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北海道ツーリング2003その2
6月のツーリングでは事情があって最北端には行けなかった。
9月の東北ツーリングも大幅にルート変更になってしまった。
何か忘れ物をしたようなソワソワと落ち着かない気分の日々が続いていた。

北海道と東北の両方をまとめて走ろうとすると、最低3泊4日は必要になる。ナイトランを厭わなければ3日でもいいのだが、夜間走行は景色が見えないしワインディングも楽しめない、第一リスクが大きすぎる。

いくら暇なアルピーヌとは云っても、連続4日間休める日がそうそうある訳ではないので、一つだけ見つかった9月16日から19日の期間に決めた。
フェリーは新潟発小樽行き。



9月16日

朝4時出発。
糸魚川に出ていつものように海岸線を北上して新潟に向かう。
天気は快晴で暑いほどだ。6月の時は所々ウエットだったR402のワインディングも今日は快適に走れる。

フェリー乗り場に近ずくと道路脇には警察官の姿が沢山見受けられた。もしかしたら「マンケイホーゴー」がやってくる日なのかもしれないと思いつつ、埠頭に到着。

乗船して暫くすると船内放送で「マンケイホーゴー」が入港して来るとのアナウンスがあった。
物珍しさもあって、多くの乗客と共にデッキに出ると、その船はフェリーの左舷から入ってきた。思ったより小さな船だ。
着岸するだろう埠頭からは「カエレ〜」のコールが聴こえてくる。

向うの船のデッキにも沢山人が立っていて盛んにこちらに向かって手を振っている。
こちらの乗客の何人かも手を振っていた。

中にはカメラポジションを確保しようとしてか「立ち入り禁止」の階段に上がって手を振っているバ○も居てクルーに注意されていた。殆どが分別のありそうな中高年だ。

向うの乗客に罪は無いのかも知れないが、問題は何も解決していない。なのにバ○ズ○ぶらさげて手を振っているこの人達は一体何者なのだろうと思ってしまう。

山に行けば良く解るけど、いい年をしてルールもマナーも知らない日本人の一員としてはエラソーなことを言える立場ではないし、過去にも現在も日本にだって大いに問題はあるとは思うけど、拉致被害者家族の心情を少しでも察する気持ちがあれば、とても手など振る心境にはなれない筈だ。その他モロモロ(∇∇)。

今日の走行距離:226Km


9月17日

船を降りて夜明け前の暗い道を走り出したのは4時40分。6月に来た時はもうすっかり夜が明けていたが、たった3ヶ月で随分違うものだ。いつもの銭函から海岸線を北上する。

厚田村あたりでようやく明るくなりはじめた。進む方角の空には怪しい雰囲気の雲が垂れ込めている。
宗谷地方の予報は曇りのち雨だったので覚悟はしているものの、できれば降らないで欲しい。

初山別に差し掛かる頃ついに降り出した。カッパを着る。
それ程強い降りでは無く、路面の様子から直前まではけっこう降っていた様子が伺える。
天塩河大橋を渡ると道沿いに風力発電の風車が並んでいて、先のほうは雨とガスに煙って見えない。
ここも降ったり止んだりを繰り返している。

いつもは全開をカマす道々106だが、今日は止めておく。
雨はストイックな気分に華を添えてくれる空からの粋な贈り物と思えばそれ程苦にはならないが、カッパを着ていると地図もカメラも取り出すのが大変で、これが面倒くさい。

サロベツ原野の入り口稚咲内を過ぎ、雨が一息いれたところで写真を撮る。

(MC進行方向が稚内)

このまま降らずにいて欲しいと思う願いも束の間、この後ドシャブリの中に突入する。
ノシャップ岬まで行くつもりだったが、あまりに強い降りになったのと、時刻も午前9時を回ったので抜海でUターンして引き返す。
今日の宿は積丹半島の付け根、岩内にとってあるのであまりユックリはしていられない。

道々106を南下するのは初めてだったので景色も違って見え、新たに快適な道を見つけた時のような気分になる。
鮮やかだった緑が色褪せ、次第に秋色に染まる草原を見ながら走っていると、年甲斐も無く感傷的になる。

羽幌を過ぎるとそれまで降ったり止んだりしていた雨も、次第に止んでいる時間が長くなり、ついに路面が乾いてきた。
空はまだ怪しい雰囲気だが、苫前で左折しR239に入った所でカッパを脱ぐ。路面が乾いていれば走ろうと思っていた霧立峠への道だ。風力発電の風車が沢山並んでいる。


上陸して初めてのワインディングを心置きなく楽しむ。途中で霧立小平線に入り、達布から6月にも通った沼田に抜ける道を走る。ここも路面状況の良いシビレル様なワインディングだ。羽幌からだと100Km近くはあるだろう。

新十津川からR451に入り、青山ダムを通って厚田村に抜ける。もう雨の心配は無い。
朝北上したR231を再び南下し、小樽を通って余市を抜け、古平からトーマル峠に向かう。このワインディングはかつて何度も走ったが、いつ来ても期待を裏切らない。但し頂上付近には今年もスノーシェードが増設されていたのが残念だった。
これは冬季にも通行可能にする為で、泊原発に万一の事態が発生した時の避難路確保の意味もあるのだろう。

岩内温泉「高島旅館」到着は5時20分だった。
小さいけれど気持ちの良い温泉に入って、山国育ちには堪えられない程美味しい食事の後は、あっけなく爆睡してしまった。

今回も期待にたがわず「宿泊の価値」というものを改めて教えられた。
華美でなく質素でなく、大きすぎず小さすぎず、でしゃばらないホスピタリティー等々、抜群のウエルバランスという点で、この「高島旅館」はやはりタダモノではない。

今日の走行距離:777Km

9月18日
朝6時雨の音で目覚める。
昨夜の予報は、曇りで午前中の降水確率は10%だったのに、随分話が違ってきたぞ(;;)

今日は青森の奥入瀬渓流に宿をとってある。
美味しい朝食を楽しんでいたら出発は8時半を過ぎてしまった。
R229「ソーランライン」を南下する。昨日と違い雨はけっこう強く降っている。時々小降りにはなるものの、前方に気圧の谷か低気圧の黒い雲が現れると決まってその下はドシャブリ。
全身シャワーを浴びているようで、何箇所かあった工事中の部分を通過する時に、ドロンコになったシリンダーヘッドの汚れも驚くほど綺麗になるので却って気持ちが良い。乾くと薄汚いのだが(^^)

R229は十数年前RC30で走った時とは全く様相が変わっていた。
道路が広く綺麗になっていたのは勿論、豪華すぎるトンネルの多さにも驚いた。走りやすく、時間は短縮出来るものの、以前は楽しめたワインディングや奇岩を見ながらの走りの楽しさはかなりスポイルされてしまった。

熊石町あたり迄来ると、前方には青空が広がっていて気温も急に上昇してきた。本当は松前を回って函館に行きたいのだが、青森に渡ってから明るいうちに八甲田周辺を走りたいので厚沢部からR227で直接函館に向かう。

函館には12時15分に到着。青森行きは直前に出航したばかりだった(12時10分)
フェリーターミナルで次の青森行きフェリーを確認すると2時50分発6時35分着のしか無い。
大間行きは1時50分初3時30分着だ。

宿の夕食は8時までなので、それに間に合わせる為には青森行きと大間行き、どちらのフェリーを選択するかは非常に悩ましいし微妙なところだ。
青森から奥入瀬、大間から奥入瀬までの距離と時間を大雑把に計算しても大体同じ到着時刻になりそうだ。
天気は良いし、明るいうちに少しでも走りたいし、結局道路状況にも因るけれど、走り方次第では早く到着出来そうな大間行きに乗ることにした。

ここまで263Km

1時30分に乗船する。フェリーは定刻に出航した。
航行が始まってすぐ津軽海峡には小型の漁船が40隻程漁をしていた。これが有名な大間のマグロ漁か?なかなか壮観だった。船室ではお年寄りが何か楽しそうに話していたが、私には100%理解できなかった。

大間にはあっけないほどの時間で到着。車の下船を待って走り出したのは3時40分を過ぎていた。
以前一度走ったことがあるので、道の様子は大体分かっているつもりだったが、狭い部分が多く、車も多かったのでむつ市まではわりと時間が掛かってしまった。

R279も交通量が多く、ペースが上がらないので普段はしない怒涛のすり抜け敢行。野辺地からR4に入り、七戸からR394を谷地温泉に向かう。
以前走って感激したR394は既に薄暗くなっていて路面状況がよく分からないが、それでもなんとか楽しいと思えるペースで走れた。

谷地温泉で左折、R103の十和田温泉に辿り着いたのは案外早く、6時10分だった。
大間からここまで168Kmを2時間30分で走ったことになる。急いでいたとは云えちょっと早すぎたかも。

宿は数回利用したことのある絢爛豪華な大型観光ホテルで、設備や調度品等々も文句のつけようが無いほど整っているが、やはり団体客専用といった感じで、レストランのオバサンは以前にも増してフテブテしさに磨きがかかっていた。

今日の走行距離431Km

9月19日
目覚めると窓の外は雨。天気予報の通りだ。

9時出発。
晴れていれば走ろうと思っていた平庭高原、早坂高原、そして遠野は諦める。
奥入瀬渓流沿いに上って十和田湖から樹海ラインを下り、小坂ICで東北道を南下する。
以前東北に来た時と全く同じパターンだな〜。

リヤタイヤは一部スリップサインが出ているので100Km/h前後でゆっくり走る。それでも追い越しで車線変更する時は、轍に溜まった水溜りでMCがヨレる。
なるべく寝かさないようにしているのだが、ヒヤヒヤものだ。

いつも思うんだけど、高速道路では時間が経つのも距離が進むのも、とても遅く感じる。
さんざん走ったつもりでもメーターが壊れているのではないかと思うほど遅々とした印象だ。

仙台を通過する頃には雨も止み、とても暑くなってきた。国見SAでカッパを脱いで昼食にする。
オイルをチェックするとすでにサイトからは見えない程減っていた。雨天走行でシリンダーの温度分布に差が出て、オイルが上がりやすくなったのかも知れない。
晴れと雨の時とでは消費量にけっこう差が出ることは確認済みだったが、今回は雨天走行が長かったので消費量も多いのだと思う。
MCを傾けて再度確認したらサイトの下限あたりまであったので、家までは問題無いだろう。

小坂ICからすでに330Kmも走ったのに、まだ仙台を通過したばかりだ。トーホクのでかさは侮れないな〜。
郡山JCから磐越道に入り、空いた道を少し速めのぬあわKm/h程度で走っていると、速そうなドイツ車に追いついた。
追い越して再び同じ速度で走っていると、そのドイツ車が高速道路を走るのに似つかわしくない車間距離で追走してきた。

磐梯山SAを過ぎた辺りで前方に車が無いことを確認して全開。
下り坂ということもあり、R1100Sはあっけなく ふふえKm/h、約7600rpmに達した。
そのままだとレッドゾーンに入ってしまいそうなので、スロットルを戻し7500rpmあたりで巡航する。
磨り減ったタイヤが少し心配だったが、時々前方の車に追いついて減速はしたものの、大体同じような速度で走り、会津坂下ICで降りる。

最北端では出来なかったSの調子の確認を、ドイツ車が煽ってくれたおかげで諮らずもここですることが出来た。
6万2千キロを越えても相変わらず好調を保っていると思う。

走り慣れたR252を只見、堀之内を通って十日町からR117を飯山に向かう。
田子倉ダムあたりのワインディングはいつ走っても楽しめる。

飯山からは上信越道を使って長野まで、帰宅は丁度8時だった。

今日の走行距離815Km

全走行距離2249Km
GAS 106.6L
今回は最北端には行けなかったが、それでもドーしても走りたかったオロロンラインを走ることは出来た。
天気が悪いのはわかっていたから走りも景色も楽しめないのは承知の上。どこかで露天風呂を楽しんだり美味しいものを食べるという目的も無い。ただ行って帰ってきただけ。

走行内容からすれば時間も費用も沢山費やした。神経だってすり減らしたし、本当は一番走りたかった岩手の平庭高原や早坂高原、遠野も走れなかった。
ここさえ走れれば後は暗くなっても高速道路で一気に帰るだけだ。そういう使い方が高速のありがたいところだと思っているが、今回は「安全に帰宅」が優先したにしても、無駄に使った気がする。

全てにおいてコストパフォーマンスは非常に悪い・・・・というより目的らしいものは最初から無いのだから、こういう風に考えるのも変だとは思う。

でもどこか満足している。やっぱり自分はヘンタイなのだと思う。
今回の経験で次回からツーリングの楽しみ方が変わるような気がする。もっとのんびりと・・・。
6万キロを越えて漸く「旅の道具」として身体にも気持ちにも馴染んできたR1100Sは、その殆どを「プルプルプル」といった調子でおとなしく回る3000rpm前後で走ってきた。

この程度であれば、1000cc以上もあるのに、たいしたパワーも感じられず(実際十数馬力だと思う)、あまり大きなエンジンを積んだMCに乗る意味は無かったのかもしれない。

年に一度は全開を楽しむことはあっても、知らず知らずの内にこのマイルド且つ平和な回り方が空冷ボクサーの味だと思っていた。
しかし中途半端な全開一歩手前などでは無く、文字通り全開にすると、「ア〜あなたはやっぱり98馬力もあったんですね」と納得の加速をする。音は「プルプル」から「ブーン、ガ〜」に変わる。

体感ではこの倍位の勢いで加速するZZR1100の経験があっても、やはりビッグボアの空冷2気筒は粋な力強さで吹け上がる。スロットルバルブの抵抗が無いと、これほどクリーンにスカッと突き抜けるように回るものなのだろうか。「ボヘ〜」と眠っていたMCが「パチッ」と目覚めて「待ってました〜」と喜々としているようだった。

コーナーだって直4が「ペロ〜ッ」と舐めるようにスムーズに通過するのに、これは「パクパクパクッ」と咬んでいるような感じで、何かあっても一気にはスリップダウンしないような安心感がある。長距離を走ってもあまり疲労を感じないのはこうした性格が関係しているのかも知れない。

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