国道406号線を鬼無里方面へ向かうと、裾花ダムのあたりから急に地形がけわしく
なり、道も曲がりくねり狭くなります。裾花大橋を渡って少し行くと、裾花川対岸に
大きな岩壁があり、ここに高さの違う3つの洞穴が並んで見えます。この洞穴はお善
鬼谷(おぜんきだに)の「三竈」(みかまど)と呼ばれ、鬼の伝説が伝えられていま
す。この大きな岩壁は鬼が一晩のうちに積み上げたもので、洞穴には鬼が住み、さら
に虫倉山へ通じているのだ、というものです。力持ちで善い鬼だったため、善鬼と呼
ばれ、人々に慕われたといいます。この洞穴がご神体となり、里宮として三竈神社が
祭られています。祭日になると多くの参詣者でにぎわい、子どもたちが小さな鎌を持っ
て参詣者の体に触れ息災祈願をしたといいます。虫倉信仰の流れをくむもの、といわ
れています。
 どうしてこんな3つの洞穴ができたのでしょうか。じつは、これらは裾花川の浸食
によってできたものなのです。かつての裾花川は、今よりずっと高い位置のところを
流れていました。その当時、裾花川が蛇行し、岩壁を横に削って洞穴を作りました。
その後周囲の山が隆起するのに伴い、裾花川はさらに大地を深く削っていったのです。
こうしたことが繰り返され、裾花川より高い位置に洞穴が次々とできていきました。
しかもここの岩壁は、今から五〇〇万年前の海底火山の噴出物でできた硬い地層でで
きているため、何万年もの間に崩れないで洞穴が残ってきたのです。裾花川が隆起を
続ける大地と戦ってきた証拠なのです。
こうした川によってできた洞穴や岩陰は「ノッチ」と呼ばれるもので、裾花川沿いに
はいくつもあり、古くから人々とのつながりがありました。今では残っていませんが
縄文時代の初め頃の遺跡となっていた戸隠村追通(おっかよう)の荷取(にとり)洞
穴、木曽義仲が隠れたといわれる鬼無里村奥裾花の木曽殿アブキなども同じノッチで
す。      
         地学団体研究会 長野支部 田辺智隆(戸隠地質化石館学芸員)
お善鬼谷の三竈
 
(おぜんきだにのみかまど)
写真:裾花川の上にみえる岩陰
   長野市小田切千木

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