7万キロを超えて
8月3日東北ツーリングの折り7万キロを超えました。

購入以来6年でこの距離は我ながらよく走ったものだと思います。

「5万キロを超えて」でも書きましたが、ストレスを受け続けた車体は、劣化やヤレ(グニャグニャとした曖昧さ等)は皆無であることに変りはありません。
考えてみれば4輪車でも7万キロともなると「それなりの使用感」が醸し出されるのに、このSは一向にその気配が感じられません。

約4万キロでフレームごと交換したRC30のステムベアリングは、以来約4万8千キロで不具合が発生し、ハンドリングにかなり違和感が出るようになりました。
これに比べてR1100Sは10万キロノーチェックでOKというカタログの謳い文句通り、距離を走ると避けて通れないと思われるステアリングヘッドに起因するハンドリングの不具合は発生していません。

勿論スイッチ類やレバー、ペダル等の操作感、シートの座り心地等、MCを操る上で体感出来る全ての感触がカッチリとしていて全く変わっていないのも同様です。

3万8千キロ時点で交換したオーリンズのサスペンションも、既に3万2千キロ使ったことになりますが、一向にへたった様子も無く、絶好調で走りを支えています。

先日の東北ツーリングでは若干下り坂のような感じがしたものの、購入以来初めて6速8300rpmまで回りました。
これはドイツ本国の型式認定最高速度を15Km/h上回るもので、もしバルブサージングが発生しないとしたら、スピードメーターのフルスケールを使い切れたと思うほどストレスの無い回り方でした。

但し全開した時にぬやわKm/h辺りでまれに息つきのような症状が出ることがあったので、ひょっとするとこれが燃料フィルター詰まりの前兆か?と思ったりしています。

始動直後、油圧が上がる前に発生する「カラカラ」という打音は、プレオイリングシステムをONにすると全く発生しないことから、好調を保っている要因の一つにこのシステムの存在は大きいと思います。

プレオイリングシステム(ZIP START)

距離を走ってオイルクリアランスが広がったのか、常識的には使ってはイケナイ5W30(モービル)の低粘度オイル使用によるものかは分かりませんが、何れにしてもここにきてとても軽く回るようになり、パワー感も向上したのは確かですから、駆動系も含めようやく慣らしが終わったということなのかもしれません。

安かったから(1クオート750円)使ってみたモービルは、20W50や10W40の鉱物系オイルよりメカノイズが小さく感じられるのと、オイル消費がとても少ない(4000Km走っても殆ど減らない)のは特筆できます。

かつて走行距離が少なかった頃、2000Km程度のツーリングでも1度は注ぎ足しが必要だったことからすると、オイルの減りを心配をせずに走れるのは、余計な神経を使わない分快適な旅が出来るようになった気がします。当然交換のインターバル(4〜5000Km)に補充の必要も無い訳です。


購入当初発生した数々の不具合は、このMCとその価格に対して大いに疑問を抱かせましたが、今となっては些細なことと思えるようになりました。

唯一の大きなトラブルはファイナルギヤケースの不具合でしたが、これでさえ走行不能になるようなものでは無く、気がつけば無事に7万キロの旅をこなしていたということになります。

何を持ってして総合的な性能を判断するのかは分からないにしても、個人的には「価格に見合わない」という点で常に過小評価していたことは否めません。つまり、この程度のMCは国産車では腐るほどあると思っていたからです。
ところが、距離を走って見えてきたBMWの底力は、やはり巷の噂通りだったような気がします。

フレームについて:
R259系モデルの多くはエンジンとギヤケースがフレームを兼ねていて、この方式でも問題は無いのでしょうが、剛性面で一番不利なギヤケースの捩れは、手放しの時に進路が右に逸れていく原因のひとつではないかと思ったりしています。

フレームが追加されたことで、この現象はとても小さくなったのは勿論ですが、RSから乗り換えた時の剛性感の高さは、その細くて華奢な外観からは想像出来ない程のものでした。

Sのフレームは上下の取り付け部分がエンジンブロック、真ん中がギヤケースに固定されていて、これは同じフレーム付きでもストレスが直接ギヤケースに掛かるCやGSのそれとは異なります。

スイングアームピボット周りの脆弱な感じは国産車を見慣れた私にはとても頼りなく感じましたし、それに鋳造とくればいつクラックが入ってもおかしくないと思う程のものでした。

しかし、考えてみればストレスの大部分をエンジンやギヤケースが受け持っており、フレームの追加はそれを補助する程度なのと、スイングアームピボットのベアリングスパンを広く採ってネジリや曲げ剛性を高める為のものと考えれば、これでも充分と思えてきました。

シロートが見た目だけでゴタクを述べるのは、技術者にとって「片腹痛い」のは承知です(笑)が、しかし後にこの部分が鋳造から鍛造に変更されたところを見ると、何らかの問題があったのでは?と思ったりしています。

とにかくこのフレーム追加でRSより遥かに剛性が向上し、RSが200Km/h程度で車体が柔らかく感じ始めたのに対し、Sは240Km/hでもしっかりしています。

砂や小石が直撃する部分はそれなりの劣化はあるものの、その他は相変わらず新車のコンディションを保っています。

Rシリーズは全く共通と言って良い駆動系やシャーシを持つものの、他のモデルに比べその乗り味はコンパクトでカッチリしたものです。
6年を経た現在でも古さを感じさせないスタイリングは、最近の奇抜なデザインのMCの中にあってはマトモな部類と思えるようになってきました。

エンジンは勿論オーバーホールしていませんが、240Km/hに到達することから、今の所その必要は無いものと思います。



余談:
バルブシートとバルブの相性に問題があったとは言え、3万キロ時点で既にバルブフェースが段付き磨耗してタペットクリアランスがゼロになっていた(圧縮不良)RC30に較べると、Sは相変わらずIN0.15mm、EX0.3mm前後を保っていることから、この部分の耐久性も優れていると思います。


3万キロ時点でオーバーホールした際のRC30のインレットバルブ。
バルブフェースの激しい段付き磨耗(左←カーボンは落としてあります)、カーボンテンコモリの右もかなり磨耗している。
インレット側は8本共大体同じように減っていたが、エキゾースト側の磨耗は皆無。

ちなみにRC30のエンジンはその後の対策部品によって、現在89000Km絶好調を維持しています。