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昔の話

　　　　　　　　　　　　　　　　みかん　

ここには昔　森があったのだ
通りすがり　僕は過去とつながる
口にしなければ　廃れてしまう過去　

ふうん

昔　コンビニはなかったって
昔　宅配便はなかったって
話したときのように
君は興味なさげに　声を返した

つるにつかまり　ターザンごっこ
顔中にかかった　くもの巣
栗の木揺らす　秋の木漏れ日
それらを鮮やかに脳裏に残したままで
驚くほどの早さで
森は裸になった

光の届かぬ場所があるがゆえの　想像力と
危険が見え隠れするがゆえの　冒険心は
見事剥がされ　掘り起こされ
黄土色に　心もとなさそうに広がった

そして　次々　家が建つ
夢のマイホーム
駐車スペースのコンクリートはやけに白く光り
プランターには　色とりどりの花が植えられた

遊び　おやつを食べた　あのあたりで
今は　眠ったり　ＴＶをみている人がいる

ここには昔　森があったのだ
知っている僕も　とうの昔に
この地を離れている

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