”花の道”に心ひかれて

天竜川に沿って、伊那谷から諏訪へ花めぐり

 その昔、伊那の米を木曽へと運ぶ時の難所だったという権兵衛峠。今でも急カーブの続くその峠を下ると、背丈よりも高いとうもろこし畑と牛の声が迎えてくれました。伊那市内には、このとうもろこしの列を壁に見立てた迷路があるのだとか。ピーターラビットの気分を味わえそうですね。

 ここは伊那谷屈指の米どころ。段丘上に広がる田んぼに揺れる稲の波。そろそろ稲穂がこうべを垂れ始める頃でしょうか。やや黄色がかった緑の水田は、目にさわやかでした。実りの季節を想像するだけで、なんだか心安らぐのが不思議です。

 台地をえぐるように流れる天竜川の支流を、高架橋で結んだ「中央アルプス花の道」は、東西に威風堂々の仙丈ヶ岳や木曽駒ヶ岳を望み、ところどころに愛らしい花壇が続く広域農道です。 キラキラ輝いて見えるハウスが、実は花き栽培用のものと聞いてびっくり。伊那谷は洋花、鉢花の栽培が盛んな地なのです。あのハウスの中で、アルストロメリアや、たくさんのシクラメン、洋蘭がスクスク育ちながら、冬の開花期を待っているのですね。クリスマス・お歳暮シーズンに向け、全国へ出荷される花たち。どんなお宅の部屋を飾るのでしょうか。

 杖突峠の向こうは、立科高原の爽やかな風が彩る東洋のスイス、栽培農家の方々の花をいたわる思いが感じられるハウスの中では、 りんどう、カーネーション、スターチス、かすみ草といった色鮮やかな花々が、街の花屋さんへ嫁ぐ日を待っているかのよう。母の日や誕生日の花束のふるさとが、今、目の前に広がっています。

 のどかな田園風景にも、なぜか都会的でしゃれた雰囲気を感じさせる諏訪地方。おしゃれな食卓に欠かせないパセリやセルリーの産地と聞けば、2度納得してしまう私たちでした。



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