2008 北海道夏至ツーリング
06/14〜06/21

北海道ツーリングを始めてからそれこそアッと言う間に20年が経ってしまった。
初めて訪れた時のMCがRC30だったことや、また結果的にRC30が様々な意味で自分の人生に深く関わっていて、このMC抜きで人生を語る訳にはいかないことから、20年目には絶対にRC30で訪問しようと決めていた。

旅仕様にする為に小改造を加えたRC30は決して贔屓目では無く、20年間に経験したどのMCよりも快適なツーリングを提供してくれ、その結果出入り8日間の走行距離は3400Kmと過去最長になった。

20年前とちっとも変わらないRC30に乗る自分は随分変わってしまったし、同様に夏至を絡めてのツーリングは毎年同じようなルートを辿っていたから、図らずも20年の間北海道を定点観測していたようなもので、初回に較べるといろんな意味でその変化には驚く。





6月14日
楽しいツーリングを控えていると興奮して眠れない、今年も例年通り睡眠は不十分。
3:30AM起床、4:15AM出発。
二転三転する予報とは違い、幸い覚悟していた雨は降らず、ドライのR148を糸魚川まで順調に走り、R8の柏崎からはいつもの海岸線を北上して新潟港に向かう。

今年はRC30にもR1100Sから移植したナビを付けており、走り慣れた道でも残りの距離と到着予想時刻が表示されているから安心して走れる。

R402が途中工事中で迂回させられたものの8:30にはターミナル到着、乗船手続きを済ませた後出光のGSに向かった。例年使っていて感じの良かったGS(シェ留)では経営者が変わったらしく、昨年実に不愉快な思いをさせられたからもう2度と利用はしない。

給油の後、MCを綺麗にして荷物を整えていると、突然めまいに襲われた。体が意思とは無関係に揺れRC30も揺れているように感じる。
脳に異変が起きたに違いないと思うと、情けないことに激しい不安に襲われると同時に、フェリー乗船を前にして「北海道ツーリング断念か?」という文字が脳裏に浮かぶ。

なかなかめまいが治まらずにいるとGSの人に「今地震ありませんでした?」と訊ねられ、ん?・・・(^^;。安堵すると同時に逆に「津波は?」と訊ねると、テレビのニュース速報では東北が震度6、新潟が震度3で津波の心配は無いと言っているみたいで一安心。

近くのコンビニで朝食を食べ、フェリーターミナルに向かうと間もなく乗船が始まった。
昨年までは何人かと一緒だったのだが、今年は一人旅。船室も偶然貸切で寂しいような嬉しいような(^^)



今日の走行距離:227Km

6月15日

昨日の地震で甚大な被害を被った方々のことを思うと、罪悪感みたいな感情に支配されて暢気にツーリングなんかする気分にはなれなかったのだが、さはさりながらどうすることも出来ない以上ひとまず忘れることにした。

予報だと今日の北海道は全域雨だったから、レインウエア着用の心積もりでいたものの、定刻の4:30小樽港に接岸した時にはまだ降り出してはいなかったし、向かうべき北の空は明るかった。こういう状況が一番不安定な心境にさせる(^^)。

4:45下船。勿論レインウエアは着用せず。

例によってR231を北上していると案の定石狩を過ぎた辺りで降り出して来た。
今日の予定は厚田村から内陸に入り、沼田ダムを通過するルートで北上し、美深から歌登町⇒知駒峠へと向かうワインディングてんこ盛りコースだったのだが、進行方向右手は絶望的な暗雲に覆われていたから、このまま海岸線を北上することにした。

レインウエアを着用してからの雨は路面を湿らす程度でしか無く、浜益村の手前では完全に止んでしまった。しかも左手の日本海上空は次第に青空が占める部分が広がっていて、どうやら雨の心配は無さそうだ。
内陸はまだ怪しい雲に覆われてはいるものの、この分だと苫前から霧立⇒朱鞠内湖⇒美深の約100Kmに及ぶワインディングランを楽しめるかもしれない。パーキングでレインウエアを脱ぐ


苫前で右折し、R239を霧立峠に向かう頃にはウエットパッチが残るものの、爽やかな青空の下を「モーターサイクルライディングの醍醐味此処に極まれり」ってなもんで心いくまで満喫してしまった。

霧立峠パーキングは休憩の間クルマ一台も通らないと言う静寂に包まれていた。
バンク角が深いRC30は路面のうねりを気にせずに走れるから、余計な神経を使わずに済む。


この雰囲気の中を何の気兼ねも無く走れることを、「至福の時間」と呼ぶ以外に適当な言葉が見つからない。

ワインディングを満喫して美深到着は9:50。
小樽から303Km走っているので此処で給油。12.8L入ったので燃費は23.6Km/Lということになる。今後同じ様なペースで走ると、公称18L有効16.5Lの燃料タンクを持つRC30の航続距離は約380Km。

#49⇒#120と道々を北上し中頓別から知駒峠を越え、#84をクッチャロ湖方面に向かう。
知駒峠のワインディングはコーナリングを満喫できるのと同時にその眺望の良さで、数あるワインディングロードの中でも5本の指に入ると思う。次回も道北に来たら此処は絶対に外せない。

#84町民天文台の手前を左折、浅茅野でR238に合流して猿払公園道の駅で昼食にすることにした。此処では藤原氏お薦めのホタテカレーをいただくつもり。

大型バスが何台も駐車していて、入り口にはおびただしい数の歓迎看板が並び、堂内は団体客でごった返していたから、よっぽど「パスしちゃおうか?」と思ったものの、申し訳程度に空けてあった一般席に案内されたので、迷わずホタテ10コ入りのカレーを注文してしまった。1050円。

団体専用的店構えや規模とシステムからは想像し難い味に、妙な感動を覚える初日の昼食だった。
勿論美味しかったのだが、次回も寄るとしたらホタテは6コ入りにしようと思う。


定番の最北端でRC30と20年目の記念撮影をしているうちに空は再び怪しい雲行きになってきて、ポツポツと雨粒が落ちてきた。それでもこれまた定番の宗谷丘陵を外す訳にはいかなかったから、丘陵に駆け上がり北海道ならではの景色を堪能する。

稚内まではそれ程降られずに済んだものの、レインウエアは稚内のGSで着用した。幸か不幸かその後の道々106オロロンラインは降られずに走ることが出来た。

利尻富士も見えていたりして、20年前とちっとも変わらない(かつては道々909だった)極上の景色を、このまま通過するのは勿体無いので、Uターンしてカメラに収める。


利尻山とRC30

道路の両側はいつもこの時期エゾカンゾウやスカシユリが満開なのだが、今年は一輪も咲いていなかったから、稚咲内で左折してサロベツ原生花園に寄ってみることにした。

ここは20年振りの訪問。
時期が早過ぎたのか遅すぎたのか、ここでもめぼしい花にお目にはかかれなかった。
しかしレストハウスも駐車場も、勿論RC30も当時とちっとも変わっていなかったから、タイムスリップしたみたいで何だか妙な気分になってしまった。

手塩町を過ぎ、R232を南下する頃になるといよいよ本格的に降り始めた。後は一気に今日の宿泊地羽幌に向かうだけだ。
昨年もお世話になった「カフェ&宿吉里吉里」では、今年も藤原夫妻と同宿することになり、かなりセンチメンタルジャーニーな気分(^^)になっていたところ、楽しい時間を過ごすことが出来た。

藤原夫妻とR1100GS氏


楽しい気分で過ごせたのは勿論オーナー夫妻の心のこもった料理や心遣いがそうさせてくれたのは言うまでもないし、全て美味しく頂いたのは当然としても、ナスとホタテのグラタンは絶品だった。本当に勉強になります。

外はザーザー降っている。明日の覚悟も出来ている(^^)

今日の走行距離:725Km


6月16日
目覚めたのは4時、時折雨が屋根を打つ音が聴こえてくる。
夜中はけっこう激しく降っていて今日は雨を覚悟していたのに、外に出てみると小降りになった雨が淡い期待を抱かせる。
西の空は明るさを増しているが、太陽の出るべき内陸部は黒い雲に覆われていて暗い。完全に止むのはもう少し経ってからだろうし、内陸部の回復は更に遅れるだろう。

20thアニバーサリーのステッカーが張られたRC30で又北海道を走れるとは、20年前には夢にも思っていなかったから、雨に濡れて佇むRC30を眺めていると、万感の想いがこみ上げてきて涙腺が弛む。
ガラにもなくセンチになっている自分に気が付いて今度はテレる(^^)。
図らずも想い出を辿る旅が、また想いでとなって記憶の年輪を刻んでいくのだろう。旅は長い・・・・・・か。

夕食同様心のこもった朝食を頂き、「カフェ&宿吉里吉里」のライダーズ年鑑用の写真に収まって、9:00一足先に宿を後にする。

今日は羽幌⇒R239⇒霧立峠⇒士別⇒#61岩尾内湖⇒滝上町⇒道々(イノマタ氏お薦め)⇒遠軽⇒R333⇒丸瀬布⇒白滝⇒北見峠⇒愛別町⇒旭川⇒美瑛⇒旭岳温泉ロッジヌタプカウシペ泊の予定。

昨日も走った霧立峠へのR239は相変わらずファンキーなコーナリングを提供してくれるが、さすがにウエトパッチが散在していて昨日のようにはいかない。
しかし方向とすれば暗雲の下に向かっている訳だから、選べばドライ路面を走れるだけマシなのだ。贅沢を言ったらバチが当たると言うもの。

士別で給油し、#61岩尾内湖から上紋峠に差し掛かる頃になると道路は霧に覆われ始め、濃い部分では視程10m程度に落ちるから正真正銘の徐行を余儀なくされる。雨に変わるのも時間の問題だろう。この峠は押えておくべきワインディングの一つだったのだが楽しむと言う訳にはいかなかった。

主要都市を外れると北海道の道は国道/道々を問わず大抵ガラガラなのだが、特にこの#61はスゴイ(^^)。上紋峠を中心にした40Kmの間、一台のクルマ/MCに遇うことも無かった。しかも頂上付近は「コレデモカッ」って位立派に整備されている。
そういえばマップルに「通行車両皆無」って書いてあったような(^^;。

滝上からはいよいよ期待のイノマタ氏お薦めの道々137を遠軽に向かうつもりだったのだが、道々137と思しき道は事前に見せて頂いたビデオの様子とは微妙に違う上に、途中通行止めになっていて引き返すハメになった。

R273の滝上付近から、殆ど紋別に近い辺りまで何箇所か遠軽へのアプローチを探したのだがついに断念。そうこうしているうちに雨が降ってきたので、雨雲から逃れるようにR273を浮島方面に向かった。しばらく走ると雨が落ちてきたのでUターンして再びドライだった#61を上紋峠に向かうものの先程とは一転して此処も雨。

何が何でもレインウエアは着たくなかったが、右往左往するのにも疲れてついに観念した(^^)。
再びR273を浮島方面に向かうと、今度は気持ち良いくらい景気良く降っている。寒さに震えながら浮島トンネルを抜けると雨は小降りになっていて、上川町で紋別道路に乗る頃には一転暑い位の気温になった。非常駐車帯でレインウエアを脱ぎ、愛別で降りて旭山動物園に向かう。


これが有名なシロクマ。初めて見るシロクマは想像を超える巨体だった(・・;。

平日にもかかわらず旭山動物園は賑わっていた。その理由は行って見て納得できた。

とても一時間やそこらでは観たうちに入らないから、今度はじっくり時間を掛けて動物達を観察したい(観察される?^^)と思った。
ちなみに両手に持っているのは、通称?ガチャガチャと呼ばれる自動販売機で買った動物のフィギア。300円とは思えない作りの良さは勿論、入園料も800円とその内容からするとベラボーに安いのではないかと思う。
フィギアをバッグに押し込んで動物園を後にする。

美瑛が観光地化されたとは言え北海道、それも旭川に来た以上やはりその景色は観ておきたいと思うから、いつもの丘に向かった。

多分このセブンスターの木も20年前はこんなに大きくは無かったと思う。勿論舗装なんかされてはいなかった。

「観光地化」という表現が所謂ネガティブな意味で使われるようになったのは、いつ頃からかは定かではないが、そう呼ばれるようになった地域が健全な?(^^)観光地としての環境を保っている例をあまり知らない。此処に来るとついそんなことを考えてしまう。
エンジンで言えば、パワーを求めるあまり、大抵がオーバーレブ領域に入って不調になるか壊れるかの結末を迎えるのに似ているカモ?。

美瑛駅では日本一周途上の甥(CB400SF12万キロ走行済み)が「オヂサンに逢いたい」と執拗にメール攻撃をカマして来るので、「そんなに言うんだったら逢ってやろうヂャン(^^)」と待ち合わせたのだが、暇なくせに約束の時間に遅れると言うオオバカ野郎を待っていると、ロッジの夕食までの段取りに支障が生ずるので、5分だけ待ってそこを後にした(^^)。きっと明日の朝はロッジに乱入してくることだろう。

忠別ダムに差し掛かると雲の様子から覚悟はしていたものの、路面は完全ウエットに変わり本格的に降り始めた。
ヌタプカウシペまでは後十数キロ残すだけだし、レインウエアを着るのも面倒くさいのでそのまま濡れることにした。
しかし標高が高くなるにしたがって冷たい雨が沁みこんできて、短時間にもかかわらず急激に体温が低下していくのが分かる。
土砂降りの雨の中を何時間も走れるレインウエアの偉大さを改めて知ることになった。

ビショビショになって辿り着くと今日もまた藤原御夫妻が迎えてくれた。風除け室で濡れて汚れたバッグやウエアを拭い、チェックイン。温泉に直行する。

この野趣溢れ過ぎてる温泉も溢れてる(^^)露天風呂(向こう側にもう一つ完全露天がある)はオーナーの作らしい。

冷えた体もそうだけど、長時間ライディングで緊張を強いられた神経に温泉は何よりのご馳走・・・・と思うのはやっぱり歳のせいか?。
身も心も温まり、ユルユルにホグレきってお風呂から上がると夕食が始まった。山菜を主にしたどちらかと言えば質素な食事だが、中○製レトルトを並べた一見豪華なものとは違って実に味わい深い。

藤原さんと今日一日の出来事やモロモロを語りながら美味しく頂いているとマーチンの音色が・・・・。玄関に出て今日からの同行者イトーさんを迎え入れる。
サッポロに飛ばされたイトーさんは仕事の関係か(^^)悪運の強さは人一倍みたいで雨には遭わなかったらしい。

イトーさん(右)を交えて歓談が続く。

甥からは案の定早朝乱入するとのイッポー的なメールが入っていたから、「8時半過ぎにしなさい」と返事はしたものの、多分7時位には押し掛けてくるのだろう。何しろ自分の都合最優先が徹底しているから実に笑える。

今日は雨に翻弄されたり動物園見学や美瑛の丘でマッタリした割には、けっこう距離を走っていて我ながら感心した。サスガに北海道。RC30は正真正銘の絶好調!。

今日の走行距離:438Km


6月17日

昨日と同様4時に目覚めると窓の外はガスに覆われている。旭岳に張り付いている場所だからガスはいつものことなのだろう。

それにしてもイトー氏は良く寝る。この状態が朝食の時間まで保たれるから、○いヤツ程云々とはよく言ったものだと思う(^^)。

朝食を頂いていると、社外品マフラーから吐き出されるインラインフォーの下品な音が聴こえてきた。
「案の定乱入して来たかッ・・・・自分の都合最優先主義者め(^^)」。本人曰く伯父さんと一緒に走りたいのと、写真を撮ってもらいたいらしい。

7時からの朝食はまだ始まったばかりだから、外で待つように言ってそそくさと食事を済ませ、身支度を整えて久々の「朝錬」に出掛けた。

旭岳ロープウエー乗り場にて  写真は”とろろのホムペ”より
甥伯父共に「北海道でヴァカヅラ晒していられて良かったネ」的ウルワシの図。

ヌタプカウシペまでのアプローチはそれなりのワインディングで楽しめるのだが、いざ鑑賞に堪えるバンク角で写ろうと思うとけっこうな速度が要求されるし、まだ路面も湿っている部分があるから、甥には「くれぐれも無理しないように」と、しつこい位注意して撮影ポイントに移動する。

で・・・伯父さんの優しい気遣いが溢れたフレーミングによって、本人フルバンクの気分をサポートしているあたりは身内ならでは。これがホントのフレーミングの右手の法則・・・・なんちゃって(^^;  写真は”とろろのホムペ”より

今日は昨年と殆ど同じルートで
旭岳温泉⇒富良野⇒麓郷⇒R38狩勝峠⇒鹿追⇒上士幌⇒然別湖⇒糠平湖⇒タウシュベツ橋梁⇒R273⇒芽登⇒#88置戸町⇒R242留辺蘂町⇒R242遠軽⇒#137紋別⇒R238⇒R238佐呂間 船長の家泊の予定。

朝錬でウオームアップが完了したところで甥を先に送り出し、いよいよイトー氏とのツーリングが始まる。
山は怪しい雲に覆われていたが、下るにつれて青空が広がってきた。
上富良野で斜線道路に入り、途中から麓郷へ続くワインディングを満喫する。完成してから間もないと思われる快適な道だ。

ドラマ「北の国から」で使われた”五郎の石の家”に通じる入り口で。
オヂサンとは言え、ちょこっと野次馬根性で寄ってはみたのだが、本体まで4〜500m歩くとなると「MCに跨っていたほうがマシ」ってんで見学は取り止め(^^)先を急ぐ。

R38を淡々と走り狩勝峠を越え新得で昼食にする。変哲の無い国道端のラーメン店だったのだが実に美味しかった。
鹿追から然別湖糠平湖へと通じる#85は、本州のワインディングを走っている様な気分になれる数少ない道。

出発してからず〜っとそうなのだが、イトーマー珍は6発空冷のちょーボロイエンジン(^^)を積んでいるにもかかわらず、既にパイロットロード2を端っこまで使い切っている最新鋭(^−^)V4ロードゴーイングレーサーに、背後霊のようにくっ付いて離れない。「いったいドーなってんですか」ってなモンで神経磨り減ること。

そんな感じで神経もタイヤもボロボロになって糠平温泉に辿り着き、観光案内所で楽しみにしていたタウシュベツ橋梁の様子を伺うと、橋は露出しているものの進入道路には「バラスが撒かれたばかりだからこのバイクでは絶対無理!」とのことで今年も断念。

R273を一旦南下して芽登から#88を再び北上する。
置戸町⇒R242留辺蘂町と殆どガラガラの国道を北上し、遠軽では昨日断念したイノマタ氏お薦めの道を走るべく#137に進路をとり暫く走ってはみたものの、どうやら此処も微妙に違う雰囲気(;;)。諦めて湧別方面に右折する。
少々間違えたところで何処もかしこも北海道基準の道だから楽しめることには変わりは無い。背後霊に煽られてそれなりの速度で楽しんでいるうちに湧別で再びR242に合流した。

イトーさんが「タンク空」とのことで直近のGSに入る。給油が終わるとスタンドの方に「今そこでネズミ捕りやってる」と教えられ、「ドコドコ?」ってな感じでノロノロ走り出すと、40Km/h制限の広い国道で文字通りシコシコと善良な市民を罠にはめようとしていた。きっといちゃモンをつけてはキップばら撒いているのだろう。そんな暇があるなら未解決事件の解決や本当の悪人を捕まえて欲しいものです。

しかし・・・・現実問題として、教えられて注意していても取り締まり現場は分りにくかっったから、もしイトーさんが「タンク空」と言ってくれなければ軽く赤キップのプレゼント喰らうところだった。背後霊どころか守護霊ヂャン。
その後はちょー大人しく走ったので、その意味ではネズミ捕りもあながち無駄では無いのかも知れない・・・・・ナンノコッチャ(^^)。R238を常呂に向けて走り、途中でキムアネップ岬方面に左折する。


キムアネップ岬は昨年同様今年も快晴。
手前が背後霊モトマー珍CBX。良く見るとFCRが6コも並んでいる(・・;

随分走った気がする、そして船長の家まではあとわずか、いつものようにマシンも身も心もクールダウンさせながら宿に向かう。
駐車場に着き、今日もまた一日を楽しく無事過ごせたことをRC30と神に感謝してキーを抜く。

お風呂の後は待望の夕食。

タラバ半身、毛蟹、かにしゃぶ、カニの刺身、カニチャーハン(カニ>ご飯)その他海鮮の饗宴。
デザートのチーズケーキまで並んでいて、広いテーブルは二人分の料理で満杯。見ただけで戦意喪失しそうです。
ケーキは隣の席のオバサンご婦人に食べて頂いた。

はちきれそうな腹をさすりながら食堂を後にしたのは、これから2時間後か?走ることで疲れ、食べることで疲れたオヤヂ二人組みは、部屋に帰るとあえなく爆睡したのだった。

今日の走行距離;487Km

6月18日(水)

6時起床、空は薄曇だが天気予報では今日一日雨の心配は無さそう。
モーターサイクルライディングが常に緊張状態を強いられるのは当然としても、天気予報だけで一喜一憂出来るのも、日頃ノホホンと過ごしていて、ひったるんでしまった精神には良い刺激になる・・・・マッタク(^^)。


朝食とイトーさん

夕食並みの朝食を頂き、朝市では珍しく家族宛にお土産を送り8:30には出発した。
今朝は朝から暑く、停車するとジャケットの中は汗ばむ位だ。それでも雨よりはるかにマシ。

先ずは昨年は行けなかった能取岬に直行する。数年前までは能取湖方面からアプローチすると岬手前が未舗装の砂利道だったのだが、現在は立派なトンネルが整備されていて驚き。

RC30では此処に来たことは無かったから、今回は絶対に連れて来ようと思っていた。
幸いなことに快晴に恵まれて、「何の変哲も無い」と言ってしまえばそれまでの、この妙に心に沁みてくる風景にどっぷりと浸れるのも、元を質せばRC30のお陰なのだ。


こんな感じでいつまでも座っていたいのだが、先もあることだし後ろ髪を引かれる思いで・・・・・って既に髪無いし(^^;・・・・此処を後にした。


今日の予定ルートは、能取岬⇒R238網走⇒小清水⇒斜里⇒標津⇒R335羅臼⇒R334知床峠⇒ウトロ⇒斜里⇒清里⇒神の子池⇒裏摩周展望台⇒緑⇒川湯温泉⇒藻琴山⇒秘密の農道⇒美幌峠⇒津別峠 ホテルフォレスター泊

昨年は網走を過ぎる頃マシンに違和感を覚え、藻琴駅前でタイヤが終わっていることを確認してから、その後のスケジュールが大幅に狂ってしまったのだが、今年はマシンもタイヤも絶好調で、ハードに関する不安は皆無。

パイロットロード2は公道を走る限り必要充分以上のグリップ力を持っているというのに、その耐摩耗性は予想していた以上に高い。
毎朝の点検でも磨耗した形跡が殆ど認められないから、ハンドリングの悪化も感じない。これは北海道のワインディングを気持ち良く楽しむ上で欠かせないし、その為に走りに来ていると言っても良い位だから、ツーリング中ハンドリングに変化が起きないのはとても有り難いと思う。

小清水原生花園も残念なことに花は咲いていなかったからそのまま通過し、R244の根北峠のワインディングを楽しんでサクサクと羅臼を目指す。斜里で給油した後は羅臼までは走りっぱなし。

マッカウス洞窟でひかり苔を見学した後、イトーさんお薦めのカニラーメンを食べに行く。さしずめむかえガニと言ったところか(^^;

ひかり苔。
光を反射しているだけらしいが、鮮やかな黄緑色に発光しているように見える。


これが「むかえガニ」(・ー・;

昨晩船長の家ではカニを食べ過ぎて気持ち悪くなったのだが(^^;、此処でぶっといタラバ半身が入ったラーメンを食べて、漸く気分爽快になった・・・・・・ん?。
なんだか体に良くないような食事の後、知床峠に向けて出発。

羅臼側から登る快晴に恵まれた知床横断道路は、やはりトップにランクされて然るべきワインディングだ。此処だけはのんびりと流す様な走りは勿体無いから、それなりに気合が入る。所謂スポーツライディングだ(^^)。
背後霊はマー珍は相変わらずピタリと張り付いている。


峠のパーキングにて、後方は羅臼岳
マー珍に煽られたお陰でポーズも硬い、サスガのPロード2も少し融けていた。

峠を下り知床五湖方面に右折し、知床五湖駐車場までの道を往復した後、斜里から清里の神の子池を目指す。

知床五湖に続く道。景色も良いが異様に暑いから気味が悪い。

この後一路神の子池に向かい、相変わらず神秘的な泉に暫し見惚れる。

しかし泉の倒木はいつ来ても一向に朽ちた様子を見せない。一体どの位前からこうして沈んでいるのだろう。


裏摩周の展望台に登ると専門家と思しきカメラマンが居たのでシャッターを押して頂いた。此処は午後は逆光になるので、午前中がお薦めとのこと。

一旦緑に引き返し、川湯温泉から藻琴山方面に右折し、いよいよ今日のエピローグを飾るに相応しい例のルートに突入した。
秘密の農道(勝手に呼んでいる^^)⇒美幌峠⇒津別峠は何度も走っているのに、それらを合わせた正確な距離は分からないが、多分約70Km以上はあると思う。中高低速コーナーテンコ盛りの道をタップリ楽しんで、今日の宿ホテルフォレスターに無事到着。

ホテルフォレスターは今年津別町の運営から民間に移譲(委譲?)された。
館内はロビーや食堂を中心に大幅に改装されていて、昨年までの良い意味での素人っぽさは無くなり、軽口が叩けなくなる様な慇懃な雰囲気に変わっていた。そして私達がこのホテル開業以某かの好感を抱いて毎年訪れているなんてことは、勿論新しい経営者にとっては知る由も無いのだろうが、ハードが変わるのは良しとしても、ソフトに馴染めるのはまた暫く通ってからになるだろうな。


すっかり変わってしまったロビー。以前も良かったけれど、これはこれで良いと思う。

昨年と変わらない快適な温泉に浸かり、汗と疲れを流した後はお待ちかねの夕食。
昼食にあれだけ食べてもまた腹が減っているのに驚く。MCライディングはやはりエネルギ使うのだろう。


食堂は公営の施設に共通する機能優先のそっけない雰囲気だった昨年までと比べ、和食料亭の趣を感じさせるものに変わっていた。料理も作り手の気持ちが伝わってくるようで、質量共に申し分ないものだった。

食後はロビーで例によって今日一日の反省や人生について(^^)語り合い、部屋に帰った後は速攻で爆睡。

マー珍もRC30も全く絶好調だった。そして今日もタイヤの減りの少なさに感動する(^^)。

今日の走行距離463Km

6月19日(木)

5時に目覚めると、相変わらず○いヤツは良く寝ている。
ホテルフォレスタには「くりんの里」との副題がついているので、そのくりん草を見学に出掛けた。ホテルからは道路を隔てて反対側を流れる川の端に咲いている。

こんな感じで文字通り川端一面、それも川に沿って延々と咲いている。
人手を掛けて花を増やし現在の景観にしたということらしいが、見事という他は無い。散歩道も整備されていて、こういう森の中を歩くと本当にリフレッシュする。

宿に帰り貸切の露天風呂を楽しみ、イトーさんを起こして食堂に行く。
朝食も料亭並(知りませんが^^)のクオリティーで、経営は変わっても建物食事応対等々、北海道で知る限りやはり一番バランスがとれた宿だと思うし、今回も満足度は高かった。

しかし一方で、初日の吉里吉里やヌタプカウシペは、こうした普通のホテルが「良い」と思われる為に備えるべきバランスとは別の魅力があることもまた事実なのだ。でなければアルピーヌなんかひとたまりもない(^^;。
手前味噌だけど、やはり旅行は宿屋のオヤヂにとって絶対欠かせない勉強の場だと思う。


ホテル前で記念撮影。今日も暑くなりそうだ。

今日のルート
津別峠⇒川湯⇒摩周湖第三/第一展望台⇒弟子屈⇒R243多和平⇒開陽台⇒R272中チャンベツ(イトーさんとお別れ)⇒厚岸町⇒根室浜中釧路線(北太平洋シーサイドライン)⇒落石駅⇒Uターン⇒霧多布 宿房樺のん。

いよいよ今日で楽しく且つエキサイティングだったイトーさんとのツーリングはお仕舞い。彼は明日からまたドクターヘリの勤務に戻り、自分も日常へと近づいて行く。
別れの寂しさもさることながら、終日危険と隣り合わせの時間を過ごしていると、否応無く生きてきたことと、今生きていることの意味と対峙せざるを得ない。そういうシリアスな問題を友は暫し忘れさせてもくれた。

津別峠を越え、川湯温泉で給油すると、それなりに楽しんでいると言うのに、RC30は23Km/Lを上回る燃費を記録している。かつてCBR250RRが25Km/L、SRXが28Km/Lだったことを考えると、絶対的数値は劣るものの、走りっぷりは3倍以上も違う(^^)。
もしMC、それもスーパースポーツに乗ることの意味の大部分が、加速/減速/コーナリングを楽しむ行為だとすれば、その全てが過不足なく意思に直結しているという点において、RC30は全くストレスの無いツーリングを提供してくれている。それを考えるとなんと小食なことか(^^)。

そんな訳で今日のコースの数少ないワインディングである摩周湖第三/第一展望台に登る道も、ぴったり張り付いている背後霊はかなり気になるものの(^^;心底満喫出来る。


・・・・で、これが背後霊による写真。
普通の人間ならアウのカメラ付きケータイしかもストラップ無し(を走行中に取り出し、あろーことかグローブまで取って、こんなアングルから撮れるとは思えませんが(汗)。


多和平展望台へのアプローチ。  写真はイトーさん


多和平も又北海、それも道東に特徴的な開放感溢れる展望を提供してくれる。


展望台で景色に見入るも背中に哀愁が漂っていると感じるのは自分だけか?(^−^)
なんだか忙しないオヤヂ達は早々に此処を後にして次の展望台開陽台に向かった。


開陽台のアプローチにはこんな可憐な花が咲いていた。マヂで和む。


開陽台から中標津方面に下る道は、定番の撮影ポイント。  photo by イトー

昼食は7〜8年前に寄って美味しかった記憶のある”開陽館”で食べた。此処は今までに何度か立ち寄ったものの、その都度休業していたから、今回も期待していなかったのだが今日はやっていた。

店の雰囲気がかつてより明るく感じたのは駐車場横の防風林?が切り倒されていたからか?、そしてカレーとミニラーメンのセットはかつての味に近かったか?(^^)・・・・多分。




中標津からはR272を淡々と南下し


標茶町の中チャンベツでついにイトーさんとお別れ。

時刻は既に1時半を過ぎているというのに、彼はこれからサッポロまで帰らなくてはならない。
いくら空いている北海道とは言え常識的には一日掛りの距離だ。無事の帰宅と散々煽ってくれたボ○イ(^^)空冷6っ発が壊れないことを祈るのは勿論だが、何も喋らない一日が珍しくないソロと違い、4日間もお付き合いして頂き、楽しい会話とドキドキするツーリングが出来たことを感謝して進路を東にとった。

厚岸からは家内と訪れて以来20年振りの道々142を根室に向けて走る。
道路のコンディションはかつてに比べ完璧に整備されていて走り易いし、何より太平洋沿岸の切り立った断崖が見え隠れして、変化に富んだ絶景が楽しめるから、全く退屈しない。

あやめが原に立ち寄るも

まだ2〜3しか開花していなかった

今日の宿、霧多布にある”宿房樺のん”は道々142の端にあり、容易に確認出来た。スルーして根室に向かう。
霧多布岬を往復し、初田牛を過ぎると”北太平洋シーサイドライン”と名付けられている道々142は、海岸沿いの風景から一転して原生林の中を走る道に変わり、森林浴気分が味わえる。

V4エンジンは快調で振動も無く、軽過ぎない車体は絶大な信頼感と共に神経質にならずに済むし、必要充分なパワーは車体を間髪入れずにレスポンスさせる。しかもあつらえた様なライディングポジションは、はっきり言ってR1100Sより遥かに疲労が少ない。そして座面が平で広いシートは長時間ライディングでもお尻が全く痛くならないことも特筆出来る部分。
だから森林で視界が遮られ、森の中に掘られた溝の様な道を延々と走るようなシチュエーションでも実に楽しい。

時間さえ許せばこのまま根室半島を反時計回りに走って宿に向かうつもりだったのだが、怪しい雲行きとチェックインの時間を考慮すると、そろそろUターンをした方が賢明との判断をした。
しかし、今朝川湯温泉で給油して以来無給油だったから、トリップメータから推測するに、GSを見つけるまでは「引き返す訳にいかないな」と思った矢先、願っても無いタイミングでGSが現れた。


出来過ぎヂャネーカ?と思いつつガス補給し、JR落石駅前で記念写真を撮った後、今来た道を引き返す。


オロロンラインとはまた一味違う趣の北太平洋シーサイドライン


途中にはムツゴロウさんの住い?もある。


ビワセ展望台駐車場は霧タップの名に相応しく、往きとは一転して霧に覆われ始めていた。
既に5時は過ぎていたが宿は直ぐそこ。

5時20分”宿房樺のん”到着。
駐車場は一面砂利が浮いているので、MCを倒さないよう緊張するが、玄関を入るとこの宿を紹介してくれた友人の言葉どおり、オーナー夫妻のあったかい人柄に迎えられて一気に和む。

客室3定員8名・・・・多分・・・・の小さなログハウスの館内は、ファーストインプレッションの通り、小規模の宿の特徴?とも言える質素なハードを補って余りあるその人柄が、館内のそこかしこに具体的な形となって現れているのには、同業者としてとても勉強になったし、それより何より北海道最後の宿泊がさりげないホスピタリティーに満ちていて、その意味ではお腹より心の方が満腹になった気がした。


夕食は花咲ガニをメインとする海の幸。勿論牡蠣フライもあって皆美味しく頂きました。


今日の走行距離:394Km
はじめて400Kmに達しなかった(;ー;)

6月20日(金)

多分今日は一年で2番目に早い日の出を迎える日。それもこの付近では択捉に次ぐ日本では最も早い夜明けだ。
起床は5時。既に太陽は高く上がっている時刻だが、時々屋根を打つ雨音が聴こえてきて、窓の外は真っ白なガスに覆われている。
昨日の朝フォレスターで見た天気予報の通りだったし、今日は苫小牧まで終日雨を覚悟していたからそれほどブルーにはならない。

細やかな気遣いが伝わってくる美味しい朝食を頂き、ゆっくりと雨支度を整えて根室方面に向けて宿を後にする。


肌にまとわり付くような霧は時折酷く濃い部分があったりして、ただでさえ視界不良なのに、スクリーン同様シールドの内外に張り付いて殆どホワイトアウト状態にまでなるから、正真正銘の”徐行”を強いられる。正に霧タップの面目躍如と言ったところか?。

厚岸に近付く頃には雨は止み、霧も薄れてきた。
R44に合流すると怪しく曇ってはいるものの路面はドライに変わった。余程レインウエアを脱ごうと思ったのだが、寒さは変わらなかったので、もう暫くは着たまま走ることにした。

釧路で給油し、白糠から本別方面に右折すると一転して青空が広がり気温も急激に上昇した。
もう暑くてレインウエアはとても着ていられないから、歩道に乗り上げて雨支度を解く。
歩道に乗り上げたのはダンプカーが沢山走っていて危険を感じたからで、かつて何度も走ったことのあるこのR392を選んだのは、道の良さもさることながら、文字通り清々した気分で走れるその交通量の少なさからだった。

しかし静かだった道が今回はダンプカーが行き交い、砂埃が舞い、騒々しく何故か殺気立った雰囲気さえ感じる。
???と思いつつ暫く行くと、この騒ぎは高速道路建設に因るものらしいと言うことが分かった。
R392の両側は部分的であれかつての面影はすっかり失われ、豊かだった森が殺伐とした無機物に入れ替わっていた。

残念と言うよりむしろ無念という意味で言葉を失う。勿論この道路を万人が欲するのならヨシとしよう、しかし原油が高騰しガソリンが1L200円になろうかと言うこの時代、都市部の混雑を避ける目的で存在するのならいざしらず、殆ど車が走らない高速道路並みに整備された国道があるというのに、一体どんな人がエクストラコストを掛けてわざわざ自動車専用道路を使うと言うのだろう??。

折りしも洞爺湖では環境問題をテーマにしたサミットが行われるらしい。
日本国民の一人として、その仕事に最も敬意を払いたい首相や政府ではあるが、残念ながらこのR329沿いや全国で行われている同様の「過ぎたる」としか思えない環境破壊の現実を見る限り、F堕は勿論彼の取り巻き達のアタマの中には、環境の”か”の字も無いことを確信した。

サミット(笑)では環境を守り、地球温暖化防止を主な議題とするらしいのに、開催国のしかもその現場で、壊す必要の無い環境を破壊し続けているのは、例えブラックユーモアだとしても、マヂで「正気の沙汰ぢゃねーなっF堕ッ!」と激しく思ってしまうのだった。
そんな憤りがずっと続き、本別でピークを迎えた。
得体の知れない精神的疲労は無力感に因るものか?そしてそれはこうも人の深層にダメージを与えるものなのか?。

おおよそ生産性があるとは思えないモーターサイクルによるツーリングが、COを排出し環境を汚し、自分が支払った税金に見合うとは到底思えない完璧に整備維持された快適な道を走り、愉快な気分を満喫している一方で、環境問題を問うている自分との葛藤は、最近特に激しさを増しているような気がする。

本別から#134を士幌町に向けて走り始める頃には、再び普通の北海道の景観に包まれ、気分も次第に落ち着きを取り戻してきた。
R274の士幌⇔鹿追間は10Km以上はあろうかと思う直線で、北海道と言えどそうそう走る機会は無い長さだから久々に”直線”を楽しめた。

新得でRC30と自分への給油。
17日に此処を通過したときは、昼食でラーメン屋さんに寄ったのだが、今日は直ぐ近くにあるとんかつ屋さんに入る。

”わらじトンカツ定食”の大きさに驚き、ベザトール服用者だというのに、たっぷり中性脂肪を補給して(^^;狩勝峠に向かった。

RC30は良好な燃焼状態らしく、久々の高回転域は乾いた音を奏でているが、このワインディングでは脂肪の燃焼状態も良いみたいで、タプタプした脇腹ではそこに溜まったわらじトンカツの脂が燃えている様な気分になる(^−^;。

汗ばんだ体をゆっくりと冷やしつつ峠を下り、落合から占冠方面に左折する。この#136の脇も高速道路の工事が行われており、走っているのは殆ど関係車両といったところか?。

占冠でR237に合流した後は平取町に向けて南下する。
此処から先のR237を走るのは北海道に20年も通い続けているというのに今日が初めてで、本当はいつもの帰り道がそうだったように、富良野から夕張までのワインディングで北海道ツーリングを締めくくるつもりだった。

しかし、北海道に入り浸るようになって間もなく、「アイヌ民族の聖地がダム建設によって水没する」という話を聞いて、其処がどんな所なのか水没する前に訪れたいと思っていたのだが、限られた日程でそれは叶わなかった。

遅きに失した感は否めないものの、そういう訳で平取町にある二風谷ダムは、北海道を好んでツーリングしている身としては、その建設にまつわる諸々について少なからず関心があったし、水没した土地は彼ら民族にとって聖地であると言われている地籍だったから、そのアイヌの伝統文化先住性を蹂躙してまでも建設しなければならなかったダムが、いったいどんなものか一度見ておきたかったのだ。

其処に当時も今もどんな事情があり、どんな軋轢があったのか(あるのか)は、部外者には知る由も無いが、二風谷に近付くと川幅は土砂の堆積に因って広がっているだけではなく、元来が平に近い地形らしく、常識的にはこの平らさじゃ此処にダムを造ってもあまり意味無いんじゃないのかな?と思わせる風景が展開していた。

下るにつれ川幅は大量の土砂で更に広くなり、そのうちにダム湖らしき水面が現れたと思ったら直ぐに堤体も現れた。
この下にアイヌ民族の聖地が水没(土砂に埋没か?)していると思うと、やはり複雑な心境にならざるを得ない。そして問題のダム(先住民族の文化に敬意を払わず、軽視あるいは無視してまで造られたと思える点で)が一体どんな威容を誇っているのか興味津々だったのだが、それは高さ精々2〜30m位しか無く、とてもダムとは思えない低さで拍子抜けしてしまった。

それはむしろえん堤と呼ぶ方が合っているだろうし、これがアイヌ民族の先住性についての問題提起と、その差し止め訴訟にまで至ったダムとは到底思えないほど、素人目には少し大きめの砂防ダム程度にしか見えなかった。
そして土砂の堆積具合からすると、当初の建設趣旨にあっただろう本来のダムの機能は既に失っているようにも見えたし、早晩このダムが土砂で埋め尽くされるのは素人目にも明らかだったが、砂防ダムと割り切ればこれはこれで良いのかもしれない。

但し、そうなった後の治水や、先住民族の文化遺産や自然環境、建設に掛けたコストと引き換えに、このダムは流域住民にどんな恩恵をもたらしたのだろうと考えた時、否応無く長良川河口堰や諫早湾干拓事業を連想せずにはいられなかった。

北海道では沼田ダム等、砂防ダムと化したダムをいくつか知っているが、二風谷ダムはアイヌ民族の先住性を問う契機となり、国が彼らを先住民族として認めざるを得なかったという点で特別な存在だし、その意味ではあながち無駄な公共事業だったとは言えないのかも知れない。

トマム辺りで降りだした雨で着ていたレインウエアは此処で脱ぎ、#74を鵡川方面に右折する。
鵡川からはいつものとおり、北海道ツーリングの余韻に浸りながら秋田/新潟行きフェリーターミナルのある苫小牧東港に向けて走るが、東港には売っていないお土産のバターサンドを買うため一旦スルー。

無料の日高自動車道を使おうと厚真ICに行ったものの、既に普通の有料道路になっていたから、「昨年か一昨年までは無料だったのに」(^^)と、Uターンしてセコく急ぐ旅でもないしR235を苫小牧西港に向けて走る。

苫小牧市内のR36は相変わらず高速で流れている・・・・と言うか、皆さん殺気立っている様な走り方は今年も健在だ(^^;。
西港のフェリーターミナルで無事バターサンドをゲットし、東港に引き返す。


終わった・・・・今年も・・・・そして20年目も


シーズンオフとは言え定員16名の船室が貸切という事態は初めて経験するもので、それが何を暗示しているのか?、乗客の少なさ、あまりの静けさに喜んでばかりはいられないと思った。

最後に来て考えさせられたな。ありふれて何処にでもありそうなノッペリとした二風谷の町並は特にヘビーだったな。

今日の走行距離:462Km

6月21日(土)
目覚めてはまた眠りにつくといういつものパターンを繰り返しているうちに船は秋田港に接岸した。
昨日の予報とは違い秋田は快晴だ。ここ数日予報は良い方向に外れているから、このぶんだ新潟も長野も晴れる可能性が高いゾ。

快晴の秋田港。巡視艇が全速力で出航していった。

いつもは旅を反芻しながらツーリングのデータを整理するのが船の中の楽しみなのだが、今回は一人旅で話し相手もいないから、つい油断して気がつけば寝ている(^^;。
結局寝たり起きたりの怠惰な船旅に終始してしまったから、こんなことなら読みたいと思っていた文庫本の一冊位は持ってくるべきだったと反省しきり。でも荷物はなるべく少なくしたいスーパースポーツでは、そのプライオリティーは下位にならざるを得ないか。

船が新潟港に入港するといつもより大き目な寂寥感が襲ってきた。
20年前に比べ、精神はともかく身体のコンディションは明らかに劣化していて、それは例えば視力の低下となってライディングに影響を与えているし、反射神経だって鈍っている。にもかかわらず、相棒のRC30は当時と全く変わらないパフォーマンスを維持していて、その齟齬が次第に大きくなっていることを文字通り肌で感じたのと同時に、人生の旅の節目を迎えるということがあるのかもしれない

下船し、定番の日本海夕日ラインを南西に向かう。 5時を過ぎても陽はまだ高く、光が赤みを増すまでにはまだたっぷり時間はある。そう思うといろんな意味で気分は次第に明るくなってきた。この帰り道はいつ走っても気持ち良く楽しめる。
寺泊を過ぎた辺りで左折し、20年振りのR116を走ってみることにした。
そこに当時の面影は全く無く、拡幅されてとても走り易く整備されていたから、記憶の琴線に触れて感情を刺激されることも涙腺が弛むことも無かった(^^)。

寄り道したものの7時半に無事帰宅。と同時に、待っていたかのように雨が降りだした。なんてついているんだろう。
結局今度のツーリングは降られはしたものの、程よい量のスパイスみたいなもので、かえって精神状態にメリハリを付けてくれたから、その意味では歓迎出来ると思った。

昨年はブレーキの故障に続き、ツーリング用と銘打っていながら約500Km/1mmという信じ難い低耐磨耗性を知らなかったが故に起きた、旅の途中でのタイヤ交換と言う珍事に見舞われて、実に有意義で勉強になる時間を過ごしたのだが、今年は何も面白い事が起きず(^^;、淡々と平和なツーリングに終始した。

とにもかくにも無事20年目のツーリングが終わった(^〜^)。
いろんな意味で旅を味わい深いものにしてくれた藤原夫妻、イトー氏に感謝!!。



今日の走行距離:231Km

=感想とデータ=

Pロード2は今度の北海道で、結局リヤが1.4mm、フロンがト0.8mmしか磨耗しておらず、久々にタイヤの心配をしなくて済んだツーリングだった。
ドライ路面での高い接地感と上質な乗り心地はもとより、ウエットでもグリップに不足を感じることは無かったし、ハンドリングが悪化し易いと言う意味ではタイヤに厳しい直線が主なツーリングコースにもかかわらず、終始安定したハンドリングを維持していた(今も)のは特筆に価すると思う。

溝は残っていてもツーリングの途中でハンドリングに違和感が生じてしまったのでは、いくら北海道と言えども心から楽しむ訳にはいかないから、20回目は久々に満足度の高いツーリングになった。

これまでRC30に使ったタイヤは、スポーツ系ツーリング系問わず、大体7000Km前後でウエアインジケータが出るかハンドリングが極端に悪化するかして交換を余儀なくされていたから、R1100Sに較べて軽いと言うアドバンテージはあるにしても、Pロード2は余裕で1万キロ以上使えそうなタイヤであることが分かった。
近頃のタイヤは短命に終わるものが多かったから、漸く正常な耐久性に戻ったと言えなくも無いか。


総走行距離:  3、427Km
ガソリン:       144.3L
燃費:       23.7Km/L

=旅費=
ガソリン:           ¥26、839
フェリー新潟発着往復割引:¥24、000
宿泊5泊(含飲物):     ¥46、700
昼食(含フェリー食事):   ¥11、100
その他ジュース等:     ¥5,450
お土産:            ¥12、500
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            合計:¥126、589