂傷」と言い、その障害の後始末をしたものを「続発症」と呼びます。
 これが、「頭部顔面」に、妊娠の早い時期に起こると、「無脳症」や、「非典型的な顔面裂」や、「唇裂口蓋裂」となります。また、遅い時期には、「腹壁や胸壁の欠損」などが起こりますが、切断、皮膚の癒合、循環障害による低形成、異形成など、症状の種類は多彩です。
 しかし、早い時期に起こったものは『破壊』が多く、途中の時期には唇裂、多指などの『異形成』を起こし、遅い時期になると『変形』となるなど、症状が段々と軽くなる傾向があります。
 特に、手足の場合には「それまで正常に発達した組織が破壊されて浮腫(むくみ)や、出血などが起こり、それらが再吸収した結果組織に壊死を起こす」ものもあり、その結果、「四肢切断」、「羊膜帯症候群」、「絞扼輪症候群」など前に説明した「胎児障害」の中の『破壊』が起こります。
 

表4.「早期羊膜裂傷続発症の分類」

胎児の時期

頭と顔

四肢

その他

3週

無脳症

 

 

 

顔の変形、長吻

 

 

 

顔面裂、正中裂

 

 

 

眼球欠損、脳ヘルニア

 

 

 

髄膜瘤

 

 

5週

唇裂

四肢減形成

腹壁欠損

 

 

多指症

胸壁欠損

 

 

合指症、合短指症

 

7週以降

口蓋裂

絞扼輪症候群

 

 

小耳症

四肢切断

 

 

顔半分低形成症

四肢末端低形成症

 

 

頭蓋変形

 

 

後期

内反足、頭変形

 

 

 

5.疫学的分類

 『国際疾病分類』という国連の定めた病気の分類法があります。そこの「四肢の減数異常」(減形成)という項目について説明します。そこには「欠指」、「欠指」、「手の欠損」、「上肢欠損」、「下肢欠損」が含まれています。これは国際的に疾患を分類することに使われています。これらの症状を持つ人はどの位の頻度で生まれているか調べて見ますと、母性保護医協会が調べた昭和53年から昭和61年の9年間の統計では、表5のようになります。

 

表5.「四肢減形成」の「疫学的分類」と発生頻度(母性保護医協会)

四肢減形成全体

6.29/10000(出生当たり)

欠指

1.82/10000

欠趾

0.84/10000

手の欠損

0.11/10000

上肢欠損

0.16/10000

下肢欠損

0.15/10000

 

各論

 これから、父母の会の会員の障害別分類に従って用語を解説します。

1.四肢末端低形成症  会員数258(25.7%)  「環境」

 「父母の会会員」の4分の1を占める疾患です。
 「末端」というのは、手足の端(はし)で、「低形成」というのは、発達が悪いという意味ですが、しかし、この「四肢末端低形成症」は、手足の一部が欠損していたり、発育が悪い(低成長)が起こったものを言います。
 実際の症状を見ますと、症状は手足の軸を横切るように障害(横断型)が起こっていて、軽い場合には、1本または数本の指の先だけが短く、重い場合には、肩から肘までの骨(上腕骨)の途中から先が全くなくなっていたり様々です。一番多いのは、肘から手前の骨(前腕骨)の3分の1以下の欠損でず。
 特徴は、左右の症状の形や程度が同じでない事と、欠けている所は「切断」状になっていたり、切り株状に見える場合には、その断端の皮膚を良く見ると「皮膚紋理」といって手指や足指の先に特殊な皮膚構造が残っていたり、その構造を持つ5つの肉塊があったりすることです。また、指の先だけが癒着して、指の中間に穴が開いていることもあります。そして障害を起こしていない指の関節は良く動きます。
 これは、『形による分類』(表3)では、手足の部分が欠けている『欠損』に属し、手足の軸に直角に欠けている[横断型]です。また、一部には、発達の悪い『低成長』に属するものもあります。
 また、『原因別分類』(表2)によれば、『胎児障害』のなかの、発育の経過中に手足が出来なかった[形態形成障害](ここには「発生障害」としてある)ものです。起こる時期は、表4の羊膜裂傷続発症として起こるものでは、胎児期の、5週の四肢減形成の中と、7週以降に起こるものがあるようです。
 ヒトの体の各部分は両親から貰った遺伝子を設計図として、母親の胎内で、母親の食べたものを材料として出来ます。これが「遺伝」と「環境」です。四肢末端低形成症は、遺伝でなく環境のせい(胎児障害)で出来たと考えられています。しかし、環境の中に手足の発達を障害する原因が沢山あって、そのどれがどのように働いたらこのようなことが起こるのかと言うことになると、殆ど分かっていないのが現状です。
 四肢のこのような欠損は、「四肢減形成」と呼びまずが、全体では10,000人当たり6.3人、つまり約1,600人に1人生まれています。(表5)これを私は、「お母さんのおなかの中での交通事故のようなものです」、と説明しています。
 治療は、原則的には対症療法といって何か症状が出た時に対応することしかありません。外科的治療の適応でないことが多いようです。
 

3.絞扼輪症候群    会員数149(14・8%) 「環境」

 一般の辞書に「絞扼」は載っていませんが、医学辞書には、「絞扼(症)」は「腸管が腸管膜とともに索(紐)状物などで締めつけられて、腸管内容の通過障害(閉塞)とともに、血行障害をきたした病態」(最新医学大辞典、医歯薬出版)と書いてあります。これは、特にイレウス(腸閉塞)のことを指しますが、手足の先端が「索(紐)状物などで締めつけられて、血行障害をきたした病態」を「絞扼輪症候群」と呼びます。
 そこで、「絞扼輪」の定義は「手や足の指の先、またはその中枢部(手首、前腕、上腕、足首、下腿、大腿など)が、索(紐)状物などで締めつけられて[くびれ]、血行障害をきたした病態のことで、その結果、軽症のものは輪状の狭索、重症のものはその部分から先が切断し欠損します。そして、手足に起こる症状は不規則で無原則的である」、ことが特徴的です。
 これは、『形による分類』(表3)で見ますと『欠損』[横断割]に属し、さらに表2の『原因別分類』によりますと、胎児期に手足が出来てから後で物理的原因が作用した『胎児障害』の「胎児病」の[破壊]と言うことになります。
 既に説明した「四肢末端低形成症」とは、容易に区別できる場合と難しい場合があり、学者によっても判断が異なります。私は、原則として[くびれ]「絞扼」を認めるものをこの病態と診断することにしています。
 また、これは一群の「早期羊膜裂傷続発症」(表4)の1つと考えられ7週以後に起こるとされています。
 つまり、「絞扼輪症候群」を一言で説明しますと、「外部からの圧力による手足の組織の破壊の結果起こったもの」で、これは、外からみえる『外表奇形』の一種ですが、内臓の奇形や表面の組織以外の合併症を伴う事は殆どありません。
 私は、沢山のお子さんを診断していますが、親御さんにお聞きしますと、皆活発で健康な子ばかりです。そこで、「元気な赤ちゃんが、お母さんの胎内で手足の先に巻き付いた糸状のものによって、このような事件を起こした」と説明しています。
 治療について言いますと、「皮膚を取り巻く部分的な[くびれ](絞扼)によって、血管やリンパ液の還流が制限されている場合(Z縫合)や、手術によって運動能力が改善される場合」などを「手術の適応」と判断しています。
 最後に、原因について一言述べておきますと風邪のウイルスや、ホルモンの異常が組織の異常や血行障害を起こした結果と考えられるものもありますが、許しいことは現在よく分かっていません。私は、原因物質の1つとして「残留農薬」を疑っています。
 

4.裂手裂足      会員数112(11・2%) 「環境・遺伝」

 「裂手」は、一般の辞書にはありませんが、医学辞書には、「中指列(なかゆび)の欠損、および第V中手骨(手の平の骨)の形成不全または欠損により裂隙をきたし」た状態(最新医学大辞典、医歯薬出版)と書いてあります。そして、特に両側性が多いことと、遺伝性が多いことが追加されています。
 遺伝子に異常があると起こる疾患を「遺伝病」と呼びますが、その典型的な例が「裂手裂足」です。
 しかし、裂手裂足は一般的には胎児期に「環境の影響」だけで起こったものが多く「遺伝性のある」ものは全体の10%以下と考えられています。
 裂手裂足は、「常染色体性優位遺伝」をすると考えられています。これは、お父さんとお母さんから1つづつ貰った遺伝子の片方に異常があると症状が現れます。ということは、正常な遺伝子を1つ持っていることを示しています。手足を設計する遺伝子は、両手両足に同時に働くと考えられているので、両手両足に同じ症状が現れる筈ですし、そのような例も知られています。
 しかし、実際には、「遺伝性のある裂手裂足」の場合でも、症状は手だけ、足だけ、片方のみに現れれることもあり、その症状も親と子で多少違うのが普通のようです。これは、遺伝子は、環境の影響で働いたり働かなくなったすることで説明されますが、許しい事はまだ分かっていません。 最後に、治療について述べますと、こうした症状があっても日常生活に不自由を感じることは殆ど無いので、原則として治療の必要はありません。しかし、この指の間の裂隙を縫い合わせる手術を希望するヒトもいます。その手術をする場合には、くれぐれも、機能障害が残らないように注意してほしいものです。
 

5.寡指趾症      会員数91(9・1%) 「環境」

 寡(カ)には「少ないこと。寡黙。多寡。衆寡。ひとりもの。やもめ。
寡婦。(徳のすくない意の)王侯の謙称。寡人。寡君。」(広辞苑)の意味があります。従って、「寡指」というのは指の数の少ない状態を指します。つまり、手指または足しの1本またはそれ以上が、全く存在しないことです。多いのは、足の外側の指(趾)が1本ない状態です。
 これを『形による分類』(表3)で見ますと、『欠損』の「縦線型」「尺骨列」に属します。
 親指(
T指)と他の4本の指とは形が違いますからどの指が無くなったかは形を見れば分かります。つまり、手の親指は、太くて大きく他の指と向かい合うように「対抗性」に付いています。また、他の指には3つある指の骨(指節)が、親指には2つしかありません。
 「寡指症」には遺伝性はありません。正常な遺伝子が働いて指を作る時に、何か外からの影響(環境化学物質など)が働いてこうした障害が起こったと考えられています。
 そのことを指の出来方から説明しまずと、受精後35日から40日頃に手足の先端は、先が平べったい「おしゃもじ」のようになります。次に、その先端に沿って5つ細胞の塊(頂堤)が並び、それを中心にして、その間の細胞が壊れて指と指の間(すき間)が出来ます。そして、「頂堤」が五つ出来ないと、指の数は少なくなるのです。
 寡指症では、頂堤やそれから指が出来る時に、原因となる物質が作用したと考えられますが、その詳しい事はまだ分かっていません。
 しかし、その原因となる物質は、ほんの微量、分子レベルで、一時的に細胞の一部にだけ無差別に攻撃し、その後で跡形もなく消える性質を持つ強力な毒物ですが、『農薬』が疑われています
 その理由は、農薬は、食物の周辺に散布され、微量で「致死性や接触毒性」があり、その全てを完全に排除することが不可能な物質の1つだからです。
 こう考えると、寡指趾症のお子さんの指は(他の四肢障害のお子さんと同じように)、お母さんのお腹の中で赤ちゃんの手足が出来、「ひとの体」が完成する過程での『過酷な環境との闘いと共存のドラマの1こま』を物語っています。
 

 6.ポーランド症候群*  会員数64(6.4%) 「環境」

 これは、『形による分類』(表3)では、『欠損』の「横断型」に属しますが、それは、片方の手に起こるだけで、その方の胸の筋肉の発育の悪いことを合併しまず。また、『原因別分類』(表2)では、「胎児障害」の「胎芽病」の「発生障害」に属します。
 つまり手の症状は医学辞書には、『片側性の中節骨短縮とら羅患指間の皮膚性合指(短命指)』と書かれています。
 つまり、手の指には、親指には2本の指骨、その他の指では3本の指骨があり、手もとから外にかけて「基節」「中節」「末節」と呼びますが、この中間にある「中節骨」が短くなるのです。そして、指と指の間に皮膚が「みずかき」のように付いている「皮膚性合指」が認められます。
 さらに「および、同側の大胸筋欠損を合併する」と書いてありますから、こうした手の障害のある方の胸の筋肉欠損があると言うことになります。
 そして、さらにこれは、複合奇形症候群で、遺伝性は認められません。 この奇形の原因については、「骨の原基(元になる場所にある組織)の分化障害(手足が段々と出来てくることが、うまくいかない)が本態である」とされていますが良く分かっていません。
 

7.小耳症*、顔半分低形成駐 会員数60(6.0%) 「環境」

 私たちの「みみ」つまり、おもてから見える「耳介」は、胎児の初めの1ケ月頃、つまり胎生四週頃に、胎児の頑の部分の両側面に3つの小さな豆粒状の皮膚の隆起から出来ます。これは、「第T鰓弓後縁と第U鰓弓X前縁から出来た3つずつの結節から発生」すると書いてあります。そして、これらの発生が上手にいかないと耳介の発育が悪くなり、小さな耳(小耳症)となったり、形の悪いもの(耳介異形成)となったりします。しかし、耳の形も色々のものがあり、耳介の上の方だけがやや小さいものから、耳たぶ(耳垂)が小さいもの、耳の孔(中に通じている管状のもの)がなくて、耳の位置に痕跡的な肉の塊(副耳)がついたもの、全く何もない(耳介欠損)などがありますし、これは両方の耳が同じように冒されているものも、片方だけのこともあります。
 さらに、顔面や頭の部分に、こうした耳の症状だけがあって、その他の部分は何も冒されていないものもあります。(単独障害)また、同時に顔の半分が小さくなって(発達が悪く)いるものもあり、それを顔半分の低形成と呼びます。この場合には、片方の耳だけが小さくなり、もう片方は正常でず。顔の半分が他方と較べて小さい場合には、その半分の下顎骨の発育も悪くなります。
 この2つは、『羊膜裂傷続発症』(表4)の7週以後のところに入っています。また、『原因別分類』(表2)では、『胎児障害』の「胎児病」の「変形」に属しまず。これらは、その時期に、胎児の顔の一部に何らかの圧力が外から加わって、耳とか顎とか顔の片方の形成が障害されたものと考えられます。
 治療には、多くは自家肋骨軟骨を移植する手術が行われています。
 

8.合指趾症        会員数52(5.2%) 「環境」

 これは、隣り合わせの指の一部、または全長にわたって癒合したものを『合指趾症』といいます。これには3つの種類があります。
 その一つの一番軽いものは、単に指の間の切れ込みが浅いもので『皮膚性合指』と呼びます。その場合には、指と指の間に「みずかき」状の皮膚があるものもあります。
 更に、指が全長にわたって癒合すると同時に腱など皮膚以外の組織も癒合しているものを、『線維性合指』と呼びます。
 最後に、指の骨まで癒合しているものがありますが、これを『骨性合指』と呼びます。
 また、指の先端部だけ癒合しているものは「絞扼輪症候群」に見られます。
 そのことを指の出来方から説明しますと、受精後35日から40日頃には、「おしゃもじ型」の切れ込みのない手足の先端に5つ細胞の塊(頂堤)が並びます。そして、その塊を中心にして、その間の細胞が壊れて指と指の間(すき間)が出来るのでずが、この時、5つある「頂堤」の2つが付着していると『指の骨まで癒合する合指症』となります。また、この切れ込みの部分の細胞の破壊が不充分であると『皮膚性合指』となります。
 治療は、外科的にこの互いに付いた部分を切り離す「分離手術」を行うのですが、「皮膚性合指症」の場合には、単に切り離しただけでは、傷が直るとまた付いてしまいますので、接合部を切り離し、そこに別の部分(多くは腹部の皮膚)の皮膚を移植します。
 また、「骨性合指症」の場合には、手術を行うと手の動きが悪くなって今まで出来たことが出来なくなることがあります。
 手術の適応に注意する必要があります。そのため、こうした合指症の手術は、外見も機能もともに改善される場合にだけ行うべきであると考えられています。
 発生頻度は、4,000人に1人とされています。
 

9.短合指趾症       会員数33(3.3%) 「環境」

 指が短くて、しかも癒合しているものを言います。これは、前の項目の合指症と同じく、『羊膜裂傷続発症の分類』(表4)の5過という早い時期に起こるとされていまず。遺伝性でなく、環境の原因でおこるものが殆どであると考えられています。
 「短合指趾症」は、すでにポーランド症候群のところで説明したように、指が短くて、しかも癒合しているものを言います。
 指が短いものには、指の骨が全部短いものは「遺伝性短指症」と言って、遺伝性のものも知られていますが、どうしたわけか父母の会の会員の中には、1人も見付かっていません。
 

10.尺骨列欠損症     会員数25(2.5%) 「環境」

 肘から手首までの部分を『前腕部』と呼びますが、そこにある骨は2本あって、親指側を『橈骨』(とうこつ)、小指側を『尺骨』と呼びます。
 この小指側の、前腕の骨の1本が欠損しているものを『尺骨欠損』と言います。その小指側の、前腕の骨だけでなく、小指の骨まで一連の骨が欠けているものを『尺骨列欠損症』と言いまず。
 一番重い症状は、肩から先が全く無い場合に見られます。また、尺骨がなくて、同時に肘関節もないことがあります。この場合には、上腕骨(肩から肘までの骨)と前腕に残った橈骨が癒合(骨と骨が付いていること)して肩から手首まで1本の骨になります。この場合には、その中央部に尺骨の一部が「にわとりのけずめ」のように付着していることがあります。
 また、もっと症状の軽いものには小指の方から指が欠損していて、親指だけが残っている場合があります。残った1本の指が親指であることは、親指のつけねの膨らみ(母指球筋)が残っていることで分かります。こうした場合には、肘が鋭角状に曲がっていて伸びない事もあります。
 「大腿骨・橈骨・尺骨症候群」(FFU)と言って、下肢の骨の障害を合併しているものもあります。これは、胎児の時にお母さんが、ホルモン剤を使った場合に多いと考えている学者もいます。
 これは、『形による分類』(表3)の『欠損』「縦線型」「尺骨列」に属します。また、『原因別分類』(表2)では、『胎児障害』「胎芽病」「発生障害」に属します。
 

11.先天性多発性関節拘縮症* 会員数18(1.8%) 「環境」

 これは、生まれる前に起こり(先天性の)、柱状が段々悪くなることのない(非進行性の)手足(四肢)の関節の、関節を取り巻く袋(関節包)や、関節を構成する靭帯などの関節のまわりの柔らかい組織(軟部組織)が収縮したままになって伸びなくなったために関節の運動が制限される(拘縮)ことを特徴とする疾患を『関節拘縮症』と呼びます。
 そして、多発性とは、いくつかの関節が同時に冒されていることを言います。
 一口で言いますと、関節の筋肉が収縮したまま伸びない状態です。
 それには、筋肉が原因のもの(筋原性)と神経が原因のもの(神経原性)とがあるとされていますが詳しいことは良く分かっていません。
 そして、曲がったまま伸びない(屈曲拘縮した)関節には翼状の皮膚が付いていることが多く、一般に、知能は正常で冒されることがありません。
 しかし、頻度は少ないのですが、小頭症や精神遅滞を合併ずるものや、腎臓に石灰が沈着したり、肝臓の障害のため高度の黄疸を合併して早期に死亡する患者のいる家系も報告されています。とはいえ、これらはそれぞれ異なった原因で起こったものであると推定されています。
 頻度はそれほど稀なものではありません。
 四肢の障害のみものは出生10,000人に0.3〜3人と言われています。多くは健康な家族の中に1人だけ単独に生まれ、環境要因で起ったものと考えられていますが、その原因ははっきりしていません。
 ネズミの胎児に、神経と筋肉の接合部を麻痺させるクラーレ(アマゾンの原住民の矢毒に含まれるアルカロイド)と言う毒物を作用させて同じような症状がおこることから、運動神経と骨格筋の接合部に何らかの物質が作用したものもあると考えられています。
 稀な遺伝性のあるものには、常染色体性劣性遺伝が多いが、遺伝的な異質性のものが多い、と考えられています。
 治療は、早期からのリハビリテーションによる関節の矯正が効果的な場合もあります。通常は予後は良好で、マッサージ、副木やギプス固定による矯正、整形外科的手術が試みられています。
 これは、『原因別分類』(表2)では、『胎児障害』「胎児病」「発育障害」に属します。
 発生頻度は、10,000人に1人とされています。
 

12.アペルト症候群*   会員数16(1.6%) 「遺伝」

 また、「アペール症候群」とか「尖頭合指症」と言う名でよばれることもある疾患です。症状は、生まれたての赤ちゃんの頭の骨は、未発達で、脳の一部を覆っているだけなので、頭の頂上の前と後に、大泉門と小泉門と呼ばれる、頭の骨が欠けている部分があります。
 このうち、後の部分の小泉門は、生後間もなく頭の骨(頭蓋骨)が発育するにつれ狭くなって閉鎖しますが、前にある大泉門は、1才半頃まで閉鎖しません。
 しかし、この疾患では、頭蓋骨が早くから癒合したために、頭の形が細長くなった(狭頭症)り、尖ったり(尖頭症)するなどの頭の形が変化します。また、同時に、手の指や足の指(趾)の間が皮膚によって互いに付着(皮膚性癒合)し、さらに骨が付いたり(骨性癒合)が起こっています。つまり、頭の形が変わり、手指が付いている患者さんです。
 手の指や足の指の一部は、骨同志が付いた(骨性癒合)で、さらに全ての指に同じ症状が起る(完全な癒着)ために、外観上はスプーン状をしています。
 また、患者さんの中には聴力の障害、水頭症、精神発達障害を伴うひともいますが、殆どの人は知能の発達に異常はありません。典型的な症状を持つ人は常染色体性優性遺伝をすることが分かっています。
 これは、『原因別分類』(表2)では、『遺伝障害』「遺伝病」「優性遺伝病」に属するものです。
 頭の骨が早い時期から癒合しますと、脳の発達が障害されますので、早い時期に、頭の骨を切り開く手術が必要な場合があります。また、顔の骨に大きな手術をして形を変えることで、いろいろの顔の症状を取り除くことも一般に行われています。
 発生頻度は16,000人に1人とされています。

13.橈骨列欠損症     会員数14(1.4%) 「環境」

 肘から手首までの、前腕の2本の骨のうち親指側の骨を『橈骨』(とうこつ)と言います。この骨の発達が悪いものを「橈骨形成不全」、とか「橈骨低形成」と言いますが、この骨が全くないものを『橈骨欠損症』と言います。
 症状は、一番軽いものは、親指の付け根のところのふくらみ「母指球」が小さいか欠けている(母指球筋欠損)もので、この場合には、親指と他の4本の指の対抗性が無くなるので、親指と人指し指の間でものがつまめません。さらに、親指の小さいもの(母指低形成)や、親指のないもの(母指欠損)と続き、それから、
T指、U指、V指、W指、X指の順に障害が軽くなります。
 次に冒されるのは、手首の骨(手根骨)です。8つある手首の骨が癒合したり、欠損したりします。また、手首が、親指の方向に曲がるのを「手首の橈側偏位」と呼びます。(これを、解剖学では、「外反手」、整形外科では、「内反手」と呼びます。紛らわしいので「橈側偏位」と統一しておきます。)
 さらに、障害が重いと、橈骨が小さくなったり、無くなったりします。これは、「橈骨欠損」、「橈骨低形成」と呼ばれます。
 この場合には、橈骨と尺骨が互いに付着して、「橈尺骨癒合」の状態になることが多く、肘の運動が制限され、手の平を返す運動が出来なくなります。
 さらに、症状が重くなると、海豹肢症(あざらし肢)と呼ばれる状態となり、さらに重くなると、無肢症といって上肢が全く欠損します。
 この一連の症状は、「サリドマイド胎芽症」として知られています。また、心臓の奇形を一緒に持った遺伝病があります。これは、「ホルトオラム症候群」と呼ばれるものでこ常染色体性優性遺伝をします。
 サリドマイド胎芽病の患者さんはわが国では309名知られています。
 

表6.わが国のサリドマイド胎芽病患者の症状別分類

症状

数(重複障害)

聴力障害

82(19)

海豹肢症、無肢症

32(2)

重症の奇肢症(上腕骨・橈骨欠損)

94(6)

前腕の障害(橈骨欠損)

77(5)

手の障害(親指欠損、障害)

62(6)

309(19)

 

 これは、『原因別分類』(表2)では、『胎児障害』「胎芽病」「発生障害」に属するものです。『形による分類』(表3)の『欠損』「縦線型」「橈骨列」に属するものです。
 

14.関節変形、内反手・内反足  会員数12(1.2%) 「環境」

 手首から先が曲がったものを「弯曲手」と言いますが、手首が内側にまがったものを「内反手」と呼びます。ところが、解剖学では、ヒトの体は手の平を前に向けた位置で、内と外を区別しますので、手が親指の方に手首のところで曲がっているものを、「外反手」と呼びます。
 しかし、整形外科では、自然の位置で手の方向を決めます。親指の方に手が曲がっている場合には大抵、橈骨が欠損しているので、肘の関節に運動制限があって手の平を前に向ける事が出来ないのです。それで、整形外科では「内反手」と解剖学とは逆の呼び方をしています。
 さて、辞書によりますと「内反手は、先天性橈骨欠損あるいはその形成不全により手関節において手の橈側偏位を呈するもの。」と書いてあります。そして、右側に多く生じ、両側性、片側性は半々であるということです。その場合、この症状は、骨、筋、神経、血管系の障害を伴う事が多いとされています。また、同時に、肩甲骨や、鎖骨、上腕骨などの形成不全を認め、きらに、手首の骨の、舟状骨、親指の付け根にある第1中手骨、および親指(母指)などの欠損を認めることが多いとされています。上腕の筋の欠損例もあり、前腕では回外筋長・短橈側手根伸筋が欠損していることが多い。これは、サリドマイド胎芽病で知られていることとと同じです。
 また、内反足について述べます、これは、先天性あるいは後天性に起こります。足の変形は、全体として足が回外・内転位に固定されたものを「内反足」と呼びます。その大部分は、先天性のものである。そして、先天的内反足には、足のつま先が伸びている尖足内反足が多く、その他に凹足や内転足があります。下腿が内に捻られていることが多い。
 治療は、乳児期では「徒手矯正」をしたり、「絆創膏固定」や、「ギプス包帯」による固定を行います。年長児では外科的治療を行うことがあります。
 これは、『原因別分類』(表2)では、『胎児障害』「胎児病」「変形」に属するものです。
 

15.多指趾症       会員数9(0.9%) 「環境」

 これは、手または足の指(趾)が過剰にある状態の事です。
 過剰の指が、親指の外側に付いているものを「軸前多指」、小指の外側についているものを「軸後多指」と呼びます。
 付いている過剰指には、定常に発育したものから、形が小さく発育の悪いものや、痕跡程度のものまで色々ありまず。
 小さな発育の悪いもので、切除しても他の指に影響の無い場合には、生まれて直ぐに切除術を行うために本人も知らない場合もあります。
 発生頻度は2,500人に1人と言われています。
 この疾患は、単発の場合が多いのですが、常染色体性優性遺伝のものもあります。
 これは、『原因別分類』(表2)では、『遺伝障害』「遺伝病」「常染色体優性遺伝病」と『胎児障害』「胎芽病」の「発生障箭」の二つあります。さらに、『形による分類』(表3)の『重複』には「第
T指列側」のものと「第X指列側」のものとの2種類があります。
 

16.クルーゾン病     会員数1(0.1%) 「遺伝」

 「頭蓋顔面異骨症」とか「頭蓋眼窩顔面異骨症」とか「頭蓋顔面形成不全症」などと呼ばれる疾患です。生まれた時は誰でも頭の骨(頭蓋骨)の間が離れています。
 この疾患では、この頭の骨と、顔を形づくっている骨(顔面骨)が、互いに付着する(縫合)時期が通常より早く起こるつまり、「早期癒合」が起こって、その結果、頭と顔の形(頭蓋顔面)の外観が特異な形になることを特徴としています。こうした、症状の組みあわせを「症候群」と呼びます。
 もう少しは詳しく説明しますと、胎児の時に、頑の前を横切る「冠状縫合」、「人字縫合」、頭の頂上を前後に走る「矢状縫合」などが互いに付着(癒合)しますと、頭の形が細長くなる(狭頭駐)となります。
 この場合には、限球が入っている穴(眼裔)が浅く小さくなるために眼球が突出します。また、上顎の骨の発育が悪いので下顎が突出しています。さらに、昇や咽喉の発育が悪いために呼吸の障害が起ったりすることがあります。
 また、疾患は遺伝病で、遺伝形式は常染色体優性遺伝です。
 知能は冒されません。しかし、時に頭の中(脳室)に水がたまる(水頭症)ことがあり、その場合には、脳の容積が増えるために脳回が頭蓋骨を圧迫してレントゲンを撮ってみると、指で圧迫したような陰影(指圧痕)を見ることがあります。このまま放置しておくと脳の発達が障害されて、取り返しのつかないことになりますので、手遅れにならない早い時期に外科的に治療して脳の圧迫を取り除くことが必要です。
 これは、『原因別分類』(表2)では、『遺伝障害』「遺伝病」「常染色体優性遺伝病」に属しています。
 

17.軟骨形成不全症*   会員数7(0.7%) 「遺伝」

 この疾患は、「軟骨発育不全症」とか「胎児性軟骨発育不全」などと呼ばれるものです。古くは、「胎児性軟骨異栄養症」と呼ばれていましたが、栄養とは関係無いことが分かりこの名前は使われなくなりました。
 生まれる前に起った(先天性)手足(四肢)が短い(短縮型)身長が極端に小さい人(小人症)を代表する疾患です。
 遺伝病で、遺伝形式は常染色体性遺伝病です。症状は、手足(四肢)が胸と腹を含む胴体(体幹)に比べると短く、特に手足の中でも胴体に近い部分(近位節)の短縮が著るしいのが特徴です。さらに、おでこ(前額部)の出っ張る(突出)ために大きい頭、鼻の付け根が低い(鞍鼻)、下顎骨が飛び出して見える(突出)、手足の指は短く3つ又状の格好(3尖手)などがあります。骨盤は、前に傾いており、腰椎が前に向かっての弯曲が強く、脊椎管の狭窄症が高い率で合併しています。また、重い脊髄神経や馬尾神経の麻痺を起こすことがありますし、膝は内側を向いており(内反膝)、下腿部が内側を向いている(内反下腿)ことも多く認められます。
 知能や性の発達は正常は普通の人と同じです。
 レントゲン写真を撮ってみると、大腿骨の胴体から遠い部分(遠位骨端線)が逆
X字型をしたり、骨盤の腸骨翼の形成が悪い、大坐骨切痕が狭くなったり、椎体の前後径が短くなり前縁の凸の形をしたりしています。椎弓の根間距離は狭いのが特徴です。
 似たところがあるので、診断するために見分けなければならない病気には、ムコ多糖症、軟骨細胞柱形成異常がありまず。
 この病気の治療は対症的で、症状が出たら、矯正のために骨切り術を行ったり、推弓を切除することが必要になることがあります。最近、金属の棒とねじを使った『下肢の伸展術』を積極的に行うようになり、身長を伸ばすことに効果があります。
 これは、『原因別分類』(表2)では、『遺伝障害』「遺伝病」「常染色体優性遺伝病」に属します。
 

18.ラッセル・シルバー症候群 会員数3(0.3%) 「環境」

 「シルバー症候群」とも呼ばれるもので、低い身長と、体の左と右が同じ大きさでない(非対称)、小指(第X指)が短かくて小さい、性器の発育が遅れている、逆3角形の顔、などの症状を合併する疾患です。
 大部分は、健康な家族の中に突然に生まれ(孤発例)で、遺伝性はなく子宮で赤ちゃんの発育が何等かの原因で障害されたために起ったとされています。
 これは、『原因別分類』(表2)では、『胎児障害』「胎児病」「発育障害」に属します。
 

20.巨指症      会員数不明  「環境」

 指が異常に大きくなる状態を巨指と言います。
 神経線維腫を合併している場合もありますが、多くは原因が良く分かりません。この病気は、指の1本1本独立に障害されます。
 治療法は、肥大部の部分切除短縮術を行いますが、指の機能および指尖部の血行を障害しないように、長さと幅短縮ずるためには、数回にわたる手術が必要です。指の症状は発育とともに進行するので、治療が困難なことがあります。
 これは、『原因別分類』(表2)では、『胎児障害』「胎児病」「発育障害」に属し、『形による分類』(表3)では『過成長』に屈します。
 

21.くも氏      会員数不明  「環境」

 マルファン症候群に特徴的な指のことです。この疾患は、四肢が細長い意味のくも指、または、くも指症とも言われます。
 さらに、マルファン症候群について説明しますと、合併する症状としては、血管、眼の異常、家族性、結合織の異常があります。原因としては、常染色体性優性遺伝のものもありますが、単発例も多いとされています。
骨格系異常には、高い身長、細長い四肢と特に手足指が特徴的でず。脊椎側弯・後弯変形、長頭症、口蓋高位、漏斗胸、鳩胸ともに見られます。靱帯、関節包の弛緩により扁平足、反張膝など、関節過伸展性を示す事が多いとされています。
 これは、『原因別分類』(表2)では、『胎児障害』「胎芽病」「発生障害」に属し、『形による分類』(表3)では『過成長』に属します。
 

22.正中裂       会員数不明

 これは、顔面裂の中の顔面の真ん中に断裂を認めるものです。
 これは、『原因別分類』(表2)では、『胎児障害』「胎児病」「破壊」に属し、『羊膜裂傷続発症の分類』(表4)によれば、妊娠の3週頃できます。
 

 

あとがき

 父母の会が発足してから20年がたちました.
 その間、会員は「なんとか普通の子供のように
……」「少しでも見た目が良くなるように……」また「機能面を考えて…‥」等々、情報の少ない自分のまわりで、病院の先生の話と自分たち夫婦の夢と希望を折りまぜながら手術をしてきた会員も多いと思います。その中で手術に成功した人、先生は成功だと言っておられるが自分は成功だとは思えない。また、失敗だと思っている人など親子とも貴重な体験をしてきました。しかし反対に、現在は小さいので、もう少し大きくなって判断できるようになった時に、子供と相談して手術を考えた方が良いと思って手術をしていない会員もいます。
 このようなさまざまなケースを会員に知らせようと「手術に関する小冊子Nol」を1991年11月に発行しました。今回の小冊子は「Nol」以降のアンケートの追加と木田盈四郎先生(帝京大・教授)にお願いして編集して頂いた「親のための『先天異常』の解説」として、先天異常の基礎知識と症例の説明が分かりやすく掲載してあります。今後は手術も新しい方法や、バイオテクノロジーを使っての治療等、進歩が図られると思いますが、その進歩によって行なわれた手術や治療の情報をもとに、次号も発行していくつもりです。
最後にこの小冊子に書かれているように、父母の会の会員がいろんな思いで手術していることを医療現場の人にも知っていただき、手術の際のソフト面に活用していただければありがたいと思います。また、アンケートにご協力頂いた方々と木田先生にお礼を申し上げると共に、今後も手術に関する情報があれば療育チームにご連絡くださるようお願い致します。