長野市の南方の山々を眺めると、ヘルメットの形をした山があります。これが「姨
捨伝説」で有名な冠着山です。冠着山は千曲川の西岸にそびえる独立峰で、戸倉町・
上山田町・坂井村の境界にあります。この山は別名がいくつかあり、姨捨山、更級山、
冠山などとも言われています。とくに「おばすて山」の名前は古く、『古今和歌集』
(905年)において、

  
わが心なぐさめかねつ さらしなや をばすて山に照る月を見て 読人しらず 

と歌われており、月の名所として古くから知られ、西行や紀貫之などの歌人たちも姨
捨山を歌いこんでいます。さらに江戸時代には、芭蕉などの俳人たちも多くの句を残
しているように、「名月の山」として全国に知られています。
 冠着山は、変質した砂岩、礫岩、凝灰岩などの第三紀層の中を、第四紀の始め頃ま
でに地下から貫入してきた、いくつかの火山岩からできています。とくに山頂付近に
は非常に硬く黒色ち密な複輝石安山岩があり、この硬い岩石が風雨による侵食に耐え
て、特徴的な形をつくったわけです。このような山は溶岩円頂丘(溶岩ドーム)とい
われ、粘り気の強い溶岩が火口から押し出されたときに、溶岩が流れずに火口付近に
盛り上がって、そのままドーム状に固まってできたと言われています。山頂の東斜面
にある「ぼこだき岩」では、溶岩が冷えて固まったときにできる割れ目(柱状節理)
を見ることができます。
 冠着山へは、冠着駅〜徒歩50分〜一本松峠〜徒歩60分〜山頂のコース、また更級小
学校〜車25分〜坊城平いこいの森〜徒歩45分〜山頂のコース、などいろいろあります。
気軽に登れる山で、コースによっては「不動の滝」や「びょうぶ岩」を見たり、季節
によってツツジやアジサイ・石楠花などの花も見ることができます。頂上から見る善
光寺平の景色は絶景ですので、ぜひ一度登ってみてはいかがでしょうか。

周辺の山・冠着山(姨捨山)
地学団体研究会 長野支部 矢嶋勝美(長野南高等学校教諭)

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更埴市側から望む冠着山。峰の左に「ぼこだき岩」が小さく見える