2006東北ツーリング
2006/09/24〜09/26
もう一度北海道に行こうと思っていたのだが、いくら暇な宿屋のオヤヂだといっても、連続でそう何日も休めるものでは無いし、天候や時期的なものも含めると諦めざるを得なかった。

近所の日帰りツーリングでお茶を濁していても、やはり走り足りない気がしていたから、何とか2泊分だけ暇を頂いて・・・・誰から?(^^;・・・・、東北を目指すことにした。


24日
前日に宿泊されたお客様に見送られて10時20分頃出発。←この行為だけでも充分不謹慎(汗)

遠くに出掛けるにしては出発が遅かったから、今日の宿泊予定地である秋田まで、そこそこの時間に辿りつくには高速を使うしかないということで、お気に入りの新潟までの海岸線は今回パス。

新潟から先は海岸沿いのR113とR345を快走して鶴岡まで、そこからはR7を淡々と北上する。
酒田市を過ぎた所で、鳥海ブルーラインに向かう。時間がおしていたとしても此処だけは外せない。

象潟に向けて下り掛けた所にあるパーキングから目にする鳥海山は、2200mを超える火山の独立峰だけあって、遠くから望む端正な容姿とは随分印象の異なる険しい表情を見せていた。登山家ならずとも魅力的な山には違いない。

退屈なR7を淡々と走って来た身にはタイトコーナーが連続するブルーラインはとても楽しくて、ついプアーなグリップ力のタイヤを忘れてしまうのだが、時々10数年ものであることを主張してくるから大事に至らなくて済む。

再びR7に戻り、本荘市を過ぎる頃は陽もすっかり傾いたから、R7を外れて日本海に沈む夕日を拝むことにした。

沈む夕日っていうのは何となく旅情を盛り上げるね(^^)。

秋田駅周辺では大いに迷ったものの、予約していたビジネスホテルには6時に到着。
17年前にRC30で東北をツーリングした時も、初日は秋田駅近くのビジネスホテルに宿泊したのだが、記憶の中の秋田駅周辺とは全く変っていて、一瞬ここが秋田なのかどうかも疑わしくなった程だ。

そう言えば自宅を出てから此処までだって、目にする町並みは東京は言うに及ばず、春に走った和歌山や四国の地方都市とも何ら変らない ”のっぺり” とした雰囲気になっていたのも気になるところだった。
其処だけを見れば、それは他の文化を感じ取ったり触れたりするという旅の趣を少なからず殺いでいる気がするのだが、住民にすればヨケーなお世話ってことなのだろう。

ビジネスホテルにしては珍しく温泉があってマッタリと過ごした後は、併設されている居酒屋で夕食を摂った。
例によって昼飯抜きだったから、海の幸とナマチュー1杯はとても美味しく頂けた。
お腹を満たした後は目覚まし時計を5時にセットしたのまでは覚えているが、疲労に加えからっきし弱いアルコールの乱入もあってあえなく爆睡。

今日の走行距離:516Km

25日
目覚まし時計の世話になるまでも無く、4時40分には目が覚めた。軽くストレッチし、自販機コーナーに缶コーヒーを買いに行くと、疲れはすっかり取れていることに気付く。
ホテルは朝食付きだったのだが、外は明るくなっているのにとても7時まで待つことなんてできない。
それでも天気予報を見たり支度を整えていると、会計を済ませてMCを引っ張り出す頃には6時を過ぎていた。

今日は竜飛岬を周ってから南下する予定。勿論何処まで南下出来るか皆目分からない。

早朝の秋田市内は空いているが、R7の車の流れはバカみたいに速い。朝っぱらから皆気合が入っていて微笑ましい・・・ジョーダン。

R7から左折して、バッチリ整備されたR101を寒風山に向かう。
この辺りも趣とは無縁のノッペリとした風景に変っていたから、前方に見覚えのある本山や寒風山が、辛うじて此処は秋田の男鹿半島なんだと理解させてくれる。

寒風山までの登りは以前と少しも変っていなかったし、展望台から見える景色もそのままだったから、郷愁に浸ることが出来たのが救いだった。

寒風山から八郎潟干拓地を展望する。


寒風山の西側に下ると、此処が秋田だと実感出来る風景があり、そして数百キロ走ってきたのは、例えばこういう伝統を肌で感じたかったからなんだと納得した。

それぞれの土地の文化には成り立ちの必然がある筈だし、その理由について正しい理解に至らないまでも、少なくとも違いだけは尊重出来るから、それが全国統一規格の都市になりつつある現状は、その土地の伝統や文化とは何?という視点で見た時に、捉えどころが無くなってしまうのだ。
勿論自分の住む白馬村も同じ傾向だし、東京だって今や国籍不明都市になってしまったのでは?(^^)。

・・・ってなことを思いながら小言ヂヂーが走っていると、県道54号の意味有り気な曲がり具合からも推察出来る、多分かつては八郎潟の沿岸だっただろう若美町は趣のある町並みを形成していた。
そして何とも特徴的なカーブが連続する此処は、忘れもしない17年前に走った道そのものだった。

風景は完全に忘れていても、道の狭さや曲がり具合だけはハッキリ覚えているなんて、自分はかつてのツーリングで一体何を見てきたのだろうと思う。

R7に合流後、能代市からR101を北上する。
交通量の少ない快適な海岸沿いの道は、純粋にモーターサイクルライディングの爽快感を満喫できる。寒風山周辺でルート選択を誤ってロスした時間を少しは取り戻せたかもしれないが、深浦町の不老不死温泉に立ち寄った時点で、今日の通過目標だった竜飛岬は断念することにした。

不老不死温泉。左上の建物が日帰り客用お風呂。本当は9月上旬に友人達と此処を訪れる予定だったのだが、仕事柄ドタキャンしてしまった。その友人から羨ましがらせの写真付きメールが届いたものだから、ここは是非見ておきたいポイントだったのだ。

実際名前のとおり、この温泉に2〜3泊してマッタリ過ごせたら、寿命は数年延びるのではないかと思ってしまったが、走り命のヴァカオヤヂは温泉に入ることも無く、そそくさとそこを後にしたのだった・・・チャンチャン。

鯵ヶ沢で右折し、岩木山を右回りに周って弘前市から黒石市を通り、R394からR103と八甲田周辺の快適なワインディングを楽しんでから、お決まりの奥入瀬渓流/十和田湖を通過して樹海ラインから小坂町に下る。

十和田湖では有名な(笑)乙女の像を見ようと向かったのだが、休屋に進入すると、まるで砂糖にたかる蟻のような土産屋だか宿屋だかの執拗な客引き攻撃にウンザリして引き返してしまった。商魂逞しいのにも程がある・・プンプン。


樹海ラインを下っていたら、車が木に登ろうとしている珍しい光景に出くわした。

あまりにも珍しいので、一旦通り過ぎてしまったものの、乗員の安否を確かめる為に再び引き返して車内の様子を窺ったのだが、幸い無事だったか救助されたかで人は乗っていなかった。いずれにしても思いっきり目は覚めたと思う(笑)。
車の後方に見える盛土の疵から察するに、急な上り坂にもかかわらず相当な勢いで突っ込んだものと思われる。秋田の人も青森の人も飛ばすからな〜(・・;。

こんな車に向かってこられたらMCなんてひとたまりも無いが、対四輪の恐い場面は今度のツーリングでも何回かあって、ボーっとしていると痛い目に逢うから、やはり終始緊張状態が続く。

小坂町からは退屈でのっぺりとした町並みが続くR282を南下し、鹿角市からR341に入り、アスピーテラインを峠まで往復してから再びR341を南下する。


アスピーテラインのパーキングで中高年のご婦人にシャッターを押してもらう。ニヤついているのはそのご婦人がとても愉快な方だったからで、走り過ぎて気がふれたからでは無い。

玉川温泉の手前にある一寸した峠は、かつてに比べて随分走り易く改良されていたから、そこから見えた絶景が何処だったのかも分からないまま通り過ぎてしまった。
峠を下ると17年前には無かった景色が視界に入ってきて、それが玉川ダムで出来た宝仙湖に因るものだということを知った。
湖は渇水していて、水没した集落の一部が露出していた。

向こう岸の直下には水没前に耕地整理されただろう整然とした田んぼが見えるし、また手前にも田んぼだった形跡がある。
こうして見るとダム建設の是非や理屈はともかく、それが環境に壊滅的な打撃を与えることだけは確かな様だ。その事実にしばし呆然と見入ってしまった。


田沢湖近辺でオドメータは90000Kmに達した。偶然にも区切りの距離は東北ツーリングが多い。

田沢湖はちょっと寄っただけで南下を続ける。
角館からは大曲市/横手市/とR13を南下するのだが、やはりのっぺりとした街並みが続いているから、今東北をツーリングしているのかさえ疑わしくなって、時々現れる標識を見て納得する始末。

湯沢市にさしかかる頃には既に時刻は5時を過ぎていたから、今夜の宿を確保しなければならない。
小さな温泉地や小規模の宿だと、この時刻に飛び込みで宿泊させてくれる宿は少ないだろうから、なるべく大きな宿のありそうなな温泉地を物色していて、その一つに湯沢温泉があったのだが、行ってみるとどうも小規模で寂しそう。

たまたま湯沢温泉を散歩?していた年配の方に温泉を尋ねたら小安峡温泉を薦めてくれた(笑)ので、迷わずR394をそちらに向かった。

時刻も時刻だけに焦っていたし、次第に山深く寂しくなる気配に、「あのお爺さんの言うことを信じて大丈夫だったのだろうか?」と疑い始めた時、まさにお爺さんが言っていた通り「ここから25Km位先」にはたして小安峡温泉はあった。

国道沿いにある 旅館多郎兵衛 はそのホスピタリティーはもとより食事にしても、これ以上は無理だろうと思われる「郷土色豊か」を形にして出してくれたから、仲居さんの親切といい久々にメリハリの効いた旅情をカマされて、迂闊にも涙がチョチョ切れそうになってしまった。
華美でなく質素でなく、伝統の醸し出す風格はハードソフト両面でモーターサイクリストを癒してくれたのだった。

例によって快適な温泉でマッタリした後は敢無く爆睡。

今日の走行距離:615Km

26日
5時には目覚め、付近を軽く散歩した後朝風呂に浸かる。
至福の時間はもっとゆっくり味わいたいのだが、生憎天気は下り坂に向かう予報だったから、7時30分からの朝食前にはMCへの荷づくろいを既に済ませていて、夕食同様郷土色豊かな朝食をサクサク(^^)頂くと、アタフタと出発した。

昨日成り行きでR398に進路をとったとは言え、天気次第ではまだ走ったことの無いこのルートを神室山地を越えて古川市まで行き、その後R374を西に戻ろうと考えていたのだが、東の空は完全に雨模様だったから、R398を少し戻った所にある”大噴湯”を橋の上から見学した後、左折して県道51号線を木地山高原から雄勝町方面に向かった。


皆瀬川に掛かる橋の上から小安峡と大噴湯を眺める。
高さは相当あって目が眩みそうだが、紅葉が始まるとその絶景は想像するに難くない。仲居さんがしきりに川底まで降りるように勧めてくれたのも理解できる。付近には泥湯や地熱発電所など見所がいっぱいあることを知ったから、次回は此処に2泊することに決めた。

県道51号線は思いがけず抜群に快適なワインディングだったから、殆ど終わり掛けたフロントタイヤのことも忘れて、久々に緊張が高まった状態で数キロを楽しんだ(^^)。

雄勝町からは昨日に引き続きR13を淡々と南下する。
再びのっぺりとした風景が続いて流石に退屈してきた頃、金山町辺りでMCが事故っていた。10台程のマスツーリングで全員ツナギ姿の走り屋の集団と見受けられたが、現場の様子から事故は深刻なものである可能性が高かった。他人事ではないから、改めて気を引き締めて走る。

このまま山形までR13を南下するのもナンカ(^^)かったるいので、新庄市からはR458を寒河江に向かった。
大蔵村から20Km近くは、殆ど車の通らないMCにとっては快適な道だったから、気分は当然絶好調。
ところが、肘折温泉から先は急に狭くなって、車一台が辛うじて通れる程の幅しか無くなってしまった。
それでも傷んではいるものの舗装はされているし、この程度なら四国でも経験しているから別に驚くには値しないし、暫く走ればその内又広くなるだろうとたかをくくっていたのだが、ついに舗装は終わり砕石が敷かれた未舗装に変ってしまった。

漸く「引き返そうか」と弱気の虫が頭をもたげたのだが、大蔵村からはもうかれこれ30Km近く走っている筈だから今更引き返せないし、国道ともあろう道がそうそう何キロも未舗装である筈は無いと、勝手に判断して先に進むことにした。ところが期待は完全に裏切られ、延々20Km以上に渡って未舗装道路を走るハメになったのだ。

酷道国道458号線。スーパースポーツ泣かせのグラベルロードは、オフローダー達にとっては嬉しくて涙がチョチョ切れるに違いない。但しこの道を楽しめるのは精々250ccクラスまでだろう。


自分にアベレージ15Km前後の極低速走行を強いたのは、終わりかけのフロントタイヤが何時バーストするか分からないという不安からで、案の定帰宅後に調べたら無数の切り傷が付いていた。

タイヤさえ山が残っていればそれ程低速で走ることもないのだろうが、それにしても急な下りのタイトコーナーではスロットルを戻すだけで尻を振るから、インジェクションの荒っぽいデジタル制御に閉口して、つくづくキャブレターの方がイイナと思ってしまう。
しかし、このグラベルステージを無事走り切ったことで随分ライディングが上手になった??と思うし、お腹周りの脂も燃焼したみたいだった(^^)。

途中の工事箇所では作業中のトラックが道を塞いでいて、精一杯避けてはくれたものの、片側は足の付けない深い土側溝になっている狭い隙間を通過した時は、今回のツーリングで一番スリリングかつエキサイティングな場面だったと思う。
誘導してくれた作業員からも「おおー」という声が漏れた位だから、多分通り抜けは無理だと思っていたのだろう。ドジれば惨事間違い無し(・・;。
ほうほうの体で寒河江市に辿り着くと舗装道路の有り難味が身に沁みる。

このルート選択のミスはちゃんとしたマップを持っていなかったからで、高速道路で貰った地図では限界があることを身を持って理解した。
後でちゃんとしたマップを見たら ”悪路” と明記されていた。

寒河江からはR287を米沢、R121を会津坂下、R252を十日町、R117を長野、県道31(オリンピック道路)を白馬までと、いつものルート。

田子倉ダムのトンネルを抜けると、西の空の様子からして既に覚悟は出来ている雨が落ちて来た。
レインウエアーを着て走り始めると、堀之内町辺りから雨は激しさを増し、ドシャ降りに近い状態が白馬まで続いた。
休憩無しで約5時間を走り6時前には帰宅出来た。

今日の走行距離:565Km
総走行距離1696Km
ガソリン:82.7L


タバコを止めてからのツーリングは、休憩時間を如何に過ごそうかという一抹の不安があったのだが、案ずるより休むが易し(^^)で、本当に疲れてきた時しか休まないから全く問題は無かった。
今回もそうだったけれど写真を撮るのとトイレ以外は給油の時もMCに跨ったままだから、疲れが理由で休憩することは無かったと言う訳。

もっと言えばMCに跨っている時が正常で、降りている時は情緒不安定になる位なもので、以前時々(2時間位)休憩を摂っていたのは、ハイライトマイルド2本分のニコチンを補給する為だったことが明らかになった(^^)。勿論グループツーリングではそんなことは出来ないが・・・・。


通り掛る町のいづれもが、何をしてのっぺりとした雰囲気を醸し出しているのかは、公共施設の意匠はもとより全国チェーンで展開しているコンビニや量販店等に因るものであるのは明白なのだが、一方で主要道路を外せば、やはり風情のある街並みが残されていたのが旅をする者にとっては救いだった。

また、BMWの御威光にはつくづく感心した東北ツーリングでもあった。
宿でも、ちょっとした観光スポットでも、「おおービーエムダブリュだ」とか「ベーエムベーだ!」とか「サンビャクマン位するんですか?」とか「ナンキロデル?・・・・」とか、この時期旅行している中高年の人達の、ご婦人も含めてBMWモーターサイクルに対する関心の高さには少々驚いてしまった。

勿論悪い気はしないが、未だに外車神話だか崇拝の意識が日本人には残っているらしいことを知って、なんだか複雑な心境になった。
彼らの夢を壊すような、「本当は60マンエンも出せばけっこう良いBMW買えますよ」などと余計なことは言わなかったが、本気で数百万円もする乗り物だと思っているようだった。

今度のツーリングで9万キロ超えて完全に吹っ切れてしまったから、いよいよこれからSで色んな遊びが出来ると思う。